小原裕貴＆後藤理沙のフレッシュな魅力が光る、手塚治虫氏原作の恋愛映画「ガラスの脳」を放送

2025.06.05 10:00

手塚治虫氏の名作漫画を映画化したラブストーリー「ガラスの脳」と、イルカと人々との交流を描いたネイチャーファンタジー「イルカに逢える日」が、CS放送・衛星劇場にて「令和によみがえる。懐かしのちょいレア劇場」と題して6月に放送される。本記事では、そんな希少な2作品のあらすじや見どころを紹介していく(以下、一部ネタバレを含みます)。

中田秀夫監督が新境地を開拓したラブストーリー「ガラスの脳」

手塚氏が1971年に発表した短編漫画が原作の「ガラスの脳」(2000年公開)。“生命の神秘”をテーマに凝縮された純愛を描いた本作は、ホラー映画「リング」シリーズで知られる中田秀夫監督によって映像化された。

もともと斬新な演出に定評がある中田監督は、本作を通してかねてより念願だった“一途なラブストーリー”に初挑戦。登場人物の繊細な心の動きを描き出すことで新境地を開いている。

そんな本作で、一人の少女を生涯愛する主人公・雄一を演じたのは、当時若者から人気を集めていた元ジャニーズJr.(現：ジュニア)の小原裕貴。そして雄一からの愛を一身に受ける少女・由美役を、ポカリスエットのCMなどで当時注目を集めた後藤理沙が務めた。

また由美の担当医・斐川役として、「天河伝説殺人事件」(1991年公開)など数々の映画や舞台に出演する榎木孝明が、雄一の理解ある母親役として「金子差入店」(2025年公開)などで知られる実力派女優の名取裕子が出演。豪華俳優陣が脇を固めている。

昏睡状態の少女に“目覚めのキス”をし続ける少年…「ガラスの脳」あらすじ

1954年に旅客機墜落事故が発生し、臨月の妊婦から奇跡的に誕生した赤ん坊の由美だけが唯一生き残る。しかし彼女は、生まれてからどれだけの月日が経っても目を覚まさなかった。

1961年。ある日、喘息で入院していた少年・雄一は眠り続ける彼女を病院の特別室で発見し、看護師から由美が「眠り姫」であることを聞かされる。その後雄一は、病院で読んだ絵本の“眠り姫は王子様のキスで目を覚ました”という内容を真に受け、内緒で由美の病室に忍び込み、「僕が王子様だよ」と彼女にキスをするのだった。

当然由美は目覚めなかったものの、それが雄一の日課になり、退院してもしばらくの間病院に通い詰めた。そして彼が高校生の時、由美がまだ眠り続けていることを知り、再びキスを贈るようになった雄一。そんな日々を過ごし続けたある日、由美は彼のキスでようやく眠りから覚める。

目覚めてから驚くべき速度で知能の発達を遂げる由美を近くで見ていた雄一は、どんどん彼女に惹かれていく。しかし目を覚まして3日後に、由美から“私が起きていられるのは5日間だけ”と告げられ、さらに“院長の斐川のことが好き”と言われたことで雄一はショックを受ける。

その後由美の昔の担当看護師から、彼女が眠っている間に斐川がいたずらをしていたことを聞かされ大激怒する雄一。彼は勢いのまま“明日結婚する”と由美を自宅に連れていき結婚式をおこなうが、彼女が再び眠りにつくまでのタイムリミットは刻一刻と近付いていた――。

ハマり役とも言える小原裕貴＆後藤理沙の等身大の演技に注目

本作では、雄一と由美を演じた小原、後藤のフレッシュな演技に注目したい。一人の少女を一途に愛し抜く雄一の心情を、小原は繊細な演技で表現。斐川のことで怒りを爆発させるシーンでは、“さわやかなイケメンアイドル”というイメージを覆すような鬼気迫る表情で、大人顔負けの演技を披露している。

一方、後藤も純粋無垢な由美のキャラクター像を見事に体現し、抜群の存在感を放っている。特に、目覚めたばかりで知能がまだ発達していない状態の中、雄一に外へ連れ出されるシーンでは、見るものすべてを新鮮に感じ、無邪気にはしゃぐ様子を魅力的に演じていた。

また、2人が遊園地デートではしゃぐシーンもまぶしいほど爽やかで甘酸っぱく、初々しさが溢れている。まさに“画になる”小原と後藤のやり取りは、作品を盛り上げる上で欠かせない要素と言えるだろう。

加えて、自分の医師としてのふがいなさを滲ませ、複雑な心境を表現した榎木(斐川役)や、息子の気持ちを優先し、由美のことまですべて受け入れる名取(律子役)の頼もしい名演技にも注目したい。

奇跡の純愛を描いた「ガラスの脳」は、6月6日(金)朝8時30分～、12日(木)夜6時～、22日(日)朝8時30分～、28日(土)夜12時～に衛星劇場にて放送予定。

イルカたちが結ぶ愛の物語「イルカに逢える日」

続いて紹介するのは、小笠原の大海原を舞台にイルカと人々のふれあいを描いたネイチャーファンタジー映画「イルカに逢える日」(1994年公開)。本作は“島発見400年・小笠原返還25周年”を記念して制作され、「相棒劇場版」シリーズなどを手掛ける和泉聖治が監督を務めた。

小笠原に向かう船で、桂(小松千春)は“小笠原で初めて言葉を交わす3人目の人と恋に落ち、その人と素敵なクリスマスを迎える”という不思議な予言をされる。翌日、桂はクリスマスに開催される「エコロジーコンサート」のメンバーに出迎えられ、無口で不愛想なブッチ(松岡俊介)に“島でもっとも美しい岬”を案内してもらう――。

イルカが1組のカップルの縁結びとして活躍する様子を感動的に描いた本作。作中で映し出される小笠原の美しい自然はもちろん、「エコロジーコンサート」でボブ・マーリーの息子ジュリアン・マーリーが披露する歌唱シーンも見どころとなっている。

なお衛星劇場では、「イルカに逢える日」を6月13日(金)朝8時30分～、26日(木)夜7時15分～に放送予定。

◆文＝林ゆう