毎日のお弁当を笑った私が、2つの弁当箱の意味を知った昼休み
ランチは外で食べるもの
私にとって昼休みは、同僚と店を選んで出かける時間です。仕事の話をしながらパスタを食べたり、新しくできたカフェに行ってみたり。職場の人間関係はランチで作るものだと、ずっと思っていました。
だからこそ、毎日ひとりでデスクにお弁当を広げている彼女のことが気になっていたのです。ある日、つい口をついて出ました。「弁当持参って恥ずかしくない?」。彼女は少し間を置いて「私は好きで作ってるので」と答え、そのまま黙って箸を動かし続けました。その横顔が、妙に印象に残りました。
誘っても断られる距離
後日「一緒に食べに行こうよ」と声をかけました。仲間外れにしたいわけではなかったのです。ただ、一緒に来てくれたらいいのにと思っていました。彼女は「お弁当あるので」とやんわり断りました。「そこまでして節約?」。少し意地の悪い言い方だったと、自分でもわかっていたからです。
正直に言えば、毎月のランチ代は私の財布にも重くのしかかっていました。でも「外で食べるのが普通」だと思い込んでいる自分には、お弁当を持参するという選択肢がなかったのです。
もう1つの弁当箱
ある日の残業後、先に帰る彼女の鞄から、お弁当箱が2つ見えました。朝持ってきたのは1つだったはず。不思議に思っていた数日後、別の同僚がぽつりと言いました。「彼女のお母さん、半年前から体調崩してるらしいよ」。
朝作った弁当を、帰りに実家へ届けている。あの弁当箱の中身は、自分のためだけじゃなかった。お母さんへの気持ちも一緒に詰められていた。それを私は「恥ずかしい」と笑ったのです。
そして...
翌日の昼休み、外に出る同僚たちに「今日はいいや」と伝えました。コンビニでおにぎりを2つ買って、彼女のデスクの隣の椅子を引きました。「隣、座っていい?」。彼女は少し驚いた顔をして、小さくうなずいてくれました。
お弁当箱のふたを開ける彼女の横で、おにぎりの包みをほどきながら、唇をぐっと引き結びました。弁当を恥ずかしいと笑った自分が、一番恥ずかしかった。あの弁当箱に詰められていたのは、私がこれまで知らなかった種類の優しさでした。明日は、自分でも何か作ってみようか。不器用な手つきでも、詰められるものがあるかもしれないと思ったのです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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