「君にはまだ早いかな」と連れてこられた高級レストラン。でもそこは、私のお気に入りの店なのだが...
上から降ってくる言葉たち
レストランに向かう道すがら、彼は何度も「君にはまだ早いかもしれないけど、今日の店はちょっと格が違うから」「メニューも読めないかもしれないけど、俺が選んであげるから大丈夫」と繰り返していました。ドレスコードの話、ナイフとフォークの使い方まで丁寧に教えてくれるのです。私が何か言おうとすると、「いいからいいから、任せて」とやんわり遮られてしまいました。悪意はないのでしょう。でも、まるで何も知らない子どもを連れ歩いているかのような口ぶりに、少しずつ胸の奥にモヤモヤが広がっていきました。
ウェイターが私に向かって
店の重い扉を開けた瞬間、彼は「ほら、すごいでしょ? こういう雰囲気、初めてだよね」と得意げに微笑みました。けれど、私にとってみれば見慣れた照明と香りでした。すると顔なじみのウェイターがまっすぐ歩いてきて、深くお辞儀をしました。「いつもありがとうございます。本日もいつものお席をご用意いたしましょうか?」私に向かって言ったのです。彼の口元がわずかに開いたまま、止まったのがわかりました。
話していなかっただけのこと
高級レストランをめぐるのは、実は昔からの母との趣味でした。このお店は家族と何度も訪れたお気に入りの一軒で、夜景の見えるあの席は母との思い出の場所でもあります。彼に話さなかったのは、自慢したくなかったから。聞かれれば答えていたけれど、彼が聞いてくれることはありませんでした。「君にはまだ早い」と決めつけられるたびに飲み込んだ言葉が、あの瞬間、ウェイターの一言でそっと解かれたような気がしたのです。
そして...
彼は終始どこか落ち着かない様子でした。私は「実はこのお店、よく来るの」と伝えました。彼は少しの間黙っていましたが、やがて「全然知らなかった」と小さくつぶやきました。帰り道、「次はお前のおすすめの店に連れてってよ」とぽつりと言ってくれたとき、ようやく隣を歩いている感覚になれた気がしました。
(20代女性・会社員)
本記事は、読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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