ベルリンの防空壕跡地のギャラリーで「SF1OG」が2023春夏コレクションを発表(宮沢香奈)
9月上旬「ベルリン・ファッション・ウィーク」が開催された。メルセデス・ベンツ主催によるランウェイショーやエキシビジョン、イベントなどがメインとなるが、今回はそのほとんどに参加することができず、行く予定だったウクライナ発Bobkovaのショーが観れなかったのは非常に残念だった。
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そんな中、唯一観ることが出来たのが「SF1OG」だ。2019年にベルリンでスタートしたばかりの新進気鋭のブランドで、デザイナーは、ローザ・マルガ・ダール(Rosa Marga Dahl)。 性別やシーンを問わず着れるユニークな一点ものや少量生産にこだわり、廃棄物からのリサイクルで作られた素材をメインに使用している。
「UNTITLED」と題された最新コレクションは、ブラックとホワイトを基調としたミニマルなルックをメインに、大胆なカットのレイヤード、シースルーと異素材のコンビネーション、フューチャリスティックなパンクスタイルなど、90年代のベルリンのテクノクラブを彷彿させる懐かしさと新しさが混合していた。また、ベルリンのシューズショップ「SIDESTEP」とコンバースとのコラボレーションにより、全モデルがモノトーンのチャックテイラー70やチャックテイラーオールスターを履いて登場した。
ベルリンの90年代テクノと言えば、浮き沈みこそあるもののずっと変わらずシーンに存在し続けており、“アーリーテクノのリバイバル”なんて言葉は何度聞いたことだろう。ファッションにおいてもリバイバルは当然のように繰り返され、その時代のトレンドや社会情勢などによって再構築されている。現代におけるそれはまさに、サステナビリティーと多様性なのだと思う。今後サステナブルな思想を持たないブランドはどうなっていってしまうのだろう?とさえ思う。
「SF1OG」のように“100%リサイクル”は掲げず、「ポリエステル100%など、洋服にとって重要な素材は生地で仕入れます」と、潔く公言することも必要となってくるのではないだろうか?妥協なく作った洋服を購入した人が大切に長く着ること、壊れてしまったら手直しして再利用するなど、リサイクル以外にも実行できることはたくさんあるのだ。
ジェンダーレスなデザインや多種多様なモデルを起用するブランドが多い昨今。「SF1OG」では、スローモーションのようにモデルがゆっくり歩く演出がユニークだったが、1番の演出効果は筆者がベルリンの中で最もお気に入りで何度も足を運んでいるコンテンポラリーギャラリー「The Feuerie Collection」を会場に選んだことだろう。圧巻の敷地面積を誇るデカダンスなコンクリート空間は、第二次世界大戦時に通信施設として利用されいた防空壕跡地。イギリス人建築家ジョン・ポーソンによって改装され、中国王朝時代の王族の家具、クメール彫刻、荒木経惟、ジェームズ・リー・バイヤーズなどの作品が並ぶ。展示方法や観覧方法など、ここでしか体験できない唯一無二の場所であり、神聖な場所でもある。
ショーのために大量の照明が増設されたとは言え、フォイエルレの独特な雰囲気そのままがショーに反映され、素晴らしい演出効果を発揮していた。招待ゲストたちの個性溢れるファッションやコレクションスナップを撮ってもらうために会場前で入待ち、出待ちをする若者たちの姿も微笑ましかった。
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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。
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