吉沢亮が「役者人生の集大成」と語る演技を渡辺謙が絶賛「代表作になる」

2025.04.24 11:22

吉沢亮が4月23日、都内で開催された映画「国宝」(6月6日[金]公開)完成報告会に、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、見上愛、田中泯、渡辺謙、李相日監督と共に登壇した。

吉沢亮「今まで培った全てをぶつけた作品です」

吉沢は「この作品は、撮影期間も含めると1年半、歌舞伎の稽古を重ねて役作りに向き合ってきた。なかなか1年半という期間を1つの役に役作りとして向き合うことって、やろうと思ってもやれなかったりするし、どの作品も特別で全力でやっていますけど、特にこの作品はかけた時間とエネルギー量が桁違いで、それだけのものを背負って現場に臨んで、僕の今までの役者人生の集大成といいますか、今まで培った全てをぶつけた作品です」と述懐。

さらに、役について「歌舞伎役者さんを演じるということで、“役者”という部分ではつながる部分もありつつも、『全く違う世界だな』と改めて感じました。我々は人間の人生を演じていくわけですけど、歌舞伎役者さんって何百年も先人たちが積み上げてきた1つの芸を生きるという…そこへの覚悟だったり、小さい頃から舞台に立たれて何十年も積み重ねて、ようやく形にしていくものを、足元にも及ばないのは分かり切っていますけど…。技術的なことを言ったら足りない部分がたくさんあると思いますけど、だからこそ我々“役者”がやった意味があったのかなと。がむしゃらな精神というか意地みたいなものを、僕は(自身が演じた)喜久雄を通してすごく感じたし、そういったものを見ていただきたいです」と明かした。

渡辺謙「『すごいものを作ったな、こいつ』ってすごく尊敬しました」

また、完成した作品について「2回見ました。いろんな思いがあったので、1回見てなかなか思いを処理し切れずに2回見させていただいたんですけど、『とにかくすごいものを見た』という余韻があった。カメラワークだったり、皆さんのお芝居だったり、ライティングだったり、総合芸術としてのすばらしさがあるなと思った」と打ち明け、「歌舞伎がテーマなので見る前に『難しい』と思われる方もいらっしゃるかもしれないのですが、本当にそんなことはなく、純粋にエンターテインメントとして楽しめる最高な作品が生まれたなと思って、すごくホッとしました」と告白。

一方、渡辺は「吉田さんの本を読んだ時に『こんなの映像化できないし、誰もこんなの(喜久雄役)できないよ』って思ったんですよ。でも、いたんですね、ここに(笑)。吉沢はこれまでもいろいろ大河や映画に出てると思うんですけど、試写を見た後すぐに李監督に『これ、吉沢の代表作になるね』って言ったんです。おべんちゃらではなく、これに懸けている姿も知っているし、この作品を背負う覚悟とある種の執念みたいなものを持ち続けていたので、俳優仲間として『すごいものを作ったな、こいつ』ってすごく尊敬しました」と語った。

渡辺の言葉に吉沢は「ありがとうございます」と恐縮しながらも、「かなりの思いを懸けて臨んだ作品で、本当に『この作品が僕の代表作になってくれたらいいな』という思いでやらせていただいた作品なので、すごくうれしいです」とコメントした。

芸の道に人生を捧げた主人公の50年を描いた一代記

同作は、吉田修一自身が3年間歌舞伎の黒衣をまとい、楽屋に入った経験を血肉にして書き上げた同名小説を映画化したもので、任侠の一門に生まれながらも歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄(吉沢)の50年を描いた壮大な一代記。

この世ならざる美しい顔を持つ喜久雄は、抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺)に引き取られ、歌舞伎の世界に飛び込む。そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介(横浜)と出会う。生い立ちも才能も異なる2人はライバルとして互い高め合い、芸に青春を捧げていくが、多くの出会いと別れが、運命の歯車を大きく狂わせていく。

◆取材・文＝原田健