デートのたびに「楽しかった」としか送れなかった→彼女に問われて気づいた、一言に詰め込んでいた全部のこと
一言しか出てこない
昔から、気持ちを言葉にするのが苦手でした。嬉しいときも、感動したときも、口から出てくるのは「すごい」とか「よかった」ばかり。心の中にはたくさんあるのに、文字にしようとすると途端にうまくいかなくなるのです。デートの帰り道、伝えたいことは山ほどある。でもメッセージの画面を開くと、結局いつも同じ言葉しか浮かんでこない。「今日楽しかった、ありがとう」。毎回それが精いっぱいで、送信したあとにいつも「また同じだ」と小さくため息をついていました。
聞かれて固まった夜
動物園デートの帰り、いつものように「今日楽しかった、ありがとう」と送りました。すると彼女から返ってきたのは、「ありがとう、ちなみに具体的にどこが楽しかった?」という一言。既読をつけたまま、画面を見つめていました。楽しかったことなら覚えている。ペンギンを見て笑い合ったこと、お昼を食べているときの彼女の表情や変なイントネーションの「おいしいね」、お土産を選ぶ横顔、帰りの電車でもたれてきた肩の重み。どれも鮮明に残っているのに、それをどう伝えたら伝わるのか、まるで見当がつかなかったのです。
3日間の下書き
スマホのメモ帳に思いつくまま書いては消す日が続きました。1日目はうまくまとまらず途中で閉じ、2日目は恥ずかしくなって全部消してしまいました。3日目の夜、「ちゃんと伝えなかったら後悔する」と思い、覚悟を決めて送信ボタンを押したのです。
「ごめん、遅くなった。ちゃんと伝えたくて考えてた。まずペンギンのエリアで俺が『あの歩き方おもしろい』って言ったとき、一緒に声出して笑ってくれたのが嬉しかった。お昼を食べてるとき『おいしいね』って言った時のイントネーションが可愛かった。帰りの電車で肩にもたれてきたのも嬉しかったし、正直もう2駅くらい乗り過ごしてもいいって思ってた。毎回ちゃんと言葉にできなくてごめん。楽しかったって一言にしてるけど、本当は毎回こんな感じでいっぱいある」
送ったあと、恥ずかしさで思わず画面を閉じてしまいました。
そして...
しばらくして届いた彼女の返信は、短い言葉だけでした。でもそれだけで、ちゃんと届いたのだとわかりました。今でもデートのあとに送る感想は「楽しかった」の一言です。言葉にするのが得意になったわけではありません。でも彼女はもう、その奥にあるものを知ってくれている。だから安心して、不器用なままの自分でいられるのだと思っています。
(20代男性・研究員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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