阿部寛、何歳になっても“恐ろしい”と思われる役に挑戦し続けたい「75歳で宙づりになるなんて面白い」<ショウタイムセブン>
日本の映像界にて唯一無二の存在感で圧倒する俳優・阿部寛。2月7日(金)公開の最新作映画 『ショウタイムセブン』では、「非常に難しいと思っていた」というニュース番組のキャスター役に初めて挑んだ。これまで、俳優として果敢なチャレンジを続けてきた阿部だけに「もうハー ドルが高すぎるものしか残っていない」と苦笑いを浮かべるが、その挑戦こそが阿部に とって「アドレナリンが出る瞬間」だと言う。そんな阿部が、アドレナリン大放出の人生“一 発逆転”をかけた挑戦について語った。
舞台のような緊張感で演じた初のキャスター役
韓国で大ヒットを記録したソリッドスリラー映画「テロ,ライブ」 (2013年)を「岸辺露伴は動かない」シリーズを手掛けた渡辺一貴監督が大胆にアレンジして贈るリアルタイム型サスペンス・エンタテインメント。阿部は、ある出来事によって人気キャスターの座を 追われ、巻き返しを図ろうと野心を燃やす折本眞之輔を演じ、生放送中に起こる爆弾犯と のやり取りをリアルに見せる。
――非常に緊張感あふれる作品ですが、台本を読んだとき、どんな印象を持ちましたか?
この作品では、物語がほぼリアルタイムで進むので、映画というより舞台のような緊張感を感じました。撮影も長回しが多く、一つ一つのシーンに集中し、観客がその場にいるような臨場感をどう伝えるかを意識して演じました。そういった意味で、非常に挑戦的で刺激的な経験でした。
――どのぐらいの長回しだったのでしょうか?
撮影では平均で10分ほど長回しすることがあり、動きの多い場面でもカメラマンの方々が 見事に対応していました。このような撮影スタイルに熟練したプロフェッショナルが集まっていたので、僕も動きや表現に集中することができました。一瞬一瞬を捉える緊張感 の中で、まさにチーム全員が一体となって作り上げたシーンだと感じています。
――キャスター役は初めてだとお聞きしました。
そうなんです。キャスターの方々はテレビでよく拝見していて身近な存在ですが、その心情まで想像したことは正直ありませんでした。番組でお会いすることもありますが、情報を的確に、冷静に伝え、突発的な出来事にも瞬時に対応する姿にはいつも感心していました。ただ、具体的にどうやってそれをこなしているのかまでは、なかなか想像がつきませんでした。
――非常に難しい役だと仰っていました。
この役は本当に難しかったです。キャスターとしての冷静さを保ちながら、その裏にある 過去の葛藤や後悔をどう内側で感じさせるかが大きな挑戦でした。物語の中で真実が明ら かになる中、表では冷静に見せつつ、内面の揺れ動く感情をどう表現するかにとても悩みました。
“このチャンスは絶対に逃さない”とがむしゃらに走り抜けた2、30代
――阿部さんが演じた折本は、地に落ちた評価を一発逆転したいという野心に満ちたキャラクター。腹黒さもあり自分なりの正義感も持つ人物でした。
確かに、事件を利用して復活してやろうという腹黒さと、正義感の強さという二面性がこ の役にはありますね。僕が演じていて特に楽しかったのは「どうにかして這い上がってや ろう」というギラギラした感じです。この人間臭さや葛藤が、演じていて一番面白い部分 でした。
――阿部さん自身も折本の行動には共感が持てましたか?
僕も20代の頃、さまざまな失敗を経験しました。モデルの世界から俳優の世界に入り、最初は順調だったものの、やがて仕事が激減し、現実の厳しさを痛感しました。その中で、自分を立て直そうと必死になり、野心に突き動かされていた時期がありました。振り返ると、人生の中で最もエネルギッシュで、がむしゃらに生きていた時期だったので、この主人公の気持ちには共感する部分が多くあります。
――その当時の印象に残る思い出はありますか?
20代前半、メンズノンノでモデルをしていた後、俳優に転身しましたが、一年ほどで仕事 が低迷し、20代から30代にかけて非常に厳しい時期を過ごしました。このままではまずいと自分を追い込む中で出会ったのが、つかこうへいさんの舞台でした。
当時出演されてい たのは以前共演した物静かな俳優さんでしたが、舞台上では全く別人のように強烈な犯罪者を演じていて、その姿に衝撃を受けました。それがきっかけで、僕も役者としてこう変わりたいと決意し、オーディションを経て「熱海殺人事件」に出演しました。この作品が、自分にとって人生を賭けた大きな勝負となりました。
――そこから風向きは変わりましたか?
舞台ですから、観に来てくださったお客さんの反応がライブでわかるんです。初めて自分の演技で目の前で笑ってる人を見て、そこで初めて俳優という仕事が面白いと感じまし た。そこで得た自分の手応えを映像でも表現したいと考えましたが、なかなか簡単ではなかったです。それから3年後、あるトレンディードラマに出演が決まり、このチャンスは絶対に逃さないとがむしゃらにやりました。
何歳になってもハードに攻める役に挑戦し続けたい
――先ほど「キャスター役はすごく難しい」と話していましたが、それが出演のモチベーションになっていたのでしょうか?
それはありますね。以前ならアナウンサーのような役は避けていたかもしれません。カメラの前に立つ仕事で、自分をあまり表現しない役というイメージがあって、演じるのが難しいと感じていました。でも、元々僕は新しい役柄に挑戦するのが好きなタイプですし、 30年も役者を続けていると、残るのは自分にとってさらにハードルの高い役ばかりなんで す。
――では今後も、我々がいままで見たことがないような阿部さんを拝見できそうですね。
今回は抑えた表現が求められるアナウンサー役でしたが、もし次に機会があるなら、思い切り感情を発散させるような、少し行き過ぎたキャラクターに挑戦してみたいですね。
――派手なアクションみたいな?
日本では、年齢に対する基準が厳しい印象がありますね。海外だとアンソニー・ホプキン スやジャック・ニコルソンのように、年齢を重ねても色気があって、ハードに攻めている俳優がたくさん活躍しています。
でも、日本ではおとなしく老けていく役柄が多く、例えばアクション的なものは周囲が気を遣ってオファーされなくなることもあるように思います。僕は70歳くらいになっても「こいつ恐ろしいな」と思われるような役に挑戦していきたいです。75歳で宙吊りになるなんて、すごく面白そうじゃないですか。
――本作は、テレビというメディアの在り方も問うていますが、阿部さんにとってテレビ
とは?
僕は俳優の立場で言うと、テレビドラマは一瞬にして1,000万人もの人々に届く非常に影響力の大きいメディアだと思います。その分、怖さもありますが、しっかりとした作品を作れば、それだけ多くの人の心を動かし、幸せを届けられる可能性があるとも思っています。
◆取材・文/磯部正和
撮影/梁瀬玉実
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