巨匠の技が光る! 見た目も味もすばらしい中国料理を五感で楽しむ、外苑前『慈華 itsuka』
2020.02.18 18:00
中国料理界の巨匠が外苑前に『慈華 itsuka』をオープン
「素材を慈しみ、人を慈しみ、料理を慈しむ」。料理のコンセプトを店名にも落とし込んだ、外苑前『慈華』がオープンしたのは2019年12月のこと。麻布長江『香福筵』オーナーシェフを長年務めた田村亮介シェフ(写真下)の新店舗とあって、もとより多方面から注目されていたが、「これまで以上に生産者の想いに寄り添いながら料理したい」という田村シェフの決意を伺うと、さらに期待が高まる。
店内は、木目調にまとめられたあたたかな雰囲気。聞けば、「日本でしか表現できない中国料理を表現したかった」ことから、日本をイメージした材木選びにまでこだわったという。
ただし、和の空間にはならないよう、中国磁器や書を配すことで独自の美しい空間を演出。「中国料理の技をしっかりと使いながらも、シンプルに素材のよさを引き出した料理を楽しんでほしい」との思いを込めているのだ。
また、空間を広く使って円卓を設置した個室は、家族や友人など大切な人との集まりにもうってつけだ。
料理は、全11品程度から成るコースのみ。旬の食材を使った色とりどりの料理が展開される。
黄金色に輝く皮蛋と口当たりなめらかなムース状の豆腐の絶妙なコンビネーション
その中から今回、一品目に紹介するのは、ふんわりと丸みを帯びた豆腐の上に、ゴールドに輝く皮蛋(ピータン)がトッピングされた「黄金皮蛋豆腐」(写真下)。アユの魚醤で塩味をつけてムース状に仕立てられた豆腐は、口に含むとすーっと溶けるなめらかさ。その頂上にこんもりと盛りつけられているのが、黄金皮蛋の白身を細かく刻んだもの。皮蛋というと黒みを帯びた卵を想像するが、四川産のこの卵はまるでゴールドルチルのように煌びやかな見た目が特徴なのだ。
さらに、白身の上からチーズのように削られた状態でかかっているのが、皮蛋豆腐の黄身。お茶で漬けているため香りも豊かな皮蛋と、大豆のふくよかさいっぱいの豆腐が口の中で溶け合うと、得も言われぬ幸せな気持ちに満たされていく。
目にも楽しい華やかな前菜で運気アップ!?
こちらはネーミングからして心ときめかされる「運気の上がる前菜盛り合わせ」(写真下)。縦長のプレートに盛りつけられたとりどりの前菜を、手前から一つずつ食べ進めながら開運を願うという、なんとも縁起のいい一品だ。手前左からジグザグと、「豆腐干(とうふガン)とセリのネギ油和え」「富有柿と黄色人参の湯葉巻き」「紹興酒の香りづけフォアグラとナツメのテリーヌ」「北海道余市のあん肝」「ソラマメと雪菜の寄せもの」「クラゲの和えもの」「タケノコの素揚げカラスミトッピング」「よだれ鶏」の計8品。
「湯葉巻き」(写真上・左)には、キンモクセイのお酒で作ったゼリーまで組み込まれていたり、「あん肝」(同・右)は仕上げに中国茶でスモークされていたりと、いずれも手の込んだものばかり。
しかも、「豆腐干とセリのネギ油和え」(写真上・左)、「よだれ鶏」(同・右)が配された箇所は、プレートがくぼんでおり、水分が出る料理でも盛りつけることができるよう、くぼみをつけたプレートまで田村シェフご自身で考案したのだとか。
レモンの泡を溶かして味変を楽しむスープで、イカの卵巣「チチコ」を堪能
続いては、「チチコ」と呼ばれるイカの卵巣の、ねっとりとした独特の食感を楽しめるスープ「烏賊の卵 酸味と辛味」(写真下)を紹介しよう。スープは、鶏ひき肉をメインに、豚ひき肉、干し貝柱、金華ハム、大豆などを煮込んだすまし汁「チンタン(清湯)」。ピリッとコショウをきかせた辛味の感じられるスープだ。まずは、このスープとともにイカの卵巣の塩漬けを食感ごと堪能。
その後、上にトッピングされたレモン水の泡を溶かしてスープに酸味を加えると、酸辣湯のような味わいに変化するユニークな一品だ。
スペシャリテの「鴨 四川火鍋スープ仕立て」は、毎日でも食べたくなる一品
同店のスペシャリテは「鴨 四川火鍋スープ仕立て」(写真上)。氷砂糖と醤油で30分以上かけて煮詰めた和歌山県産の鴨を、20種類のスパイスが入った醤(ジャン)をベースとする火鍋でいただくこちらの一品は、濃厚なうまみがどこまでも後を引く。やわらかく煮込まれた鴨は、表面は香ばしく芯までジューシー。しっかりとした辛味がありながらコク深い火鍋スープは、一滴残らず飲み干したくなること必至! 日本の食卓には登場することが少ないであろう四川の料理なのに、「毎日食べたい」と思えるほどのおいしい。
美しい切子のグラスがさらに気分を高めてくれる
料理は紹興酒とも相性がピッタリ。同店では雅な切子のグラスを用意しており、このグラスで楽しむ一杯はおいしさもひとしお。料理だけでなく、お酒まで目でも楽しませてくれるところが心憎い。
「素材のことを想うと余計なことはしたくないけど、根底はしっかりと中国料理に落とし込んだコースで、美しい音楽のように自然な抑揚を奏でたい」と田村さん。おいしいお酒によって新たなハーモニーが加われば、さらに充実した時間を満喫できるはず。
【メニュー】
▼季節の食材のおまかせコース
15,000円 約8品
23,000円 約9品
30,000円 約10品
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別、サービス料10%を頂戴しています
撮影:岡崎慶嗣
慈華 itsuka
東京都港区南青山2-14-15 五十嵐ビル2F050-3468-1029(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
火~木
ディナー 17:30~23:00
(L.O.21:00)
金~日・祝日
ランチ 11:30~14:00
(L.O.13:00)
ディナー 18:00~23:00
(L.O.21:00)
月曜日
第2日曜日、第4日曜日
https://r.gnavi.co.jp/9vf6ymcv0000/
この記事の筆者:松本玲子(ライター/音楽家/ナレーター)
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