表示名を店名に変えた僕が、彼女を不安にさせていたと気づくまで
内緒で店に通っていた理由
学生時代からの友人が、念願だった自分の店をオープンさせました。人手が足りないと聞いて、僕は仕事のあとに手伝いに行くようになったのです。開店をもり上げようと、友人や仲間うちで「しばらく表示名を店名にして宣伝しよう」という話になり、僕もそれに乗りました。
彼女には、店が軌道に乗ったころに連れてきて驚かせるつもりでいました。だから、それまでは黙っていようと決めていたのです。今思えば、その思いつきが、彼女を不安にさせる入り口になっていました。
言えなかった一言
あるとき、彼女から一通のメッセージが届きました。
「この『ボヌール』って、何?」
画面に並んだその質問を、僕はしばらく見つめていました。きちんと説明すればいいだけのことだったはずです。けれど、せっかくのサプライズを台なしにしたくないという気持ちと、自分の思いをうまく言葉にできない性分とで、打っては消してをくり返した末に、つい「今は言えないんだ」とだけ送ってしまったのです。
送信したあと、画面の向こうで彼女がどんな顔をしているのか、想像はついていました。それでも、ちゃんと向き合うことから逃げてしまった自分がいたのです。やり取りのたびに当たり障りのない返事を重ね、彼女に隠しごとを積み上げている後ろめたさだけが、少しずつたまっていきました。
店に連れて行った日
準備が整い、僕は「行きたいところがあるんだ」と彼女を誘いました。電車に乗って、友人の店へ向かいます。扉を開けると、友人が「毎日のように手伝いに来てくれて、本当に助かってました」と彼女に話してくれました。
事情を理解して、ほっとした顔になる彼女を見て、僕は「本当は、ここに連れてきて驚かせたかったんだ」と打ち明けました。同時に、自分の黙っていた数週間が、彼女にどれだけ重いものだったのかを思い知ったのです。
そして...
サプライズという言葉を口実にして、僕は本当のことを話す面倒から逃げていたのだと思います。驚かせたかったのは本心です。けれど、それ以上に、気持ちを言葉にするのが苦手な自分を、都合よくごまかしていただけなのかもしれません。
彼女が見せた不安そうな顔を、僕はきっとこの先も忘れないでしょう。次に伝えたいことができたときは、もったいぶらずに、まずきちんと話そうと思います。
彼女が安心して笑ってくれる、その顔を一番に守れる人でありたいのです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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