「定時で帰るやつは出世できない」と言う上司→残業ゼロの私が昇進した日
毎日18時に会釈をして帰る私と、課長の決まり文句
入社して配属された企画営業部は、夜遅くまで明かりが消えない部署でした。先輩たちは20時、21時まで残るのが当たり前。けれど私は最初の月から、自分の仕事を時間内に終わらせて帰ると決めていました。
「お先に失礼します」。
デスクから立ち上がってそう言うたび、課長が必ず口を開きます。「定時で帰るやつは出世できない」。最初の数回は冗談として笑って受け流していました。けれど半年も経つと、その言葉は確実に皮肉として届くようになっていったのです。
仕事は手を抜いていません。むしろ定時で終わらせるために、朝の通勤電車では段取りを必ず立てていました。資料作成は雛形を磨き上げ、商談前のシミュレーションも欠かしません。それでも、課長から見える私は「気合いの足りない若手」でしかなかったようでした。
3年間、変えなかった働き方
3年間、私は同じ働き方を続けました。担当顧客の契約継続率は部内で常に上位3位。新規開拓も年度目標を毎年達成してきました。数字で示せば理解してもらえると信じていたのです。
けれど評価面談のたび、課長の口から出るのは決まって同じ言葉でした。「数字は悪くない。ただ、姿勢が」。語尾が濁されるその一言が、毎回引っかかっていたのです。同期が次々に深夜まで残業する姿をたたえられ、私だけが「もう少し頑張れ」と言われ続ける日々。
それでも私は、自分の働き方を曲げませんでした。母が看護師でずっと夜勤明けの疲れた顔をしていたのを見てきたから、自分は「時間を守って結果を出す働き方」を貫きたかったのです。誰かに認められなくても、自分との約束は守りたかった。それだけでした。
評価会議の日に起きていたこと
人事評価会議の日。私はいつも通り定時で帰宅し、その夜は何も知らずに過ごしました。翌朝、出社すると課長が私のデスクまで来て、少し決まり悪そうな顔で言いました。「おめでとう。昇進、君のことだ」。
「ありがとうございます」と頭を下げながら、私は咄嗟に状況がのみ込めませんでした。係長への昇進。部署で最年少での抜擢でした。後で同期から聞いたのは、評価会議で部長が「彼女の生産性は部内トップだ。時間内に成果を出す力こそ、これからの管理職に必要だよ」と発言したという話でした。
その日の夕方も、私はいつも通り「お先に失礼します」とだけ言って退社しました。課長は手元の書類に視線を落としたまま、小さく頷きました。何かを言いかけて、結局口を閉じたように見えました。
そして…
昇進してから半年が経ちました。係長になっても、私の働き方は変わっていません。むしろ、自分のチームメンバーには「時間内に終わらせる工夫を一緒に考えよう」と声をかけるようになりました。
定時で帰ることが絶対な正解だとは、今でも思っていません。誰かには深夜まで集中する時間が必要かもしれない。ただ、誰かの「あるべき姿」に合わせなくても、自分の責任を果たしていれば、見てくれる人はちゃんと見てくれる。3年間、課長の言葉に揺らがず働き続けてよかったと、今はそう思えます。
(20代女性・企画営業)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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