二宮和也、木村拓哉(C)2018 TOHO/JStorm

<木村拓哉インタビュー>正義とは?大切にする“事実”とは?…現場で見た“役者・二宮和也”も語る

2018.08.21 12:15

映画『検察側の罪人』(8月24日公開)で主演をつとめる木村拓哉(45)が、モデルプレスのインタビューに応じた。嵐の二宮和也と初共演を果たすことでも話題の今作は、東京地検を舞台にある殺人事件をめぐり2人の検事が対立していく様を描いた雫井脩介氏の傑作ミステリーを映画化。監督・脚本は、原田眞人氏が担当。木村は東京地検刑事部のエリート検事・最上役、二宮は刑事部に配属されてきた駆け出しの検事・沖野役を演じる。初の原田組、初の二宮との共演…“俳優・木村拓哉”が現場で感じたこととは?

木村拓哉にとって「正義」とは…

― まずは脚本を読んだ率直な感想をお願いします。

木村:タイトルにあるとおり「罪人」に向かっていく話なので、原作を読ませていただいたときもそうですけど、監督はどういうハンドリングをするんだろうと思いました。タイトルに疑問を抱きながらも読んでいくと、納得させてくれるストーリーもあって、主人公の最上の行動に対して拍手は出来ないし称賛は送れないけど、彼のメンタルを理解することは出来るなっていう感覚がありました。

― 「HERO」(2001年~2015年)でも検事役を演じられましたが、意識する点はありましたか?

木村:本作を1つの物語として対峙したので、比較するとかそういうものは全然なかったです。「HERO」は型破りな検事という役でしたけど、今回は昇進間近のエリート検事という設定だったので、作品のポジショニング含め、今の自分の年齢で最上のような役を演じられたというのは、名誉なことではありますけど。

― “時効”“冤罪”“法律”というキーワードを軸に、「正義とは何か?」を問いかける作品となっていますが、木村さんとっての“正しさ”の基準やものさしになっているものはなんですか?

木村:相手の立場になって考えるというのはひとつあるかもしれないです。自分の中での正義という基準はあるにせよ、1回相手の立場になったときにそれがまかり通るのか通らないのか、相手にとっては違うものになるんじゃないのかというのは考えます。正義や信念というものは、自分を武装するものでもあると思うんです。それは相手からすると、「結構です」ってなることもあるかもしれないし。昨日、一昨日の行動(※)もそうですけど、やっぱり皆さんの立場になって考えないと、と思います。

※西日本豪雨で被害を受けた広島県呉市を訪問し炊き出しを行った。

二宮和也との初共演を振り返る

木村拓哉(C)2018 TOHO/JStorm
木村拓哉(C)2018 TOHO/JStorm
― 二宮さんとは初共演となりましたが、現場での印象を教えてください。

木村:普段目にしている二宮ってやっぱ嵐の一員だし、5人のうちの1人なんですけど、『硫黄島からの手紙』(2005年)しかり、「赤めだか」(2015年)しかり、「ブラックペアン」(2018年)しかり、彼が体現するときの二宮ならではの瞬発力に関しては、撮影現場で出していたんだっていうのを感じました。だから、安心感ですよね。今まで色んなものを観させてもらいましたけど、大丈夫かな?って思う必要が全くないっていう。本当に安心できる共演者。

― 後輩の皆さんの作品はチェックすることが多いですか?

木村:もちろん全部は観れないので、自分が観たいなと思うものだけ。

― 先程、何作も例が出てきましたが、二宮さんの作品はそこに当てはまる?

木村:やっぱり入りますよね。

― それは、“役者・二宮和也”に魅力を感じているということでしょうか?

木村:それもあると思います。あとは、ストーリーが持つ面白みとか時代背景とか、全部ひっくるめての作品なので、そういう作品に彼が求められているってことだと思います。

― 二宮さん本人に作品を観ていることを伝える機会はありましたか?

木村:「観たよ」っていうと、「マジっすか!?観てくれたんですか!?」って。一応本人が目の前いるし、後輩が先輩に対して気を遣うリップサービスも含まれていると思いますけど(笑)、色々2人で話していました。

― 今回は徐々に対立していく役柄ではありましたが、その過程であえて距離を置くということは?

木村:それは全然ないです。普通にしていました。

― お芝居に関するディスカッションというのはありましたか?

木村:あえてそういう事もなかったと思います。

― 見どころのひとつとなる最上と沖野の“激突”のシーンについては、ほぼ一発撮りだったとお伺いしましたが、そのシーンについても特にお話するということはなかったですか?

木村:それも全然なかったですね。原田監督は作品を撮り始める前にリハーサルをしてくださるんですけど、2人が並んだときに全体として何が見えてくるかっていうのを確認して「わかった。じゃあ後は現場で」って。実際の現場でも、撮影のカット割りは最上側と沖野側からの2テイクだけでした。

吉高由里子は「柔軟剤」

吉高由里子(C)2018 TOHO/JStorm
吉高由里子(C)2018 TOHO/JStorm
― 吉高さんとも初共演だったかと思いますが、いかがでしたか?

木村:突拍子もないところからすごい角度でくるときもありますけど、愛される部分もある。逆ムードメーカーですよね。

― “逆ムードメーカー”。新しい。

木村:「いこうぜ!」「頑張ろうぜ!」っていうムードメーカーもいますけど、全くそういう空気じゃないときに「たくちゃん元気?」って言ってくる。

― (笑)。「たくちゃん」と呼ばれているんですか?

木村:呼び方は色々。で、沖野役をやってるやつ(=二宮)が「お前、それはねえだろ!」って。

― そういう役割分担で(笑)。

木村:彼らには共演歴があるので、自分は付属品のようにその横にいました。「固いことは言うなよ、たくちゃん」とか言うから、二宮がその都度「いい加減にしろ」って(笑)。

― 吉高さんの発言が、現場の緊張感をほぐしていきそうですね。

木村:そういうところが“逆ムードメーカー”。原田監督に対しても「それ言うんだ!」ってこともあったし、現場の柔軟剤でもありましたね。

― 初という部分では、原田組も初参加かと思います。

木村:スーツを着て、ネクタイを締めて、シャツの第一ボタンまでしっかり締めて、髪型も整えてる言葉使いの良いパンクという印象でした。世の中に対しても、作り上げるものに対しても。(原田監督作品)「日本のいちばん長い日」(2015年)にしても、そこを切り取るんだってところを切り取ってくれるんだって思うじゃないですか。監督が現場で放出している熱もあの組じゃないと体感できないほどやっぱり独特だし、その楽しさは原田組じゃないと味わえないと思うんです。

― では、最後になりますが、数多くの役柄を演じられてきた木村さんが、今作を撮り終えた今、得たものを教えてください。

木村:そんなに毎作品ごとにないですよ。この作品をやったからこうなれたっていうものがあったとしたら、今までのお前は何だったの?ってなると思うし。それよりも出会えて、共同作業をさせてもらって、その作品の一部に自分がなれているっていう事実があるだけで大きな経験だと思います。だから、この作品をやったから俺はこうなれたっていうのはないですね。残念な答えになっちゃいますけど。

木村拓哉が大切にする“事実”

「今作から得たものは?」という最後の質問に対し、“特別な何か”ではなく、人との出会いに感謝しながら「その作品の一部に自分がなれているっていう事実があるだけで大きな経験」と語った姿がとても印象的だった。最後には「残念な答えになっちゃいますけど」と申し訳なさそうに付け加えていたが、きっとこの作品で木村に出会った人間からすれば何よりも嬉しい言葉だと思う。

そしてこの夏、「俳優・木村拓哉」は「俳優・二宮和也」とスクリーンの中で初めて出会う。その出会いによって生まれたモノが、観客の胸に“特別な何か”を刻むはずだ。(modelpress編集部)

木村拓哉(きむら・たくや)プロフィール

1972年11月13日生まれ。東京都出身。1987年、ジャニーズ事務所に入所。近年の出演作はドラマ「アイムホーム」(2015年系、テレビ朝日)、「A LIFE~愛しき人~」(2017年、TBS系)、「BG~身辺警護人~」(2018年 、テレビ朝日系)、映画『無限の住人』(2017年)など。今後は、映画『検察側の罪人』(8月24日公開)のほか、『マスカレード・ホテル』(2019年公開予定)が控える。

映画『検察側の罪人』概要

「検察側の罪人」(8月24日公開)ポスタービジュアル(C)2018 TOHO/JStorm
「検察側の罪人」(8月24日公開)ポスタービジュアル(C)2018 TOHO/JStorm
公開:8月24日(金)
製作・配給:東宝
監督・脚本:原田眞人
原作:「検察側の罪人」雫井脩介(文春文庫刊)
出演:木村拓哉 二宮和也/吉高由里子 平岳大 大倉孝二 八嶋智人 音尾琢真 大場泰正 谷田歩 酒向芳 矢島健一/キムラ緑子 芦名星 山崎紘菜・松重豊/山崎努(※「崎」は正式には「たつさき」)

<ストーリー>
ある殺人事件を巡り、2人の検事の対立を描く。都内で発生した殺人事件。犯人は不明。事件を担当する検察官は、東京地検刑事部のエリート検事・最上と、刑事部に配属されてきた駆け出しの検事・沖野。最上は複数いる容疑者の中から、一人の男に狙いを定め、執拗に追い詰めていく。

その男・松倉は、過去に時効を迎えてしまった未解決殺人事件の最重要容疑者であった人物だ。最上を師と仰ぐ沖野は、容疑者に自白させるべく取り調べに力を入れるのだが、松倉は犯行を否認し続け、一向に手応えが得られない。

やがて沖野は、最上の捜査方針に疑問を持ち始める…。「最上さんは、松倉を、犯人に仕立て上げようとしているのではないか…?」互いの正義を賭けて対立する2人の検事。彼らの戦いに、待受けていた決着とは――。
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