「おとなしすぎてやっていけない」と笑う同僚→新人のプレゼンで全員が黙り込んだ
給湯室で聞いた声
配属されて3ヶ月。私は相変わらず、職場で目立たない存在でした。会議では発言のタイミングがつかめず、雑談の輪にも自然に入れません。昼休みはいつもデスクでお弁当を食べていました。
ある日の午後、給湯室に入ろうとしたとき、中から聞こえてきた声に足が止まりました。
「おとなしすぎてやっていけない」
笑い声が続きます。声の主は入社5年目の先輩でした。その場にいた別の同僚も「まあね」と相づちを打っています。扉の前で、私はそのまま引き返すことしかできませんでした。
言葉ではなく、形で
悔しくないと言えば嘘になります。でも「言い返す」という選択肢は、私の中にはありませんでした。言葉で伝えるのが苦手だから、おとなしく見えるのだと自分でもわかっていたからです。
翌週、部署の月例会議で新人がひとり10分間のプレゼンを担当することになりました。テーマは自由。私は毎晩遅くまでデータを集め、構成を何度も練り直しました。誰かを見返したかったわけではありません。ただ、自分にできる方法で、ここにいる意味を示したかったのです。
誰も何も言わなかった10分間
プレゼン当日。スライドの最初のページを映した瞬間、指先がわずかに震えました。それでも、準備してきた言葉をひとつずつ、丁寧に伝えました。3ヶ月間、発言しないかわりにずっと観察してきた部署の課題。その分析と改善案を、10分に詰め込みました。
話し終えたとき、会議室がしん、と息を呑む気配が広がりました。数秒間、誰も何も言いません。やがて部長が「すぐ実行に移せるか検討したい」と口を開き、周囲がうなずき始めました。あの先輩だけが、手元の資料に目を落としたまま動きませんでした。
そして...
会議のあと、先輩が私のデスクに来て「さっきのプレゼン、よかったよ」と言いました。笑顔でした。でもその笑顔が、給湯室で笑っていたときと同じ形に見えて、うまく受け取れませんでした。
「ありがとうございます」とだけ返して、パソコンの画面に視線を戻しました。おとなしいことは弱さじゃない。自分の言葉が誰かの耳に届いた、あの数分間の手応えだけが、そっと胸の中に残っていました。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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