吉柳咲良にインタビューを行った

『白雪姫』吉柳咲良、「試行錯誤している時間が楽しい」ディズニープリンセス抜てきの裏にたゆまぬ努力『御上先生』でも好演

2025.03.22 08:10
吉柳咲良にインタビューを行った

映画「ウエスト・サイド・ストーリー」でゴールデングローブ賞映画部門(ミュージカル・コメディ部門)主演女優賞を受賞したレイチェル・ゼグラーが主人公の白雪姫を演じる実写映画「白雪姫」が、3月20日(木・祝)に全国公開。同作のプレミアム吹替版では、俳優の吉柳咲良(きりゅうさくら)が白雪姫の声を担当する。このほど吉柳にインタビューを行い、収録の感想や自身の声の特徴、“理想のプリンセス像”などについて語ってもらった。

同作は、「美女と野獣」「アラジン」のディズニーが世界で最も長く愛され続けているディズニープリンセスの物語として知られるアニメーション映画「白雪姫」(1937年、ディズニープラスで配信中)を新たなミュージカル版として実写映画化したもの。

「繊細な感情を表現することが難しいなと感じました」

――今回、声を担当した「白雪姫」には、どんな印象を抱いていましたか?

誰もが知っている、思慮深くて優しい心が純粋なプリンセスというイメージ。周りの人たちを思いやる気持ちを大切にしながら演じました。

――収録で難しいと感じた点はありましたか?

声優のお仕事はこれまで2回ほどやらせていただいたんですけど、吹替は今回が初めて。自分が思っているよりも声のボリュームを出さないといけなくて。でも声を張っていると、白雪姫の繊細な感情を表現することが難しいなと感じました。

――監督からはどんなディレクションを受けたんですか?

耳元で原音の声を聞きながらセリフを当てていくんですけど、そのスピードに乗ろうとするとどうしても私のほうが先に終わってしまって尺が合わなくなるんです。監督からも速くなり過ぎないようにとアドバイスを頂いて。元の声を聞いていると速くなってしまうから同じスピード感でしゃべることを意識したり、あえて聞かずに演じてみたり。試行錯誤しながら収録に臨みました。

――今回の「白雪姫」は“ミュージカル・ファンタジー”として作られている点が特徴的ですね。

見終わった後の満足感が大きかったです。白雪姫の心の葛藤や成長みたいなものも見えましたし、歌もすごくいいなと。出演が決まってから過去のアニメーション版を見返したのですが、同じシーンが実写として立体的に描かれていたところがたくさん出てきてテンションが上がりました。

実写版ならではのオリジナル楽曲もあるから、アニメーションとは違う面白さを感じることができると思います。

――今作のオーディションに臨む際に「ボイストレーニングをして音域を自分でいろいろ試しました」とコメントされていましたが、ご自身の声の魅力やストロングポイントはどんなところだと感じましたか?

私の声はハスキーだと言われることが多くて。今回の白雪姫は、普段よりも2トーンくらい声の高さを上げて演じました。そういう作業はこれまでに出演したミュージカルでもやってきたこと。その質感のようなものを意識しながら声を出していたので特に苦労したということはありません。

自分では音圧があるタイプの声質だと思っていて、歌声も割と強いほうだと言っていただくことが多いので、演じていてもその役の意志というものが乗りやすいのかなと。だからこそ、今回の白雪姫のような優しさを持っているキャラクターのときは圧を与え過ぎないように、時には引き算も必要だなと思いながらやっていました。

芸能界入りして9年「今ではミュージカルが一番好きに」

――ホリプロタレントスカウトキャラバンPURE GIRL 2016のグランプリを受賞後、芸能界入りして9年たちましたが、仕事に対する思いに変化はありますか?

2017年に上演されたミュージカル「ピーター・パン」が初舞台だったのですが、芸能界に入るまでミュージカルという存在を全く知らなくて。何が何だか分かっていなかったんです。何も知らないところからのスタートだったのが、今ではミュージカルが一番好きになっていて。歌える楽しさと音楽が後押ししてくれるような感覚がいいなと。これからも、ミュージカルにたくさん出たいと思っています。

それと、お芝居の見方が変わった点も大きい。悲しいやうれしいなど、それぞれの表現にもいろいろなアプローチがあることを映画やドラマを見ながら学んでいます。

――自分の中で変わらない部分はありますか?

映画やドラマを見るときに感情移入が激しいところは変わっていません。全部の感情が見た作品に影響されていくんです。結構次の日も引きずっていることが多いから、お休みの前の日とかちゃんと時間があるときじゃないと大変なことになっちゃう(笑)。でも、そういう観る側の目線も大切なのかなと思っています。

――演じる側としても役を引きずることが多いんですか?

結構引きずります。映像作品では明るいタイプというよりは、どちらかというと陰のあるような感じのキャラクターを演じることが多かったので、撮影中はプライベートのときでも気持ちを役に持っていかれたりしました。

そうやって役と一緒にちゃんと苦しめたときは全部が終わった後の解放感が全然違うんです。最終的には救われたり、一歩前に出られたりする役が多いんですけど、とことん苦しんだ分やりきったという達成感がありました。

1月クールの連続ドラマ「御上先生」でも好演

――そういう意味では、放送中のドラマ「御上先生」(TBS系)の椎葉春乃役は苦しみがいがあったような気がしますが?

たぶん、一番苦しんだと思います。私の中にある全部の感情を注いだような感覚。クランクアップのときにちゃんと全うできたという解放感を覚えました。

――“白雪姫”といえば最も長く愛されているディズニープリンセスですが、吉柳さんが思う理想のプリンセス像は?

プリンセスは愛される力がとても強い人というイメージがあります。いろいろな出会いの中で愛され上手だなと思う人は、話し方や佇まいが柔らかくて親しみやすさがあり、誰からも大切にされる力がある。それは自分で立ち上がる強さやりりしさ、他者を思いやる気遣いなどを兼ね備えているからこそなんだろうなと。

「プリンセスはティアラが落ちるから下を向かない」という話を聞いたことがあるのですが、やっぱり常に前を向いて生きていくことは大事。そういう諦めない強さと自立心、周りの人たちを思いやる優しさを持つことができたらいいなと思います。

カラオケでは「毎回自分が歌っているところを録音」

――どうしてもネガティブな気持ちになってしまったときのリフレッシュ方法はありますか?

私は誰かの言葉や価値観に感化されやすい性格なので、いろいろな人の話を聞いたり、エッセーを読んだりします。自分が抱いていた感情は間違いじゃなかったんだと思えるようにいろいろな価値観を取り入れるのが好き。何かを発散するという意味では、歌っていないと気が済まないのでカラオケにはよく行きます。

――どんなジャンルの曲を歌うんですか?

ディズニープリンセスの歌やJ-POP、洋楽などを歌います。私にとってカラオケは楽しく歌うというよりは、どれだけ自分がストーリー性を持って感情を使いながら歌えるのかを試しながら練習しているような感覚。毎回自分が歌っているところを録音しています。

――それを後で聴くんですか?

そうです。ここは歌い方が平坦だったなとか、音程は合っているけど音色がちょっと暗かったかなとか。そうやって試行錯誤しながらやっている時間が楽しいです。

◆取材・文=小池貴之

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