<セレクトショップ×地方がアツい!(3)>地方の課題をユニークにパッケージングして広める【フリークス ストア】の取り組み
地場産業とコラボレートしたアイテムを作ったり、伝統工芸の器を販売したり。セレクトショップで日本各地にまつわるアイテムが増えていると感じませんか? それだけでなく地方で行われるフェスに主催・協賛するなど町おこしに参画するショップもあります。2022年6月に始めた【フリークス電気】などを通じて地方の社会課題に取り組んでいる【フリークス ストア】を今回から3回に渡って取り上げます。【フリークス ストア】をはじめ、数多くのブランドを展開するデイトナ・インターナショナルでPRとブランディングのディレクターを担当している清宮雄樹さんにお話をうかがいました。
【フリークス ストア】が【フリークス電気】を始めた目的は?
アパレル業界に関わる人間の多くが驚いたであろう、2022年6月から始まった【フリークス電気】。セレクトショップがインフラである電気のプロジェクトを手がけたとあって、アパレル業界はもとより、それまで【フリークス ストア】と接点のなかった人たちからも関心を集めています。
「今、エネルギー問題が深刻なこともあり、顧客さまはもちろん、お取引先の方からの反響も大きかったですね。それまでお付き合いのなかったメディアからの問い合わせもあって【フリークス ストア】として、だいぶ間口が広がりました」(清宮さん)
セレクトショップがなぜ電気のプロジェクトを始めたのか、疑問に思う人がほとんどでしょう。
「多くの企業がそうであるように、弊社もSDGsを推進しています。【フリークス ストア】の渋谷店では【みんな電力】を引いていて【みんな電力】は再生可能エネルギーを供給するだけでなく、電気料金の一部を応援金として届ける仕組みがあります。『だったらうちが電気の新しいプランを作ってもいいよね』と閃いたのがきっかけ。【みんな電力】と協業して【フリークス電気】を始めることにしました。本来は発電所に寄付をしてもらうことが多いですが『取り組むなら地域の課題を解決できるものにしたい』との思いが強くありました」(清宮さん)
その取り組みに大きく関わっているのが、長野店です。【フリークス ストア】は都内にいくつもショップを構えているのに、なぜ長野店なのでしょうか?
「長野店のスタッフから、長野の耕作放棄地は全国5位を占め、どうにかしたいとの思いを聞いていて。農地が減少すると食料自給率が下がるだけでなく、野生動物が現れて人間との距離が縮まる、不法投棄の懸念が生まれるなど、様々な問題が生じます。そこで長野にある、学生ボランティアが耕作放棄地でポップコーンの実を育てるNPO法人【シナノソイル】に応援金を送り、耕作放棄地の問題だけでなく、長野の学生の支援になる仕組みを作りました」(清宮さん)
展示会で初めて発表された【フリークス電気】のスペースにはポップコーンが置かれていました。電気とポップコーンがつながらなくて、頭の中に「?」が浮かんだ人は多いでしょう。
「太陽光発電やサスティナブルな電気というのはここ何年も言われていますが、それについて調べようとはあまり思わないじゃないですか。でも【フリーク スストア】が電力プロジェクトを始めるとなると『何それ?』ってなるし、さらにポップコーンって、ますます興味が湧きません? 【フリークス電気】は契約件数ではなく、電気や耕作放棄地の問題を知ってもらうことに価値を置いています。だからまずは興味を持ってもらうことが大事。入り口はインスタで映えるとか単純な理由でいいんです。【フリークス電気】をきっかけに耕作放棄地の課題を知ってもらい、【フリークス電気】に切り替えることでポップコーン畑が広がっていく。そうして耕作放棄地の課題に一人でも多くの人を巻き込んでいきたいです」(清宮さん)
常識を覆すジビエの缶詰で長野の獣害問題を広く知ってもらう
長野での取り組みは、もう一つ。里山の変化やハンターの減少などにより、長野県は鹿や猪などの獣害に悩まされています。その解決の一助として2021年10月にジビエ缶を発売しました。
「長野店の顧客さまに、長野県庁のジビエ振興室に所属する職員さんがいます。店長が県の課題をうかがっていくうちに、お役に立ちたいという気持ちが湧いてきたそうです。店長の熱量もすごかったですし、弊社は店長の裁量権が大きいので、本社も一緒に取り組もうとなりました」(清宮さん)
お固い県庁の職員と、発想力やデザインで新しいものを提案していくアパレル業界の人間とは水と油。ジビエ缶にたどり着くまでは、大変だったのではないでしょうか。
「正直、当初は話が噛み合いませんでした(笑)。弊社が獣害問題に関わらせてもらう大きな目的に、若者にもこの問題を知ってもらうこと。その思いは県庁の方にもありましたから、若者の興味を引くアイデアの一つとして缶詰を提案しました。でも地元の人からすれば、ジビエ肉は新鮮な状態で食べるのが当たり前で、缶詰の発想はありませんでした。それに県庁は縦割りで害獣を処分するまでの部署、それ以降の獣肉の処理は違う部署。そこを繋がないことにはジビエ缶は生まれませんでしたが、顧客さまである職員さんが熱心に説得してくださったことが突破口になりました」(清宮さん)
そこから長野県内のレストランに協力してもらい、ジビエ缶は誕生します。【フリークス ストア】が発行するフリーマガジン「FREAK」でも信州のジビエ号を制作し、ジビエ料理を楽しめる長野市内のレストランを紹介するなどして、長野を盛り上げようとバックアップしました。
現在では、他の業者がジビエ缶を手掛けるまでに。でも、自分たちが出したアイデアを利用されるのって悔しくないですか?
「楽しみながら獣害問題を解消したい、ジビエ肉の新しい価値を届けたい、が私達の思い。今回は缶詰にすることで長く保存ができ、いつでも食べられることを知ってもらうことで、売上は目的ではありません。地域課題を若者に伝え、地元の持つ資源に付加価値を与えられれば、弊社としては最高です」(清宮さん)
それにしても長野にはファッションに熱い土地というイメージがありません。【フリークス ストア】がここまで長野に力を注ぐ理由はなんでしょうか?
「アパレルに限らず人出のある場所に出店するのが原則ですが、弊社が大切にしているのは、人が集まるコミュニティを作り、地元と関わっていける店にできるかどうか。長野店は1999年オープンと歴史が長いだけでなく、路面店なので【フリークス ストア】の世界観を出しやすく、地域との密着化しやすい面があります。地元の方たちと密度の高いやり取りを日々スタッフがしているので、自然と地元愛が高くなり、数ある店舗の中でも濃い企画が生まれやすい面はあるかもしれません」(清宮さん)
次回は茨城県古河市にあり、【フリークス ストア】一号店でもある【“The Camp”FREAK'S STORE】から地域の取り組みをうかがっていきます。
SeniorWriter:津島千佳
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