映画「ネムルバカ」でW主演を務める久保史緒里、平祐奈にインタビュー

久保史緒里&平祐奈、影響を与えあった初共演 “刺さるせりふ”にグループでのコンプレックスと体当たりだった役を語る

2025.03.11 08:30
映画「ネムルバカ」でW主演を務める久保史緒里、平祐奈にインタビュー

久保史緒里(乃木坂46)と平祐奈がW主演を務める映画「ネムルバカ」が、3月20日(木)から全国公開される。原作は、「それでも町は廻っている」「天国大魔境」などのヒット作で知られる漫画家・石黒正数による同名コミック。これといってやりたいことがなく、アルバイト生活中の後輩・入巣柚実と、バンド活動に打ち込み、金欠ながら夢を追い駆ける先輩・鯨井ルカの、大学の女子寮で同居する2人の大学生らしい青春譚が、入巣役・久保、ルカ役・平で紡がれる。互いに影響を与え合い、共感性が高かったという役への気持ちを語ってもらった。

“たいちゃん”“しーちゃん”互いがいたから突き詰められた役

――女子寮で同居している2人ということで、共演シーンも多いです。お互いの芝居の印象はどのようなものでしたか?

久保:たいちゃんはずっとルカ先輩でしたね。だから、私も入巣でいられたというぐらいで、それはカメラが回っていないときもずっとそう。本当に不思議だなと感じていて、独特の空気感がある2人なのに、一緒に生活していて全く居心地の悪さがない。むしろ居心地がいいくらい。

だけど、この2人が同級生だったとしたら仲良くなっていたかというと、多分そうはならないんですよ。交わらなさそうな2人なのに、一緒に生活しているのがすごく納得ができる。その関係性ってとても難しいバランスだけど絶対見せたかった部分で、これはたいちゃんがルカ先輩でいてくれたからこそ出せたと思います。

平:いやもう、しーちゃんこそだよ。原作を読んで、台本を読んで、自分なりに入巣のことをイメージしてはいたんですけど、いざ現場に入ったら本物の入巣がいて。しーちゃん自身のチャーミングなところを入巣に足しているし、そういうのもあってルカとして入巣を大切に思う気持ちが強くなったと思います。

しーちゃんが言ってくれたように、私もしーちゃんが入巣だったから信頼して言葉を交わせていたなって思いますね。

――「たいちゃん」「しーちゃん」と呼び合っているんですね。仲の良さが伝わって来ます。

久保:いつごろからでしたっけ? 結構早かったはず。

平:私は最初、何と呼ぼうかいろいろ考えていたの。「久保ちゃん」かな、でも「しーちゃん」って呼びたいなぁって。それで何日目かのときに、「しーちゃんって呼んでいいですか?」って聞いたんですよ。

久保:そうそう、そうでした。で、私の方からも聞いたら「たいちゃん」が多いっていうから、じゃあ、「たいちゃん」「しーちゃん」にしようって。

真逆な役になりきった久保史緒里、共感性で役を作った平祐奈

――お二人とも役への深度が深かったことがうかがえます。役作りではどのようなアプローチを考えましたか?

久保:入巣の生き方って、肯定派もいればそうでない人もいると思います。例えば、私は日々をなんとなく自由に生きるっていうのがすごくうらやましい。私は真逆な性格で、一日の中に意味を見出さないと生活するのが難しいタイプなんですよね。

けれど、今回の撮影期間中は本当にいい意味で何も考えずにいられました。入巣の生活に近づきたくて、本当にいい意味で適当に生きていました。家に帰ったらそのまま寝るとか、寝る直前までご飯を食べているとか、そうした目の前のことだけで生きるというのを意識して。だからこそ、目的を持って生きるルカ先輩をうらやましいと思う気持ちが生まれたというのがありますね。

――平さんは金髪にイメチェンしてのバンドのギター・ボーカル。それこそ普段の自分とは全く違う役だったと思います。

平:初挑戦のことがたくさんありました。まず撮影前からギター、バンドの練習。歌も何曲か歌うので、練習のときは「ちょっとスタジオ入りまーす」なんて言っちゃってみたり(笑)。普段、ルカっぽい性格でもないので、全てが新鮮でした。

でも、夢を追い駆けるルカの気持ちは理解できます。私もこの世界で夢を追い駆けているし、この世界にいる誰もがその気持ちを持っているんじゃないかと思います。そういう共感性を照らし合わせながら、ルカという役を作っていった感じです。

阪元裕吾監督の演出「入巣に対してすごく楽しんでいる感があった」

――阪元裕吾監督からは、役や撮影について何か話はありましたか?

久保:台本読みの段階でかなり細かい作り込みのお話があり、そこで監督のお考えはだいぶ理解できましたが、入巣って酔っ払っていたり、なんかもう奇想天外な行動が多いんですよ。そこで泣く?みたいなことも。

平:感情の起伏がね(笑)。

久保:そうなんですよ(笑)。その起伏のたびに、「ここで何かすごいこと言ってください」「ここで急に大きい声を出してほしいです」とか、細かい指示をたくさんいただいたなって思います。

平:監督は「やってほしいことを詰め込みました」みたいに、入巣に対してすごく楽しんでいる感があったよね。急に吐いたりさせるとか(笑)。

久保:やった、やった。監督、笑ってたもの(笑)。

――平さんの方にはいかがでしたか?

平:私の方は、バンドの歌い方についてですね。監督もピートモス(ルカが組んでいるバンド)みたいなパンク系のロックバンドがお好きなようで、参考の動画をたくさん頂きました。バンド練習のときはいつも一緒にスタジオ入りしてくれて、自らカメラを回して試行錯誤しているご様子でしたね。

影響を受け合いながらも干渉しない距離感の2人

――お互いから見るルカの魅力、入巣の魅力はどこにありますか?

久保:私は入巣のことがうらやましいと言いましたけど、入巣から見たルカ先輩もうらやましい存在。やりたいことがあっていいなって。だから、ルカ先輩がライブハウスで歌っているのを見るのって、実は入巣にとってものすごく苦しい時間なんですよね。たくさんの人の前で歌っている姿を見て、同じ部屋で一緒に生活しているルカ先輩をすごく遠くに感じてしまうような。入巣にとって、ルカ先輩はとても大きな影響をもたらした人だと思います。だからと言って、「私も夢を持とう」とならないのが入巣なんですけど(笑)。

お互いに影響を受け合いながらも干渉しない距離感がとても好きなところで、近くにも遠くにも感じるルカ先輩の幅というのは、見てくださればきっと伝わると思うし、その幅がルカ先輩の魅力だと思います。

平:入巣って、母性があると思うんですよ。なんかこう、ちょっとおばちゃん感(笑)。後輩だけどお母さんみたいなところがあって、寄り添っていてほしいと思う感じ。だからこそ心を開いて、一緒にいて居心地がいいんだろうなって思います。入巣自身は気付いていないけど、とってもすてきな女の子なんだよって。ルカはきっとそう思っています。

どの世代にも共感してもらえて刺さる言葉

――今回の役や物語を通して自分の心に響いた部分はありましたか?

久保:私は入巣と違って、「乃木坂46に入りたい」という明確な夢を持っていた人間です。でも、夢がかなってうまくいったかというと、決してそうではなかったんですよね。作中、「大きな壁をぴょんと越えてしまう人がいる、最初からそっち側に生まれた人がいる」というようなことを語るシーンがあって、そこはものすごく共感しました。私にも覚えがある感情で、原作を読んだときも震えました。

平:本当にその通りで、どの世代の人にも共感してもらえる、刺さるせりふがありますね。お話に出てくる人たちみんなの共通として、何かに悩んで抱えている。夢を持ったり持てなかったり。でも、本当は生きているだけで格好良くて、それってみんなそうだよなって思います。

体当たりだった壁、グループならでのコンプレックス

――久保さんが今少し触れましたが、物語の一点として「一掴みの人間になるために壁の向こうに行けるかどうか」というテーマがあります。自身に置き換えたときに、壁を越えられた、自分が変われたと思ったのはいつでしょうか?

平:それで言うと、頂くお仕事ごと毎回いろいろな種類の壁があるんですよね。その中でも今回のルカは一番大きな壁でしたが、2022年の初舞台「奇跡の人」も悩みに悩んだ壁でした。

――「奇跡の人」ではどんな役だったのでしょうか?

平:「奇跡の人」ではヘレン・ケラー役を頂きました。「見えない」「聴こえない」「しゃべれない」という三重苦の役のためせりふがなく、ずっと体当たりのお芝居だったんです。どうしたらいいのか、しかも初舞台だし、稽古場に通うというも初めての経験だし、全てが未知でしたね。でも、それがお芝居との向き合い方、役との向き合い方を改めて考えるきっかけになったので、最後は大きな山を乗り越えた感覚がありました。ルカ、ヘレン・ケラーだけでなく、自分にないものの役をやるときは、どうやって壁を越えようかといつも悩みます。

久保:本当に壁の向こうに「ぴょん!」といける人の話はすごく共感します。私はずっと壁のこっち側にいるという自覚があるけれど、やっぱりグループで活動していると、私が何度飛んでも越えられなかった壁を簡単に飛び越えていく子がいるんです。そういう子をそばでずっと見ていた環境なので、自分のコンプレックスにもなっています。正直、壁を越えられた瞬間ってまだ見つけられていないですね。

――身近のメンバーと比べてしまうというのは、グループ活動ならではのコンプレックスですね。なかなか脱却できるものではないですか?

久保:ですね。でも、そうは言っても「夜は短し歩けよ乙女」(2021年)は意識の変化を与えてくれた大事な舞台でした。初めてグループから出て一人で出演した舞台で、そのときに自分はここから個人として見ていただけるまでにならないといけないという自覚が芽生えたんです。そういった意味では大きなきっかけになった大切な作品です。

抜け出したい2人の“駄サイクル”とは?

――「ネムルバカ」には“駄サイクル”というルカが考えた造語が出てきます。お二人の自分の中で抜け出せない、抜け出したい“駄サイクル”があれば教えてください。

平:“駄サイクル”、あります(笑)。私、家に帰ってからお風呂に入ろうとお湯を溜めている間に、ついソファーで寝落ちしてしまうんです。最初からベッドに行けよって分かっているんですけど、ダメなんです。毎回、ソファーで目が覚めて後悔しています。

久保:かわいい“駄サイクル”じゃないですか(笑)。

平:しーちゃんはそういうのないの?

久保:私は好きな曲を見つけると一日に何十回とか聴いちゃう癖を何とかしたい。

平:あぁ、分かる。好きすぎてずっと聴いちゃうんだよね。

久保:せっかくの好きな曲なのに、そのせいで飽きが早く来ちゃうのがもったいなくて。何事も限度が大事ですけど、ルカ先輩の「ネムルバカ」はずっと飽きずに聴いています。

平:そういうせりふあったよね。居酒屋で「これ、ルカ先輩の曲だったらいいのにな」「でもさ、飽きるんじゃないの?」みたいな。

久保:飽きないんだな、これが。たいちゃんの声が好きすぎるから。撮影が終わって半年以上たちますけど、「ネムルバカ」は本当に飽きずに聴いています。これは続けたい“駄サイクル”です(笑)。

◆取材・文=鈴木康道

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