本気になるのが怖くて予防線ばかり張っていた俺の前に、元カノが現れた日のこと
予防線という鎧
その日も、向かいに座った相手にひとしきり自分の話をしました。相手が感心してくれるほど、自分が優位に立てている気がして安心できたのです。会話が途切れかけたところで、俺はいつものように切り出しました。「他にも会ってる子いるから」。
本当に何人もと会っているわけではありません。ただ、先に予防線を張っておけば、本気になって傷つくのは自分じゃない。そう信じ込んでいただけでした。
隣に座った元恋人
相手が何か言いかけたとき、隣のテーブルに見覚えのある人が腰かけました。少し前まで付き合っていた人です。別れ際に「あなたは誰にも本気にならないね」と言い残して去っていった人でした。
連れと笑い合う彼女は、こちらにまったく気づきません。俺だけが、その横顔から視線をそらせずにいました。もう乗り越えたつもりでいたのに、こんなにも動揺している。手にしていたはずの余裕が、音もなくこぼれ落ちていくのがわかりました。
逃げ出した席で
これ以上ここにいたら、情けない自分を相手に見抜かれてしまう。そう思った俺は、伝票をつかんで「ごめん、もう行かないと」と席を立ちました。本当の理由を口にすることは、できませんでした。本気になるのが怖くて、傷つく前に予防線を張る。そうやって自分を守っているつもりで、俺はずっと、目の前の相手を雑に扱ってきたのです。彼女が俺に本気にならなかったのは、きっと俺自身がそうさせていたからでした。
そして...
あの場から逃げ出してからずっと、自分が握っていた「余裕」の正体を考えています。それは強さではなく、誰かに本気で向き合う勇気のなさを隠すための言葉でした。
次に誰かと向かい合うときは、予防線を先に張るのをやめてみようと思います。傷つくのが怖くても、相手をきちんと一人の人として見つめること。それができて初めて、俺は元恋人が言った言葉を、本当の意味で乗り越えられる気がするのです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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