誰にでも返信できたのに、彼女にだけ言葉が出てこなかった
返せない理由
俺はメッセージの返信が遅い人間ではありません。仕事のチャットには即レスするし、友人のグループチャットにも普通に参加します。彼女に「忙しいなら、一言だけでいいから」と言われたとき、「読んでるよ」と返しました。嘘ではありません。全部読んでいます。
ただ、彼女のメッセージを開くと返事を打っては消し、打っては消しを繰り返して、結局何も送れなくなるのです。「了解」で済ませたくない。でもうまい言葉が出てこない。そのまま時間だけが過ぎていきました。
天才と呼ばれた夜
水曜の夜、通知を開くと「既読スルーの天才だよね」と書いてありました。皮肉だとわかっていました。
その数時間前、俺は友人との食事の写真をSNSに上げていた。彼女がそれを見たのだろうと、すぐに察しました。SNSには気軽に投稿できるのに、彼女へのたった一言が打てない。自分でもおかしいと思います。返そうとスマホを持ち上げると、また指が止まりました。
12回書き直した一文
結局、その夜はメッセージを返せませんでした。翌朝、通勤電車の中で何度も文を打っては消しました。「ごめん」だけでは足りない。「忙しかった」は嘘になる。昼休みに打った文がこれでした。
「お前にだけ、何て返していいかわからなくなる」
格好つけたかったわけではありません。それが一番正直な言葉でした。送信した瞬間、手のひらが汗ばんでいることに気づきました。
そして...
既読はすぐにつきました。でも返信が来ない。1時間経っても、2時間経っても。ああ、これか、と思いました。彼女が毎日感じていたのは、この感覚だったのかと。
俺はわかっていたのです。「言葉が出てこない」のではなく、失敗するのが怖くて逃げていただけだと。
あの一文は、本音であると同時に、俺の一番ずるい言い訳でもあったのです。次に彼女から連絡が来たとき、逃げずに返せるのか。画面の向こうで彼女が待っていた時間の重さを、俺は今ようやく、自分の番で知りました。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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