

アカデミー賞でタイ映画史上初のショートリスト入り! 映画『おばあちゃんと僕の約束』主演俳優インタビュー【プッティポン・アッサラッタナクン/ビルキン】

「アジアのA24」と呼ばれる気鋭の映画スタジオ・GDHが放つ感動作『おばあちゃんと僕の約束』が6月13日に公開される。アジアで大ヒットを記録し、米アカデミー賞の国際長編映画部門ではタイ映画史上初のショートリスト(最終候補)入り。早くもハリウッドでのリメイク企画が動き出している。
主演は、俳優・歌手としてタイで圧倒的人気を誇るトップスター、“ビルキン”ことプッティポン・アッサラッタナクン。BLドラマ「I Told Sunset About You 〜僕の愛を君の心で訳して〜」でブレイクし、共演した盟友ピーピー(クリット・アンムアイデーチャコーン)とはBillkin & PP Kritとして日本デビューを果たしている。
そんな彼が本作で演じたのは、大学を中退してゲーム漬けの毎日を送る中華系タイ人の青年・エム役だ。お金持ちになりたい、楽をして暮らしたいと夢みていたある日、祖母のメンジュの末期がんを知り、遺産を譲り受けるために介護人として同居を決める……。
ドラマの完結以来、実に3年ぶりの俳優業に挑んだビルキン。エム役と同じ中華系タイ人としての経験や、これまでのキャリアで学んだこと、目指している俳優像を聞いた。
中華系タイ人という出自が今回の役を演じる上でとても役に立った
――久々の俳優業ですが、この映画を選んだのはなぜですか?
俳優としてのお仕事をしていない間も、「演技をしたい」という気持ちはいつもありました。いろんなオファーを受けていて、出たかった企画もありましたが、タイミングが合わなかったり、今の自分が演じるには早いと思える役だったりして、なかなか決まらなかったんです。この『おばあちゃんと僕の約束』では、時期やタイミング、そして人との関係もすごく良かった。映画のテーマやストーリーにもワクワクしましたし、映画初主演ということで、いろんなものがうまく重なりました。
――主人公のエムはご自身と同じ中華系タイ人の設定です。現在のタイにおいて、中華系タイ人のコミュニティにはどんな特徴があるのでしょうか?
中華系タイ人は、先祖をさかのぼると4~5世代前、第二次世界大戦のさなかに中国からタイに避難してきた人々です。だから僕自身も、父や祖母も全員タイで生まれました。中華系タイ人に特徴があるとしたら、それは家族を大切にする文化だと思います。お互いをとても大切にするし、財産を分け与えることもする。独自の宗教や信仰、神聖なものを崇拝する習慣もあります。ただし、それ以外は多くのタイ人と同じ生活をしています。
――ご自身の体験は、エム役を演じるうえで活かされましたか?
自分が中華系タイ人であることはとても役立ちました。エムと僕自身は家族構成こそ違いますが、エムの行動や家族関係、みんなの習慣はよく理解できたんです。日曜日には家族で食事をするとか、おばあちゃんやおじいちゃんの面倒を自宅で見るとか、結婚したら家を出て行くとか……。そういったことは、どれも今までの人生で見聞きしたことや自分の経験とほとんど同じ。先祖から伝わる価値観や考え方を映画に活かせたと思います。
――これまでの俳優業や歌手活動は今回の演技にも影響を与えましたか?
もちろん、これまでの演技経験は大きな参考になりました。お仕事のなかで演技のパターンを学び、素晴らしい共演者の皆さんの演じ方を見てきたことで、演技の引き出しが増えたと思います。どれだけ自由に演じていいのか、どれだけ演技のメソッドや考え方を応用できるのかという点ですね。アーティストとしての経験も、エムの「演じながら生きる」という一面の解釈に役立ったと思います。今回はリアルで自然な演技を求められたので、これまでの役柄とは異なる演技に挑戦しましたが、とてもいい経験になりました。
――おっしゃるように非常にリアルで、かつドラマティックなシーンでも抑制が効いているお芝居に感銘を受けました。撮影では、実際の感情がそのまま演技に乗っていたのでしょうか?
ありがとうございます。オーディションを最初に受けたときから、パット(・ブーンニティパット)監督には「とにかく自然に、リアルに」と言われていました。目の前のシチュエーションに忠実であってほしい、自分の気持ちや本能にウソをつかないようにと。だから、僕を含めたキャスト全員がなるべく自然に演じられるように準備を重ねてきました。観客の皆さんにその成果がうまく届いているのなら本当にうれしいです。
――リハーサルを繰り返すことで、新鮮な気持ちを見失ってしまうような苦労はありませんでしたか?
そういうことはありませんでした。リハーサルをするかどうかはシーンごとに異なり、パット監督が役者のフレッシュな気持ちを大切にしたいときは、あえてリハーサルをせずに撮影したり、即興で演じたりしていたんです。逆に、家族で食事をするシーンは丸一日かけてリハーサルをしました。長回しのシーンですし、セリフや動きが多いので調整すべきことが多かったんです。どちらのケースでも、役者とスタッフが全員きちんと準備していたからこそ撮影がうまくいったのだと思います。
――エム役を演じるうえで、特別に参考にした作品はありましたか?
特定の作品ではありませんが、いろんな映画からの影響がミックスされていると思います。僕とパット監督は日本映画からも大きなインスピレーションを受けていて、是枝裕和さんをはじめとするいろんな監督の作品を観たんですよ。世界中の映画から刺激を受けたので、「このシーンに是枝監督の影響があって……」とは言えませんが、自分の受けた影響を融合しながら、パット監督の求めるイメージに応用していったような感覚です。
――タイで3月に公開された新作映画『Red Envelope(原題)』は、台湾映画『僕と幽霊が家族になった件』のタイ版リメイクで、本作とはうってかわってライトなホラーコメディです。ビルキンさんもまったく別の顔を見せていますが、目指している俳優像や目標はありますか?
演技には「演じ方」はあっても「枠」はないと思います。以前の事務所で教わったことで、印象に残っているのは「いい役者はどんな演技でもできる」という言葉。監督の要求に応えるだけでなく、自分なりの解釈や実験を加え、必要ならば即興で演じることもでき、ジャンルを問わず多彩な演技ができるものだと。自分もそんな役者になりたいですし、これからも素晴らしい方々とお仕事がしたい。そして興味のおもむくまま、さまざまな作品に挑戦していきたいですね。
取材・文:稲垣貴俊
通訳:高杉美和
■『おばあちゃんと僕の約束』あらすじ
主人公の青年エムは、大学を中退し、今はゲームばかりの日々を送る身。そんなある日、祖母メンジュがステージ4のガンに侵されていることを知った。
従妹で看護師のムイは祖父の介護に勤しみ、遺言によって豪邸を相続したばかり。そこでエムはメンジュの遺産を狙い、自分が介護をしたいとメンジュの家に転がり込む。しかし彼が見たのは、自分に厳しい生活を送るメンジュの姿と、子どもたち3人の関係だった。
エムの母シウはメンジュを気にかけるがなかなか受け入れられない。長男キアンは優しい性格だが、妻の言いなりでメンジュを後回しにする。次男ソイは借金まみれで、今も母親を頼るばかりだ。メンジュとの暮らしを送るうち、エムの気持ちに変化が生じていく……。
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