

「ボヘミアン・ラプソディ」でオスカー受賞ラミ・マレックによる、見る者の心をがっちりロックする“復讐譚×ロードムービー”に感嘆<アマチュア>

ラミ・マレックが主演を務めるスパイ・スリラー映画「アマチュア」が、4月11日に日米同時公開された。同作は、殺しは“アマチュア”のCIA分析官チャーリー・ヘラー(ラミ)が、最愛の妻の命を奪った国際テロ組織にたった一人で挑む、無謀で予測不能な復讐(ふくしゅう)劇。「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)でド派手にアカデミー賞主演男優賞を受賞したラミが、スパイ映画史上最も地味な主人公を演じる。今回は幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が試写会で同作を視聴し、独自の視点でのレビューを送る。(以下、ネタバレを含みます)
「妻を殺した奴を見つけて、自らの手で裁きを下す」
同作の主人公・チャーリーは、愛する妻サラ・ヘラー(レイチェル・ブロズナハン)と平穏な日々を過ごすCIA分析官。しかし、ロンドン出張中のサラがテロリストによって命を奪われたことで、全てが変わる。「妻を殺した奴を見つけて、自らの手で裁きを下す」とサラを殺したテロリストたちへの復讐を決意し、チャーリーはCIAの上官・ヘンダーソン大佐(ローレンス・フィッシュバーン)に特殊スパイとしてのトレーニングを志願。チャーリーはCIAにすら予測不能な“彼ならではの方法”で、ヨーロッパ各地に潜むテロリストたちを追い詰めていくが、その裏には驚くべき陰謀が隠されていた――。
「ボヘミアン・ラプソディ」のラミと「マトリックス」(1999年ほか)のモーフィアス役で評価を確立したフィッシュバーンの共演。しかも今回、ラミが扮(ふん)するのは“CIA最高のIQを持つ男”でありながら、人を殴ることはおろか、「殺し」に関しては超アマチュアな頭脳派分析官だ。
もちろんラミはこのレアなキャラクターを鮮やかにこなしていて、ストーリー展開がまた、明快かつスリルだらけで見る者の心をがっちりとロックする。発砲や爆発の音などサウンド面も迫力にあふれ、「手に汗握る」とか「時間が一瞬で過ぎる」といった伝統的フレーズは、こういう鮮烈な作品にこそふさわしいのではないかとの思いが強まるばかりだ。
チャーリーの復讐プロジェクトが開幕
ラミが演じるチャーリーがなぜ「殺し」の道に進んだのか。最愛の妻がロンドン出張中にテロリスト集団に殺害されてしまったからだ。車に乗って空港に向かう妻を笑顔で見送ったチャーリーが、ロンドンに到着したサラに電話したときに留守電になっていたのは向こうでバタバタしているからなのだろうと思っていたが、翌日、彼は耳をふさぎたくなるような、目を覆いたくなるような事実を、言葉と映像で知らされることになる。
テロリストたちをこのままのさばらせるわけにはいかない。やっても、やらなくても、妻が二度と戻らないという事実は変わらないとしても…。日本には1万人の構成員を抱える広域暴力団の総長でありながら争いを望まない“静かなるドン”なんてのもいるが(漫画だ)、ここに“静かなる分析官”チャーリーの復讐プロジェクトが始まった。
頭脳は極めて明晰(めいせき)なのだから、あと必要なのは「実践力」、つまりガチで無法者たちとやりあえるボディーとメンタルのパワーである。そこで彼はCIAの教官ヘンダーソン大佐に教えを乞う。あくまでも表面上は「特殊スパイとしてのトレーニング」として。このヘンダーソン大佐を骨太に演じるのがフィッシュバーンである。銃の持ち方もおぼつかないチャーリーを見て、ヘンダーソンは「この男に殺しは不可能だ」と直感したに違いないのだが、心優しいチャーリーの中に潜んでいた「はがねの一面」がどんどんトレーニングによって引き出されていく。
地頭が良いので、体験したことは(失敗も含めて)、全部教訓として吸収し、それらが彼独自の「殺しの公式」を成立させていく。表情がぐっと精悍になり、動きが一層シャープになっていく。
ラミの迫真の演技に感銘
サラを殺害したテロリスト集団の面々はヨーロッパ各地に散らばっているので、チャーリーも大陸を駆け巡ることになる。いくらチャーリーが過酷なトレーニングを済ませたとしても、しょせんは殺人未経験の一人の男。相手は複数人からなる、殺しのプロだ。
こういうのを「多勢に無勢」というのかもしれないが、チャーリーは極めて冷静にことを踏まえ、予想の斜め上を行くようなアイデアも盛り込んで、時に人々の助けを借りながら、自らに課したミッションを遂行する。画面には海辺、草原、街並み、星空なども適宜フィーチャーされており、その美しさと、緊迫した物語の進行が、何とも味のある対比を描く。
「復讐譚に、ロードムービー的な要素が加わる映画を見るのは初めてだな」と私は目の覚めるような気持ちになり、そこから物語がさらに豊かに膨らんでいくところにジェームズ・ホーズ監督の大いなる才気も感じた。
そしていくらでも強調したいのが、製作にも携わっているラミの迫真の演技だ。「ボヘミアン・ラプソディ」で、伝説的ロックシンガーであるフレディ・マーキュリーに1ミリのズレもなく同化していた彼が、いかに殺しのテクを覚え、復讐していくか、その復讐は完遂できるのか。そのあたりも含めて、誰もがスクリーンにくぎ付けになること疑いなしの一作が「アマチュア」であると言いたい。
◆文=原田和典
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