「そんな男はやめておきなさい」結婚に猛反対する母→反対していた"本当の理由"
何を聞いても「なんとなく」しか言わない母
彼と出会って2年が経ったころ、母に結婚の意思を伝えました。穏やかで誠実な彼のことを、きっと気に入ってもらえると思っていた。
でも、紹介を終えた後の母の第一声は「そんな男はやめておきなさい」でした。
理由を尋ねると「なんとなく好きになれない」と繰り返すばかり。母は「とにかく、そんな男はやめておきなさい」と、具体的なことは何も言ってくれませんでした。彼の仕事のこと、人柄のこと、将来のことを丁寧に話しても、母の気持ちは動かなかった。
何度話し合っても平行線が続き、次第に実家へ帰る足が重くなっていきました。母を嫌いになりたいわけじゃない。でも、大切な人を理由もなく否定され続けることが、じわじわと心を削っていったのです。
母の友人から聞いた、言えなかった理由
転機は、偶然の再会からやってきました。外出先で母の古い友人に出会い、立ち話をしているうちに、ぽつりと教えてくれたのです。
「お母さんね、あなたの彼が若いころのお父さんにそっくりだって言ってたのよ」
その言葉を聞いた瞬間、いくつものことが繋がりました。母は長い結婚生活で、たくさんの苦労を抱えてきた。自分と同じタイプの男性と結婚して、娘にも同じ思いをさせたくなかった。それだけが、反対の理由だったのです。
「でも、お父さんの悪口はどうしても言えなかったって」と友人は続けました。娘の前で元夫を悪く言うことができなくて、理由を説明できないまま「反対」という言葉だけが残ってしまった。母なりの、不器用な愛情だったのだと知りました。
初めて見た、母の涙
友人から話を聞いた数日後、私は母と話し合う事にしました。
「お母さんが苦労してきたこと、知ってるよ。でも彼はお父さんとは違う人だから」と、できるだけ優しく伝えました。
しばらく沈黙が続いた後、母の目から涙がこぼれました。あんなふうに泣く母を見たのは、初めてのことでした。
「分かってる。本当はあの子のこと、いい子だと思ってた」
その言葉を聞いたとき、長い間張り詰めていたものが、ふっとほどけていく感覚がありました。
結婚式の日、母は彼の前で深く頭を下げました。「娘を頼みます」と。小さな背中でしたが、その姿がとても温かく見えました。
そして…
今では月に一度ほど、夫と一緒に母のもとへ顔を出しています。最初はぎこちなかったふたりの会話も、今では笑い声が交じるようになりました。
母はすべてを言葉にするほうではないけれど、夫に向ける表情が少しずつ柔らかくなっているのを感じます。あのころの苦しさがあったから、今この食卓の温かさをより深く感じられるのかもしれない。
母の不器用な愛情を知った今、私たちはゆっくりと、新しい家族のかたちを築いていこうとしています。
(30代女性・デザイナー)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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