引っ越して3週間、近所の視線に怯えていた私が、集積所で声をかけられた朝に泣いた話
段ボールの山に埋もれた日々
夫の単身赴任は、出産の2週間後に決まりました。1年間、別の県で暮らすことになります。実家の母も働いていて、簡単には頼れません。家賃を抑えるために選んだのが、夫の勤務地から少し遠い、けれど落ち着いた住宅街にあるこの家でした。引っ越し当日から、私はほぼ一人で荷ほどきと育児を回していました。段ボールは半分も開けられていません。赤ちゃんはまだ昼夜問わず、3時間ごとの授乳で頭がぼうっとしたまま、ゴミの日が来てしまうのです。
違う色の指定袋
最初にゴミを出したとき、袋の色が違うことには気づいていました。けれど、新しい袋を買いに行く時間も気力もなくて、引っ越し前に使い残した袋にそのまま入れてしまったのです。分別表を玄関に貼ってはみたものの、文字を追っても、どれが何のゴミなのか、産後の頭にはどうしても入ってきません。
集積所に袋を置いて帰る道すがら、いつもどこかの家のカーテンが揺れた気がしました。被害妄想だとわかってはいても、「見られている」という感覚が、毎週少しずつ重くなっていきました。
集積所で呼び止められた朝
その朝、抱っこひもで赤ちゃんを連れて集積所に向かいました。袋を置こうとした瞬間、後ろから「ちょっと、それ、分別が違うわよ。前から気になっていたの」と声がしました。とうとう来た。そう思いました。振り返ると、よく見かける50代くらいの女性が立っていました。叱られる、怒鳴られる、そう構えながら、私はうつむいて「すみません……気づいてはいたんですが、対応する余裕がなくて」と消え入りそうな声で答えるのが精一杯でした。「夫が単身赴任中で、生まれたばかりの子と二人なんです」「以前住んでいた町とルールが違っていて、表を見ても頭に入らなくて」。気がつけば、堰を切ったように事情を話していました。
そして...
玄関先まで一緒に歩きながら、女性は抱っこひもの中の赤ちゃんをじっと見ていました。それから「私、ずっとあなたのこと、ルーズな人だと決めつけていました」と頭を下げてくれたのです。続けて「赤ちゃん、よく寝てくれてる?」と聞いてくれたとき、私は涙をこらえることができませんでした。
誰かとちゃんと話したのは、引っ越してから3週間で初めてでした。翌日、女性は分別表をラミネートして持ってきてくれました。「分別表、一緒に貼っておきましょう」。差し出された手を、私は両手で握り返しました。冷たく感じていたカーテンの揺れが、もしかすると気にかけてくれていた誰かの視線だったのかもしれないと、その時はじめて思えました。
(30代女性・会社員/育休中)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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