社員に「代わりはいくらでもいる」と言ったら→私の会社は少しずつ壊れていくことに...
「どうせ辞めない」という油断
彼女が待遇改善を求めてきたとき、正直なところ、それほど深刻には受け止めていませんでした。小さな会社にありがちな不満の一つだと思っていたのです。
「勘違いするなよ。お前の代わりなんて、いくらでもいるんだぞ」という言葉は、半ば脅しのつもりで言いました。そうすれば黙って続けてくれると思っていました。
彼女がその翌週、退職届を持ってきたとき、少し驚きはしました。でも「すぐに誰か入れればいい」と自分に言い聞かせました。
3年間、一人で会社を支えてきた仕事の全貌を、私はまだ理解していなかったのです。
3人が去った1ヶ月
後任の募集をかけ、1週間で3人採用しました。ところが引き継ぎ資料を渡すと、最初の担当者が「業務量が聞いていた話と違う」と言って1週間で辞めました。
2人目は経理の入力ミスを連発し、税理士から直接クレームが入りました。
3人目は給与計算の締め日前日に体調不良と連絡が来て、そのまま音信不通になりました。
経理の帳簿は途中で止まり、備品の在庫も誰も把握していない。何かを決めようとすると、どこかで必ず詰まる。会社というのはこんなにも一人の人間で成り立っていたのか、と初めて実感しました。
電話をかけた夜
1ヶ月が経ち、もう自分ではどうにもならないと悟りました。税理士には「早急に経理担当を確保してください」と釘を刺され、社員からは「なにも決まらない」と不満の声が上がっていました。
彼女の番号を呼び出しながら、自分がどんな顔で話せばいいかわからなくなりました。あの日「代わりはいくらでもいる」と言い放った自分が、今こうして電話をかけている。その矛盾が、電話が繋がる前から胸に刺さっていました。
そして...
「すまない、戻ってきてくれないか。経理も人事も、何もかもが止まってしまったんだ」
精一杯の言葉でした。
彼女の声は落ち着いていました。少し間を置いて、こう言いました。
「代わりなんて、いくらでもいるんじゃなかったんですか?」
電話が切れました。
言い返せませんでした。当然だと思いました。私はあの言葉で、3年間積み上げてきた信頼を、自分の手で壊していたのです。誰かに怒鳴られるより、無言で電話を切られる方がずっと重かった。
(50代男性・経営者)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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