インタビューに応じた菅田将暉(C)モデルプレス

菅田将暉がテレビドラマの未来に抱く“責任感”「ミステリと言う勿れ」原作者・田村由美氏からの印象深い一言明かす<インタビュー>

2022.03.27 12:00

フジテレビ系ドラマ「ミステリと言う勿れ」(毎週月曜よる9時~)で主演を務める俳優の菅田将暉(すだ・まさき/29)にインタビュー。“月9”枠で顔となった彼が今、演じ手としてテレビドラマの未来に抱く“責任感”とは――最終話の放送を直前に控え、同作の撮影を経て感じた想いを聞いた。

  

菅田将暉「ミステリと言う勿れ」は「感動が1つじゃない」

菅田将暉/「ミステリと言う勿れ」最終話より(C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン
「ミステリと言う勿れ」は、菅田演じる天然パーマがトレードマークの主人公・久能整が淡々と自身の見解を述べるだけで難事件や人の心の闇を解きほぐしていく、令和版・新感覚ミステリー。撮影は約1年前に終えており、菅田は「こんなに時間を置いて自分のドラマを観ることもあまりないので、素直に楽しいです。素直にドラマを楽しめている自分がいるってことに安心しました」と語る。

菅田将暉(C)モデルプレス
累計発行部数1,500万部突破の人気コミックが原作なだけに、反響は賛否両論あった。視聴者同士の“議論”も、菅田はチェックしているという。

「今まで出演してきたドラマと大きく違うなと感じたのは、エンターテインメントとして感動が1つじゃないところです。ただ感動した、泣けた、笑っただけではなく、このドラマをきっかけに色々な人が色々なことを考えて話したり、『ここは違う』『ここはこう思う』とか、色々なところでそういう議論が勃発しているのは肌で感じています。すごくやって良かったなと思いますし、同時に改善点もいっぱい見つかったので、現代ドラマを作る上でものすごく大事な作品になりました」

菅田将暉、役作りでこだわり抜いた“絶妙さ”

整とは「もともとちょっと近いところがあると思います」と話す菅田。「“僕”としてはなかなか伝わらないであろう不毛な議論もこの現場ではいっぱいできたし、現場では皆が『整くんがしゃべっている』という錯覚をしている状態で問答ができるから、逆に僕はしゃべりやすかったです」と振り返る。

菅田将暉(C)モデルプレス
整のセリフには深く心に刺さる言葉も多いが、大学生で未熟さもある彼の言うことが「全て正解である」という伝わり方にはならないよう、菅田は緻密な役作りに挑んだ。こだわり抜いたその“絶妙さ”は視聴者にもしっかりと伝わった。

「視聴者の人もちゃんとわかってくれているなという安心感はありましたし、そこまで考えなくても良かったんだなってことも多かったです。でも、その発見と同時にやっぱり深く観てくれる人もいる。このドラマ、観ていて絶対疲れると思うんです(笑)。真面目で深く考える人ほど疲れるけど、でもそうあるべきドラマだし、それが正しいと思います。ライトに楽しみたい人からしたらそうはいかないけど、やっぱりそこの匙加減はこだわって良かった。

何より業界内の評判も良いので、そのこだわりが伝わったのかなと思います。ここまで先輩や同業者の方から『観てるよ』と言ってもらうことは珍しいし、皆当たり前のように観てくれている感覚があったので、それも含めてこだわって良かったです」

菅田将暉が“背中を押された”整のセリフ

役作りについては、「簡単に憑依できるものじゃないし、お面を被ったら整くんになれるみたいなものでもなかった」と明かす。「でも逆に言うと、この作品ではアドリブがほとんどないんです。それこそ、10話の撮影で『ちょっと後ろでしゃべっていて』と言われて。そういう指示は撮影ではよくあることで、いつもならいくらでもペラペラと出てくるのに、整くんとしては難しかったんです。だからそういう意味で憑依はしていないですし、整くんの発言はアドリブでできるものではないなと思いました」と整役ならではの難しさ”もあったという。

菅田将暉(C)モデルプレス
菅田自身が最も好きな整の言葉は、コミックに登場する「子どもって乾く前のセメントみたいなんですって」というもの。「すごく腑に落ちるというか、幼少期に経験したことが大人になっても形に残っているというのはすごくわかるなと思って。ドラマではそのセリフは言っていないんですが、1番好きですね」

ドラマ内で自身が言った中で好きなセリフを聞くと、悩んだ末に2話の「人は自然の生き物なので、人がすることは全て自然の範疇だと思います」という言葉を挙げた。

「ちょうどその頃、『1話の撮影終えたけどどうしよう、大丈夫かな』みたいな不安もあったので、このセリフに背中を押された感じがしました。その後の蜂の話も、原作ではもっとたくさん書いてあるんですが、『自然とは何か』みたいなところが演じ手としてすごく響きました」

原作者・田村由美氏からの一言で安心

菅田将暉(C)モデルプレス
原作者の田村由美氏とはクランクイン前から話し合いを重ね、田村氏は現場に何度も足を運んでくれたという。このインタビューの日も、部屋の後ろで菅田を見守っていた。

「現場でも先生の存在が本当にありがたくて。もの作りをする上で、その場ではどうしようもない問題というのがどうしても出てくるんです。『現場レベルで解決できないけど現場でどうにかしなきゃ、もう撮らなきゃいけない』みたいな。でも先生は本当に何度も足を運んでくださっていたので、その都度色々な相談ができました。ドラマ仕様にする上で、話の順番を変えたり、ちょっとオリジナルを足したり…というのがたくさんあるので、そんな中、監督や制作陣が常に先生と会話できていることに安心感がありました」

菅田将暉(C)モデルプレス
田村氏が現場にいる中で撮影したシーンで菅田が最も印象に残っているのは、整が病院で牛田悟郎(小日向文世)と長時間にわたって話す場面。

「あの時初めて自分の演じる整くんを間近でじっくり見られた気がして、めっちゃ緊張したんです。原作者の方が近くにいてずっとモニターで見られているという意識が、お芝居をしていてもどうしたって頭から消えなくて(笑)。でもカットがかかってOKが出た時に、先生が『整くんってこうやってしゃべるんだ』っておっしゃってくれて。そのポロっと言った一言で僕は安心しましたし、『ちゃんと今の悩み方でやっていけば、どうにかなるか』と思うことができました」

菅田将暉、永山瑛太を深く信頼

永山瑛太/「ミステリと言う勿れ」最終話より(C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン
整にとって特別惹かれる存在となるのが永山瑛太演じる我路。菅田は「本当に瑛太さんに我路くんをやっていただいて感謝です」と語る。

「我路くんとライカ(門脇麦)は整にとってちょっと特別なので、自分自身が素直に惹かれる人で本当に良かったなと思います。我路くんは犯罪者で、整くんがそれをわかった上で『今度うちに遊びに来てくれる?』と言うのは一歩間違えたら危険なセリフですが、その2人のやり取りを否定するような反響がなかったということは、きっと瑛太さんの演じた我路くんが皆に受け入れられている証拠かなと。『なんか目が離せない』と感じる“なんか”を作るのが役者の仕事なので、瑛太さんの演技は後輩ながら『流石だな』と思いながら観ています。

あとは単純に、整くんが我路くんとの会話を求めるように、僕も瑛太さんとの会話を求めていて。やっぱり同じ考え、同じ闘いをしている存在が瑛太さんだったので、整くんと我路くんが結びついたのと同じように、僕も瑛太さんにだけはわかってもらえるなと思ったことがたくさんありました」

久保田悠来、永山瑛太、阿部亮平/「ミステリと言う勿れ」最終話より(C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン

菅田将暉、テレビドラマの今後に抱く“責任感”

菅田将暉(C)モデルプレス
民放ドラマの在り方はここ数年で急激に変化し、若者のテレビ離れも進んでいる。菅田は演じ手として、その危機感を感じていた。

「今、地上波のドラマはかなり厳しい状況になってきていると思います。僕らより若い1人暮らしをしている子は家にテレビが無いことも多い。このドラマはテレビで観るだけでなく、ケータイやパソコンで観ている人がたくさんいると数字で知ることができました。観る媒体がテレビじゃなくなっている人も多いけど、皆が色々な形で気になってくれて、観てくれているということを知れたのが、僕の中では大きかったです」

同作は見逃し配信再生数(FOD、TVer、GYAO!、Yahoo!の合計値)が3,000万再生を突破し、民放テレビ番組初の快挙を達成。ネットで視聴するという新たな楽しみ方が浸透してきていることを証明した。菅田は自身が“テレビドラマに憧れがある世代”であるとし、ドラマの未来について「勝手な責任感があります」と話す。

「僕らはちょうどテレビドラマを観て育って、憧れを持っている世代なんだと思います。そして、あの時ドラマに出ていた人たちの年齢に今自分がなっている。闘わなきゃとも思うし、少しでも面白いものを作れたらと思いますが、今はスタッフ・演者含め人が足りていないんです」

関めぐみ、菅田将暉/「ミステリと言う勿れ」最終話より(C)田村由美/小学館 (C)フジテレビジョン
そして、演じ手だからこそ感じるドラマ制作の面白さについても語った。

「連続ドラマは特にスピード感があるというか、良くも悪くも作り込みすぎることができない状況だったり、単純にオンエアに間に合わなかったりすることも本当にあって、僕はあのヒリヒリ感も好きなんです(笑)。朝に撮ってその日の夜に放送…みたいなモノ作りも良くない?と思っています。全て時間をかけて丁寧に作ればいいというものでもないですし、テレビドラマならではのタイムリミットギリギリで爆弾の赤か青の線を切らなきゃいけない日々もそれはそれで良い。ドラマは、スタッフもキャストも誤魔化せない何かが唯一映る場所だと思うんです。逆にそういう場所として残っていけばいいのかなとも思うし、これからより良くなるものもきっとある。僕は勝手にそんなことを考えています」

菅田将暉、芝居を休んで気付いたこと

菅田将暉(C)モデルプレス
常にセリフを頭に入れては現場に行く生活を10年以上続けてきた菅田だが、今初めて“芝居を休んでいる”という。最後に、ここで立ち止まってみて芝居やテレビに対する向き合い方に変化はあったのか聞いた。

「今は立ち止まっている最中なので、あまり作品も観ていないんですよね。この期間が終わってから、何か変化に気付くのかな…どうなんだろう。でも、おばあちゃんや地元の友達が1番観ているのはやっぱりドラマ。そういう意味で言うと、テレビというものの強さはまだあると信じています。

こうして立ち止まると家族との時間が増えるじゃないですか。そうなった時に、僕は割と外で何を言われようとどう思われようとどうでもいいというモードに入ってきちゃって。これは表に出る人として良くないと思っています(笑)。でも、そんな経験も初めてだからこそ、家族の意見をよく聞くようになって『テレビって偉大だな』と改めて思った。だからもしかすると、それが休んでみて気付いたことなのかもしれないですね。これからも素直に楽しんでいきたいです」

インタビューこぼれ話/月曜日のルーティーン

菅田将暉(C)モデルプレス
「ちょうど僕は月曜にラジオ(菅田将暉のオールナイトニッポン/ニッポン放送)をやっているので、このドラマをその前に観ちゃうとラジオに集中できないから、大体家に帰ってきて朝の4時くらいから観始めるんです。それを楽しみにしているのですが、うちのHDDの設定なのかわからないんですけど、4時半になったら1回『クリーニングします』って止まるんですよ(笑)。それで1回止まるだけならいいんですが、止まった後は絶対にテレビ朝日の『暴れん坊将軍』が始まるんです(笑)。だから毎回『整くんがここからなんかしゃべるんだ』って時に松平健さんが馬で走っているシーンが流れてきて。それも含めて僕の最近のルーティーンになっています(笑)」

(modelpress編集部)

菅田将暉(すだ・まさき)プロフィール

1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年に「仮面ライダーW」(テレビ朝日系)でデビュー。2013年に映画「共喰い」で第37回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞、2018年に映画「あゝ、荒野 前篇」で第41回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞を受賞。2017年にはソロ歌手としてデビューし、2019年には「第70回NHK紅白歌合戦」に出場した。2021年もドラマ「コントが始まる」(日本テレビ系)、映画「花束みたいな恋をした」「キャラクター」「キネマの神様」「CUBE 一度入ったら、最後」などに出演し、多彩な役柄で魅了。2022年9月9日には、主演映画「百花」が公開予定。3月28日から「news zero」(日本テレビ系)のテーマソングも担当。
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