北野武監督、ネット配信映画に挑戦 “お茶の間で見る映画”を意識

2025.02.05 21:10

北野武、浅野忠信、大森南朋、白竜、國本鍾建が2月5日に都内で行われたAmazon Original映画「Broken Rage」配信記念記者会見に登壇した。

前半がシリアスなクライムアクション、後半がセルフパロディの実験作

Amazon Original映画「Broken Rage」は、北野武が監督・脚本・主演を務め、「暴力映画における笑い」をテーマに制作した作品で、日本の配信映画として初めてベネチア国際映画祭に正式出品され、高い評価を受けている。

約60分の映画を前半と後半のパートに分けて、前半は警察とヤクザの間で板挟みになった殺し屋・ねずみ(北野)が生き残りをかけて奮闘する骨太なクライムアクションを描き、後半は前半と同じ物語をセルフパロディという手法を使ってコメディタッチで描き出している実験作に仕上がっている。

配信の映画作品に挑戦した北野監督は、「ネット配信ということで“お茶の間で見る映画”とはどういうものかと悩みまして、かなり実験的な映画をやらせてもらおうと思いましたので、Amazonのほうにお伺いしたら『やっても構わない』ということだったのでありがたくやらせていただきました」と、最初は戸惑ったと明かし、「あまり意識してなくても、劇場とテレビとではこれだけ違うものになるんだということを、完成した後に分かりました」と語った。

大森南朋「監督の前で“笑い”的なことをやることのプレッシャーたるや」

ねずみを麻薬捜査の覆面捜査官として捜査協力させようとする井上刑事を演じる浅野は、「映画『首』でも、監督と大森さんといろいろ面白いことをやらせていただいたので、さらにその先に行けるんじゃないかと感じました。台本を読んだ時、『おっと！これは予想以上にすごいものになってるな』って思いましたが、現場でさらなるハプニングが生まれるんじゃないかという期待と不安が入り混じって緊張しましたし、現場でも新しいことをやったりして鍛えられました」と振り返った。

福田刑事役の大森は「監督の前で“笑い”的なことをやることのプレッシャーたるや。僕と浅野くんは半端ない緊張感の中にいて、『特にウケなかったけど、OKか…』というのを繰り返していました(笑)」と撮影時のエピソードを語りつつ、「でも現場に行くのが本当に楽しくて、幸せな時間を過ごさせていただきました」と笑顔を見せた。

北野監督作品への出演が6作目となる白竜は、麻薬売買を取り仕切るヤクザの若頭・富田役で出演。「いつもそうですけど、今回も『お任せします』と、まな板の上の鯉じゃないですけど『監督にいくらでも料理してください』という感じでやらせていただきました」と演出などについても監督に一任したと語り、「和気あいあいとして楽しい現場でした」と現場の雰囲気の良さもしっかりと伝えた。

クスリの売人役の國本も「監督からのオファーはいつもうれしい気持ちでいっぱいになります。ただただ感謝に尽きます」と満面の笑顔を浮かべて語った。

浅野忠信「後半が始まってみんなが笑った時、劇場の空気が変わったんです」

「第81回ベネチア国際映画祭」での上映がワールドプレミアとなった本作。現地での観客の反応を聞かれ、北野監督は「恥ずかしい話なんですけど、現地で乗ったボートに頭をぶつけてしまいまして、帰ってくるまでの記憶がないんですよ。劇場で上映した時も大森くんとか浅野くんとかと一緒に立ってたんですけど、その記憶がなくて」と告白。

代わりに浅野が「観客の皆さん、前半のシリアスパートでは今までの北野監督のテンションを感じていたというか、『ヤクザ映画が始まるのかな』って雰囲気で見てたと思うんです。ただ、後半が始まってみんなが笑った時、劇場の空気が変わったんです。みんなが家族で一つの面白い映画を見ているというアットホームな感じになりました。僕も笑って見ていましたし、アットホームな一員になっていました」と報告した。

続けて大森が「上映した時は、まさしくそんな感じでした」と語り、「劇場に入っていく時もすごく熱狂されていまして、裏口に車を用意していただいたんですけど、武さんのファンの方がたくさん待っていて、写真を持っていて、『これにサインしてくれ！』みたいな感じだったんです。、武さんの写真だったり、浅野くんのだったり、僕のもたまにあるんですけど、僕に『サインしてくれ』って言って渡された写真の多くは浅野くんの写真でした。一応、『大森』って書いておきました」と自虐的なエピソードも明かした。

最後は北野監督が「『Broken Rage』は実験的な映画ですが、グレードとしてはそんなに酷くはないんじゃないかと。“スゴイ”とは言いませんが、お金を払って見て損したとは思わないだろうと思います。ただ、おかげさまで、ここにいる役者さんたちが本当にうまくて一生懸命やってくれたので、映画としての形は出来ました。この映画の目指すところ、ベクトルは次に違う映画として花が咲くことを期待しています。できれば、本当に見てください」というメッセージを伝えて、会見を締めくくった。

Amazon Original映画「Broken Rage」は、2月14日(金)よりPrime Videoにて世界独占配信

◆取材・文＝田中隆信