上質フレンチをカジュアル価格で提供! 通いたくなる隠れ家フレンチ『ユヌパンセ』が東麻布にオープン
2020.03.24 18:00
高級フレンチのおいしさを、リーズナブルに体感できる一軒
東京タワーを間近に見上げる街、東麻布。小さな商店や飲食店が軒を連ね、地元に暮らす人々が行き交う通りに、小さなフランス料理店『une pincee(ユヌ パンセ)』が2019年の暮れに誕生した。都営大江戸線「赤羽橋駅」近く、「麻布いーすと通り」は、高級なイメージの“麻布”の名前と裏腹に、下町のような気さくな顔を持つエリア。
その一角にオープンした『ユヌ パンセ』は、マットなグレーの壁とどっしりとしたアンティークの木製ドアが、どこか小粋な風情を漂わせ、通りを歩く人々も思わず足を止めていく。
店内は、カウンター10席とテーブル4席。明々と照らす照明の色も温かみがあり、ナチュラルカラーの木材があちこちに使われ、肩肘張らない雰囲気。初めて訪れてもリラックスできそうだ。
「誰もが気軽に、フランス料理を楽しめる店を作りたい」
オーナーシェフの馬堀直也さん(写真上)は、都内のフランス料理店やフランス、イギリスで研鑽を積んだ後、代官山『マダムトキ』でスーシェフ、西麻布『コジト』でシェフとして活躍。クラシックなフランス料理で知られる名店で腕を振るってきたが、「よりカジュアルなフレンチをやりたい」と、麻布十番のカジュアルフレンチ『カラペティ・バトゥバ』に移り、料理長を務めた。そして2019年12月、『ユヌ パンセ』にて独立。
「誰もが気軽に、フランス料理を楽しめる店を作りたいと思いました」と笑顔で語る馬堀シェフ。
豊かなキャリアから生まれる上質な料理を、抜群のコストパフォーマンスでいただけると、早くも評判を呼んでいる。
柑橘の香りをそっとまとわせた、優しくも華やかな一品から
「食べ疲れない料理を作っていきたいですね」と語る馬堀シェフの想いを感じる一品からご紹介。鮮やかに散りばめられたミモレットチーズと、青々とした菜の花の彩りが春を予感させる「鳥取イナダのマリネ 橙のドレッシング」(写真上)。
イナダといえば、ブリの若魚で、脂が控えめで、淡泊な味わいが特徴。そのイナダを塩や砂糖で軽くマリネすることで、うまみと食感がおだやかに増幅。
ドレッシングは、橙(だいだい)とグリーンペッパー、マスタードを合わせたもの。カブのスライスも橙で軽くマリネしてあり、ドレッシングと一体となってイナダをふわりと包み込む。
ひと口食べると、さっぱりした味わいの中に、柑橘の甘い香りとフルーティな酸味がやさしく華を添えてくれる。塩味や酸味など、味覚にダイレクトに届く味付けは、素材のうまみを引き立てる程度にとどめ、その分香りを効かせることで、味わいに深みをもたらしている。
自家製コンソメジュレの下には、ズワイガニのうまみがとろける極上ムース
『カラペティ・バトゥバ』時代からのスペシャリテ「ズワイガニとアボカドのムース ウニとコンソメのジュレ」(写真上)は、フランス料理らしい、見た目にも洗練された一品。ここでも、供される直前にすりおろしたレモンの皮が爽やかに香る。上層のジュレは、牛骨から丁寧に取った自家製コンソメがベース。ジュレの下に見えるムースは、シンプルに塩で調味したアボカドのムースと、クリーミーな自家製マヨネーズで和えたズワイガニのムースの2層仕立て。食感を増すためにみじん切りしたタマネギを加えている。
3層を口に含むとまず感じるのは、2種のムースの口溶けのバランスが絶妙なこと。口の中でフワッと軽く、一体化して溶けていく。そこに、カニやコンソメのうまみの余韻もしっかり残り、うっとりするような味わい。このメニューをお目当てに訪れる人がいるというのも頷ける。
丁寧に焼き上げたイノシシ肉は、しっとりとほどけるようなやわらかさ
ジビエをメインに謳ってはいないが、馬堀シェフはジビエの知識も経験も豊富。メニューにあれば、ぜひ試してほしいのが、「対馬産イノシシのロースト」(写真上)。野生の木の実のみを食べて育ったイノシシは、よく出回っているものと比べて、臭みが全くなく、“濃厚な味わいの豚”という趣がある。
この肉を低温のオーブンで焼き、ディッシュウォーマー(食器を温めるための厨房機器)で休ませるという工程を、数分単位で何度も繰り返しながら、ゆっくりと火を通し、仕上げに強火のフライパンで表面を焼きつけていく。焼き上がった肉は、外側はカリッと香ばしく、中はしっとりと美しいロゼ色。
ソースには、ジュ・ド・ヴォライユ(鶏のうまみを凝縮したもの)を全体にひとまわし。
ひと口頬張れば、表面はサクっと軽やか、中心は口の中でほぐれていくほどのやわらかさ。噛みしめると、野生ならではの濃いうまみが溢れ出る。
添えてあるのは、白インゲン豆とルタバガ。
「スウェーデンカブ」とも呼ばれるルタバガは、日本では馴染みがない野菜だが、ヨーロッパではよく使われており、イモのようなホクホクした食感がどこか懐かしい。白インゲン豆は、イノシシの骨からとったジュ(だし)とトマトで煮込んでいる。どちらも素朴な甘みで、イノシシとの相性ぴったり。
優しい味わいの料理に合う、軽やかな飲み心地のワインも多数
ワインの担当は、馬堀シェフの良き相棒、ソムリエの資格を持ち、セカンドシェフも務める土佐岡洸二さん。「ワインは、フランスにこだわらず、ヨーロッパを中心にそろえています。シェフが作る料理は、優しい味わいなので、あまりパンチが効きすぎず、軽やかなものを用意するように心がけていますね」(土佐岡さん)
赤と白、ロゼ、泡とグラスワインは常時10種類と豊富に用意されている。ぜひ料理と合わせて楽しみたい。
1品だけでもOK! 気軽さと上質さを兼ね備えた、大切にしたい一軒
▲ソムリエの土佐岡洸二さん(写真上・左)、シェフの馬堀直也さん(同・右)店名の『une pincée (ユヌ パンセ)』とは、フランス語で「ひとつまみ」という意味。
奇をてらわず、旬の素材を当たり前に料理することを心掛けているという馬堀シェフの料理は、絶妙なひとつまみの加減で、毎日でも食べたくなる優しい味わいに仕上がっている。
遅い時間なら、ワイン一杯、デザートだけでも大歓迎なのだとか。毎日の暮らしの中に灯る、小さな彩りのようなレストラン。リラックスしながら美味に浸りたい日に、ふらりと訪れてみてはいかがだろう。
【メニュー】
鳥取イナダのマリネ 橙のドレッシング 2,800円
ズワイガニとアボカドのムース ウニとコンソメのジュレ 2,800円
対馬産イノシシのロースト 5,000円
※アラカルトは2人前のお値段です。
おまかせコース
※好みと量に応じてコースを組みませていただきます。(価格は内容に応じます)
グラスワイン 800円~
ボトル 4,400円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです。
une pincee(ユヌパンセ)
〒106-0044 東京都港区東麻布2-19-2 酒井ビル1F03-5561-2939
月~土 17:30~24:00(L.O.)
日曜、祝日(不定)
https://unepincee.com/
https://r.gnavi.co.jp/gcc44na70000/
この記事の筆者:小田中雅子(ライター)
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