「あんたの学歴じゃ無理」と提案を拒否→気が付いたら取引先の社長に
学歴だけが、私の武器だった
私は都内の有名大学を卒業し、メーカーに入社しました。同期の中では学歴はトップクラス。それが私の誇りであり、唯一の拠り所でした。
正直に言えば、仕事で飛び抜けた成果を出したことはありません。要領は悪くないが、突出した才能もない。でも「あの大学を出た」という事実が、私を支えてくれました。
学歴さえあれば、自分は価値のある人間でいられる。
そう信じることで、なんとか自分を保っていたのだと思います。
あの日の傲慢
営業部に、地方の短大卒の女性社員がいました。入社3年目で営業成績はトップクラス。周囲からの評価も高く、正直に言えば、その優秀さが目障りでした。
学歴では圧倒的に私が上。なのに、現場での実績は彼女のほうが上。その事実を認めたくなくて、心のどこかでずっと見下していたのです。
ある日、社内の新規事業プロジェクトに彼女が立候補してきました。海外取引先の開拓という、私が統括する大きなプロジェクト。彼女は企画書まで作り込んで持ってきました。
私はその企画書を読みもせず、こう言い放ちました。
「あんたの学歴じゃ、このプロジェクトは無理だよ」
彼女が食い下がってきたとき、さらにこう突き放しました。
「身の程をわきまえなさい。学歴っていうのは一生ついて回るものなんだよ」
あのときの彼女の、悔しさで震える目。今でも忘れられません。
結局、プロジェクトには自分の大学の後輩を推薦しました。成果は可もなく不可もなく。特別な結果を残すことはありませんでした。
止まったままの10年
その後、彼女は会社を辞めました。「やっぱりね、短大卒じゃ続かない」と陰で言ったのを覚えています。それから10年。私は課長のまま、同じ部署で同じ仕事を続けていました。後輩たちがどんどん昇進していく中で、私の肩書きだけが変わらないままでした。
会社の中で、「学歴」はもう誰も話題にしなくなっていました。評価されるのは成果を出す人間、行動する人間。私がしがみついていた「一流大学卒」という看板は、とうに色あせていたのです。
でも、それを認めるのが怖かった。認めてしまったら、私には何も残らないから。
そして…
ある日、会社から重要な取引先との商談を任されました。急成長している輸入商社の代表と直接会えるチャンスだと聞き、気合を入れて会議室に向かいました。
ドアが開いて、相手の代表が入ってきた瞬間、息が止まりました。
10年前、私が企画書も読まずに追い返したあの彼女だったのです。そして、「代表取締役」の名刺を差し出していたのです。
「お久しぶりです。本日はよろしくお願いいたします」
落ち着いた声、堂々とした佇まい。あの頃の悔しそうな顔はどこにもなく、すべてを乗り越えた人間だけが持つ自信をまとっていました。
商談の最後、彼女はこう言いました。
「10年前、企画書を読んでいただけなかったこと、覚えていらっしゃいますか。あのとき読んでいただけていたら、御社にとっても良い結果になっていたかもしれませんね」
私は何も言えず、ただ頭を下げることしかできませんでした。
(50代男性・営業)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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