『伯爵の肉団子 新宿御苑店』の飲める肉団子が超絶うまい、ミシュランシェフ監修の大衆中華居酒屋
2021.10.29 18:00
白地に赤の「伯爵の肉団子」の看板が目印
肉団子というのは、不思議な料理だ。世界各国であらゆる料理に使われ、老若男女どの層からも愛されているのに、餃子や焼売のように専門店がなく、マニアもいない。そんな不遇な肉団子にスポットライトをあてた店『伯爵の肉団子 新宿御苑店(以下、伯爵の肉団子)』が2021年9月1日、新宿御苑にオープンした。新宿御苑前駅から新宿方面に徒歩1分のところにある『伯爵の肉団子』(写真上)。白地に赤字の目立つ看板と暖簾、そしてインパクトのある店名が人目を引く。
店内は、オープンエアの屋台をイメージさせるカジュアルで開放的な空間。カウンター上部のトタン屋根がさらに、そんな雰囲気を盛り上げている。
中央のカウンターを囲むように、テーブル席がある。壁の上部には料理札が並び、昔ながらの町中華の雰囲気も。カルタをイメージした装飾も楽しい。
作りたかったのは、「一流シェフの料理を、もっと多くの人に食べてもらえる店」
この店が誕生したきっかけは、複数の居酒屋を運営しているこの店のオーナーが、『私厨房 勇』(港区白金台)で原勇太シェフの料理を食べ、その味に感動したこと。『私厨房 勇』の料理はおまかせコースのみで、1人8,800円 (前菜からデザートまで8皿前後)だが、「もっと多くの人に原シェフの料理を味わってほしい」と考え、原シェフに協力を依頼。その想いに賛同した原シェフが、メニュー開発と調理指導に協力をしてくれたという。原シェフは、広東料理の名店として知られる『文菜華』(千葉・柏)オーナーシェフの渡辺展久氏に師事し、港区白金に香港の私房菜をコンセプトとした『私厨房 勇』をオープン。「ミシュランガイド東京2019」で一ツ星を獲得している。『伯爵の肉団子』という店名は、伯爵も食べたくなるようなスペシャルな肉団子が食べられる店をイメージして命名。
店長の芳村拓人(ひろと)さんは、「ホテル・ニューオータニ」の和食部門出身。その後、和食系の居酒屋で腕を振るっていたが、中華料理の経験はゼロ。出店が決まってからは週2回のペースで原シェフの店に通ってレシピを学んだ。レシピ通りに作って食べてもらい、味を修正していくという特訓を受けたという。
肉団子を看板料理にしたのは、肉団子の専門店がまだないことや、他の料理と組み合わせてアレンジがきくことが主な理由。さらに「肉団子は家庭でも簡単に作れる料理です。だからこそ、一流シェフが作る本格的な肉団子の味を知らない人が多い。それを気軽に食べられる居酒屋料理に落とし込んで提供したら、きっと多くの人に喜ばれると思いました」。
いざ、「伯爵の肉団子」を実食!
原シェフがレシピ考案をしたというスペシャルな肉団子を、さっそく注文してみる。「伯爵の肉団子」を待つ間に、「自家製旨味よだれやっこ」(写真上)を注文。このボリュームで、290円! 辛みとうまみのバランスがいいよだれ鶏風ソース、唇がしびれそうなほどたっぷりトッピングした山椒で、これだけで生ビール1杯が軽く消えてしまう。
「伯爵の肉団子」(写真上)は、590円という価格で1皿に10個と山盛り。豚肉と、クワイ、白菜、調味料は12~13種類ほどをブレンドしている。味がついているのでなにもかけずにこのまま食べ、好みで辛子を付ける。肉団子だけをそのまま食べるのは、もしかしたら初めてかもしれない。
揚げたてで熱々の肉団子を口に入れると、外側は香ばしくカリカリだが、中は「飲める肉団子」と呼びたいほどやわらかく、トロトロ。こんなに外側と内側のコントラストが大きい肉団子は初めてだ。なめらかな種の中にしのばせたクワイのシャクシャクとした食感も絶妙で、火傷しそうな舌をビールで冷やし、またひとつ、またひとつと口に放り込み、あっという間に完食してしまった。
芳村さんによると、原シェフから最も多く修正が入ったのが、食感。「『クワイの食感が生きていない』と言われ、あく抜きの時間を短くしたり、切り方もいろいろと変えて、やっと合格をもらいました。肉も背脂を入れることでなめらかさを出しているのですが、入れすぎると油っぽくなるので、これも調整を重ねました」(芳村さん)。
肉団子用に1日20kgの肉を使用し、野菜はすべて店内で刻んで、一から手作りしている。大変だが、完全な手作りなので一皿580円という価格で提供できているそう。
「伯爵の肉団子」アレンジのすすめ
まずは単品で注文して、その味を堪能して欲しいが、店では他の料理と組み合わせたアレンジも推奨している。例えば「伯爵の肉団子」といっしょに「白菜の塩あんかけ炒め」(390円)を注文し、いっしょに食べると、八宝菜の味わいにアレンジできる。「黒酢野菜炒め」(390円)となら酢豚風に、「チンジャオ炒め」(390円)といっしょなら青椒肉絲(チンジャオロースー)風の肉団子料理に…、とさまざまなアレンジが可能。グループなら、いろいろな味が楽しめそうだ。上記は定番のアレンジだが、メニューには「手むき海老のチリソースに」(890円)、「秘伝 麻婆豆腐」(690円)、「ニラ玉」(390円)など、ほかにも試してみたい料理がたくさんある。
「伯爵の肉団子」を使った料理は、3種類
単品同士の組み合わせもあるが、人気の高い組み合わせ3種類は料理メニューとして提供している。最も人気が高いのが、「酢豚風肉団子」(写真上)。食感を残して短時間で炒めた野菜に、黒酢を使用したコクのある甘酢餡をかけている。
トロトロの肉団子と餡が口の中でひとつになり、そのまま食べるとカリカリだった表面の食感もガラリと印象が変わる。
「八宝菜風肉団子」(写真上・左)、「青椒肉絲風肉団子」(同・右)も、すべて同じ肉団子と思えない味わいに。肉団子のふところの深さを知った。
「伯爵の肉団子」以外のメニューも豊富
同店は肉団子以外のメニューも30種類ほどあり、どれも頼みやすい手ごろな価格帯。中華料理店では冷凍の完成品を使用する店も少なくないが、ほぼ手作りで、タレも店内で一から作っているという。芳村さんの一押しは、「海老のにんにくセイロ蒸し」(写真上)。ニンニク、春雨、エビを特製のタレで和えてセイロで蒸した料理で、中国では小籠包と同じくらいポピュラーだが、なぜか日本ではあまり知られていないとのこと。プリプリのエビはもちろん、エビのうまみとソースをたっぷり吸った春雨もご馳走だ。
「秘伝 麻婆豆腐」(写真上)も人気料理のひとつ。こちらも麻婆ソースの中にクワイがしのばせてあり、豆腐、肉とのコントラストが楽しい。かなりしっかりした味付けなので、ご飯やお酒が進みそうだ。
紹興酒もさまざまな年代のものをそろえていて、紹興酒カクテルも手ごろな価格で用意。カウンターには自家製の果実酒や薬酒も熟成を待っている。
昼は定食屋、夜は居酒屋として、長く愛されたい
今後、実施予定のランチタイムには定食(写真上)も提供する計画。「肉団子作りに手がかかるため、今はランチ用まで手が回らなくて…。でも態勢が整い次第、ぜひ始めたい。昼は町中華、夜は居酒屋として、長く愛される店にしていきたいです」(芳村さん)。味を付けていない肉団子はテイクアウトできる。持ち帰って家で温め直して食べてみると、店で食べるのとほぼ変わらない味わい! 誰にでも好まれ、アレンジもきく肉団子は、餃子や焼売よりも重宝されそうだ。この肉団子だけをたくさんテイクアウトしていく人の姿も見られ、人気がブレイクする可能性を肌で感じる。
【メニュー】
伯爵の肉団子 590円
八宝菜風肉団子 690円
青椒肉絲風肉団子 690円
酢豚風肉団子 690円
自家製旨味よだれやっこ 290円
海老のにんにくセイロ蒸し 890円
秘伝 麻婆豆腐 690円
伯爵の肉団子セット 690円
生ビール 490円
紹興酒 390円~
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込みです。
伯爵の肉団子 新宿御苑店
東京都新宿区新宿2丁目8-5 東弥鋼業ビル1F03-5925-8258
16:00~24:00(L.O.23:00)
無休
この記事の筆者:桑原恵美子(ライター)
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