女性にとっての“お守りのようなアイテム”に。フェリシモが向き合う「女性のリアルな悩み」と商品開発のこだわり
取材・文:ミクニシオリ
撮影:洞澤佐智子
編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部
生理の時の「なんとなく体調不良」や、PMSなどによる情緒の不安定など、私たちの毎日には明確に言語化できないカラダへのモヤモヤが付き物です。社会人にもなると、そんな日々にももう慣れっこ。たまに生理が重かったり、経血の量が多かったりすることがあっても「こんな日もあるよね」と、自分の気持ちに蓋をしてしまいがちです。
そんな社会をガラリと変えることは難しいかもしれない。だけど「かゆいところに手が届くようなアイテム」を一生懸命考えて、開発してくれている会社があります。通信販売などを手がける株式会社フェリシモでは、2020年からフェムテックプロジェクト「gokigen Lab.[ゴキゲンラボ]」がスタート。1965年から続くものづくりの知見を活かし、フェムテック分野でも他に類を見ないアイテムをどんどん開発しています。
今回お話を聞いたのは、同社での産休・育休を経てgokigen Lab.のメンバーとして活動している中村文さんです。gokigen Lab.の商品開発へのこだわりや目指す未来を聞いてみると、私たちが慣れてしまった「モヤモヤを我慢する日々」を変えるきっかけが見えてきました。
■体調変化や性への不安を「お互いに肯定できる社会」を目指して
ーー初めに、中村さんのこれまでのご経歴を教えてください。
2014年に新卒で株式会社フェリシモに入社しました。最初は『Couturier(クチュリエ)』という手作り雑貨ブランドの企画を担当し、刺繍キットやフラワーアレンジなどのハンドメイド雑貨を取り扱いました。2年目でファッションの生産管理部門に異動したのですが、販売の方にも興味を持ち、現在は販売企画やSNSでのマーケティングなども担当しております。
ーーフェリシモといえば、洋服から雑貨、アニメなどとのコラボ商品など、女性の気分が上がるアイテムを幅広く扱っているイメージがあります。中村さんも、もともとそういった商材に興味があったんですか?
ファッションにもともと興味があったのも大きいですが「働いていて楽しそう」と思えたことが、入社の決め手になりました。もう10年目ですが、実際にとても楽しく働いています。実は2021年には出産育児休暇を取得したのですが、早く働きたくて早めに戻ってきました。
ーーgokigen Lab.に参画されたのは、どんなきっかけがあったんですか?
フェリシモにはCSRやサステナビリティの専門部署がなく、社員の誰もが「ともにしあわせになるしあわせ」を実現するための主体的な担い手であると考えています。「22 for 22(twenty two for twenty two)」という全社横断のプロジェクトがあり、社会的なトピックスに興味関心のある社員がジョインしています。gokigen Lab.も「22 for 22」でのプロジェクトの一つなのですが、出産を経て自分のからだや健康への悩みが増えたことがジョインのきっかけでした。
ーー所属されているファッション関係の部署のお仕事と平行して、gokigen Lab.にも参画してらっしゃるんですね。それこそ、体調面に不安はなかったですか?
出産後は自分の身体に色々な変化があり、生理が急に重くなったりもしたので、たしかに体調のコントロールが難しくなったなとは感じています。ただ、その変化を一人で抱え込んでいることに不安を感じている自分もいました。gokigen Lab.では「当たり前に話そう、選ぼう、身体のこと」というテーマが掲げられているのですが、私自身も誰かにこの不安を話したかったんです。
gokigen Lab.のメンバーとお互いの心や身体の悩みについて話してみると、悩んでいるのは自分だけじゃないと実感できました。仕事量は増えても心の負担は軽くなりましたし、コンセプトの根底にある「お互いを肯定し合える社会」にも共感できたので、楽しく活動させていただいています。
■「悩みを持つ女性に寄り添えること」にこだわった商品開発
ーー現在のgokigen Lab.の活動についても、詳しく教えていただけますか?
当初は女性に関するオンライン研究所のような事業を想定していたそうですが、プロジェクトを導入する前にアンケートを取ってみると、予想以上に多くの女性が自身の心や身体の不調に悩んでいることが分かりました。
私たちはオリジナル企画の商品開発を続けてきた会社でもあります。「フェリシモにしかできないことはなんだろう」と考え、お客様の悩みに寄り添った商品を企画し、作ることができるという弊社の強みを活かして、女性のカラダをいたわる商品を開発することにしました。現在はECサイト上で開発した自社製品と、他社様からセレクトした製品を販売しています。
ーー商品開発でこだわっているポイントはありますか?
数年前と比べると、女性の健康に対する関心が高まってきていることを感じますし、フェムケアの市場にも便利で快適なアイテムは増えてきていますよね。そんな中で、フェリシモだから作れるアイテムはどんなものなのかについては、プロジェクトメンバーとも活発に議論しています。ただ、フェリシモは暮らしに寄り添うアイテムを販売してきた実績もあるので、女性の毎日の暮らしを助けるようなアイテム開発にこだわっています。
例えば、新商品の「ポケッタブル防水シート」は、メンバーやユーザーの実際の声から生まれた商品です。生理の日に商談があって、外出先で椅子を汚してしまって恥ずかしい思いをしたという意見から、持ち歩き型の吸水シートを開発しました。
ーー打ち合わせ中はなかなかお手洗いに行けないですし、座りっぱなしだからたまにやっちゃいますよね。特に対面だと座り直しなどもしづらいですし、私もオフィスの椅子を汚しちゃったことがあります……。
お洋服についてしまうのを予防する、吸水ショーツなどのインナータイプのアイテムもありますが、こちらは座布団のように敷いて使うことができ、吸水素材の裏に撥水素材のシートもついているので、生理中でもより安心して過ごすことができると思います。オフィスに限らず、新幹線や車などで長距離移動する時や、誰かの家にお邪魔する時にも使えますよ。
ーーハンカチサイズで持ち歩きやすそうですし、用途が幅広いのもいいですね!
私は生理中、寝る時にお尻部分に敷いて使ったりもしています。それ以外の時でもちょっとした座布団として使えるので、生理以外の時も持ち歩いておくと便利ですよ!
ーー生理の時って、固い椅子に座るだけでもちょっと不快に感じますもんね。座布団タイプの吸水シートは目からウロコでした。
実際のお悩みをベースに商品開発をするのは、フェムテック事業に限らず、フェリシモの商品開発全体で意識され続けていることでもあるんです。この他にも、ハンカチタイプのナプキンポーチや、性教育を自然に学べる「性とからだとこころを知るカード」など、お客様やメンバーが日々感じているモヤモヤから開放されることがゴールです。
gokigen Lab.は現在4期目で、まだまだ商品数は少ないのですが、今後もまだ世の中にないもの、毎日を少しだけ快適に過ごせるものを基軸に商品開発を進めていきたいと考えています。
■「ピンチの時に助けてくれる」お守りのようなアイテムを、みんなに
ーー中村さんが日ごろ目にする女性のお悩みは、どんなものが多いですか?
アンケートをベースにお客様とやり取りさせていただくことが多いですが、本当に人によって様々です。キーワードで言うと、生理関係や更年期、冷えなどに関連するものが多めですね。中には切実さを感じるメッセージもあります。
社会的な構造による問題もありますし、私たちが一つのアイテムを開発しても、その方の悩みがなくなるかといえば、そうとは限らないとも思うのですが……。女性たちの毎日の悩む時間を少しでも減らして、ご機嫌に過ごせるような商品を世の中に増やしていきたいですね。
ーーgokigen Lab.の今後の展望を教えてください。
今はECサイトでの販売がベースになっていますが、ゆくゆくはフェムケアアイテムのポップアップストアを展開したいという話も出ています。私はファッション事業の案件でポップアップストアに立ったことがあるのですが、オフラインで手に取っていただくことの大切さも実感しています。お客様と直接お話ししてお声をいただく機会を設けられたら、商品開発のスピードもさらにアップしていくと考えています。
ーー最後に、自身の健康やカラダについて悩む女性たちにメッセージをお願いいたします。
私自身、不調の原因が分からないという状況そのものに不安を感じることも多いです。ネットで調べたりしてもよく分からなくて、結局我慢して乗り切ってしまうこともありました。これまでは忙しさを理由に自分の体調を見ないふりしてしまうことも多かったのですが、gokigen Lab.に関わって、毎日の過ごし方を見直すことができました。
ひとつでもいいので、ピンチの時の自分を助けるアイテムを持っていると、精神的なお守りになってくれていると感じる時があります。不安を感じたことがある人に商品を届けることができるよう、gokigen Lab.の認知をさらに拡大させていきたいです!
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