引っ越しの見積もりで荷物を少なく伝えた僕が、彼女に隠していた本当の弱さ
二人の新しい生活に向けて
付き合って2年になる彼女と、一緒に暮らすことを決めたとき、僕は心から嬉しく思いました。彼女が安心して過ごせる部屋にしたい。そんな気持ちで、新しい住まいを探していました。
ただ、ひとつだけ気がかりがありました。引っ越しにかかる費用です。敷金や礼金、家具の買い替え。気持ちが先走るほど、必要なお金は膨らんでいきます。僕は彼女に負担をかけたくなくて、その多くを自分でなんとかしようと考えていました。
つい口をついて出た言葉
業者の方が部屋を見て回るあいだ、僕の頭の中は費用の計算でいっぱいでした。少しでも安いプランにできないか。荷物の量を抑えれば、その分料金も下がると聞いていたのです。
彼女の本棚やクローゼットの前を通ったとき、僕は反射的にこう言っていました。「彼女の荷物は少なめなので、これで足りると思います」。隣で彼女がこちらを見たのは、わかっていました。けれど僕は、目を合わせることができませんでした。荷物が少ないなんて、本当は思っていません。ただ、お金の話をその場でしたくなかった。その一心で、彼女の荷物を口実にしてしまったのです。
彼女の沈黙が教えてくれたこと
見積もりが終わってからも、彼女の口数は少ないままでした。優しい彼女が何も言わないことが、かえって僕には応えました。費用を抑えたかったのは本当です。心配をかけたくなかったのも本当です。
けれど、よくよく考えてみると、僕は自分の見栄も守ろうとしていたのだと気づきました。お金に余裕がないと知られたくない。頼りない男だと思われたくない。その弱さを隠すために、いちばん大切にすべき彼女の荷物を、軽いものとして扱ってしまった。守りたかったのは彼女ではなく、自分のつまらないプライドだったのかもしれません。
そして...
あの一言を、なかったことにはできません。でも、このまま黙っているのも違うと思いました。だから僕は、引っ越しの日を待たずに、彼女へ正直に話そうと決めました。
費用のこと、見栄を張ってしまったこと、彼女の荷物を口実にしてしまったこと。全部、僕の弱さでした。彼女の荷物が多いのは、それだけ彼女が大切にしてきたものがたくさんあるということです。本当は、その全部を新しい部屋へ連れていきたい。少なめだなんて、二度と言いません。この前、彼女の部屋で本をまとめた箱を見つけました。持ち上げてみると、ずっしりと重い。きっと彼女が、ひとりで運ぼうとしていた箱です。
次に段ボールを運ぶときは、このいちばん重い箱を、僕が真っ先に持ちます。彼女の大切なものごと抱えて、新しい部屋へ。二人の暮らしは、きっとそこから本当に始まるはずだから。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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