劇場アニメ『ベルサイユのばら』マリー・アントワネット役の平野綾に本作への想いをきいた。

平野綾「オスカルになりたい!」と強く憧れた過去も…劇場アニメ「ベルサイユのばら」にかける思いを語る

2025.01.28 10:00
劇場アニメ「ベルサイユのばら」マリー・アントワネット役の平野綾に本作への想いをきいた。

18世紀後半のフランスで、時代に翻弄(ほんろう)されながらもそれぞれの運命を美しく生きる4人の男女を描いた「ベルサイユのばら」(以下、「ベルばら」)。原作は1972年から「週刊マーガレット」(現「マーガレット」/集英社刊)にて連載され、日本中の少女たちの心を震わせた少女漫画の金字塔。宝塚歌劇団による舞台化やTVアニメ化など、一大ムーブメントを巻き起こした「ベルばら」が、完全新作による劇場アニメとして1月31日(金)に公開。隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネットを演じ、自らも「ベルばら」の大ファンだという平野綾に、本作への思いを語ってもらった。

オスカル一択だった子供時代、大人になった今は断然アントワネット派に

――平野さんは「ベルばら」の大ファンなんですよね。

平野:そうなんです。母から少女漫画の英才教育を受けていまして(笑)、「ベルばら」もその流れで読みました。当時の私は病気がちで、さらには自分のことを男の子だと思っていたので、強くて格好良い男装の麗人であるオスカル(・フランソワ・ド・ジャルジェ)にとても憧れました。その後、TVアニメがあることを知り、頑張って再放送がやっていないか探したり、レンタルショップへ行ったりしてTVアニメも見ることができました。宝塚歌劇団の舞台にも憧れて、「オスカルになりたい!」と思って宝塚音楽学校に入りたいと思ったんですが、身長が低くて男役はできないと知り、泣く泣く断念したほどです。

――今回、アントワネットを演じることになった時はどんな気持ちでしたか?

平野:アントワネットの言葉で「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」っていう有名なフレーズがあるじゃないですか。子供のころはそのイメージが強かったんですけど、大人になってから、この言葉は実際にアントワネットが言ったわけではないということを知って。それとともにアントワネットの魅力に気付いてきて、今は断然アントワネット派なんですよ。なので、すごくうれしかったです。

――アントワネットのどんなところに魅力を感じますか?

平野:プライベートでベルサイユ宮殿に行ったことがあるんですけど、アントワネットが宮殿内に小さな村を作って、農作業などを体験していたことが印象的だったんです。それが良いか悪いかはともかく、彼女なりに庶民を理解しようという感覚はあったんだなと感じました。「ベルばら」でのアントワネットも、最後まで自分の信じた道を進もうとする彼女の心情が分かりやすく描かれていて、王族としても、一人の女性としても素晴らしい人だなと感じました。

演じるうえで意識した“時間経過”と“少女性”のバランス

――アントワネットを演じるうえではどんなことを意識されましたか?

平野:壮大なストーリーを一本の映画としてまとめているので、シーンとシーンの間に数年間が経過していることもあるんです。私はオスカル役の沢城みゆきさんと一緒に収録させていただいたんですけど、このシーンのアントワネットは何歳ころで、この時オスカルとはどういう関係性かということを丁寧に確認しながら演じていきました。年齢や経験を経て、最初と最後のアントワネットでは声質もお芝居もかなり違うものになっていると思います。とはいえ、アントワネットという同じ人間ではあるので、言葉に貫禄が増したとしても、ふとした瞬間のリアクションやしぐさに少女性が感じられたりするようなバランスはすごく意識しました。

――オスカルとの掛け合いで、特に印象的なシーンはどこですか?

平野:オスカルが(ハンス・アクセル・フォン・)フェルゼンとの関係についてアントワネットに忠告するシーンですね。このときアントワネットはオスカルに向かって「同じ女性であるあなたにも、分かってはもらえないのですね」と言うんですけど、この時のオスカルは、おそらくこれまでの人生で一番衝撃を受けたんです。このシーンがあったからこそ、その後二人がそれぞれの道を進んでいくシーンはなんとも切なくて。アントワネットは王妃として、オスカルは国民のために道を違えるんですが、この二つのシーンは結構テイクを重ねましたし、強く印象に残っています。

――本作では数多くの挿入歌が流れるのも特徴的です。まるで音楽劇を鑑賞している気分にもなりますね。

平野:そうですね。劇中で大きな展開やトピックスがあった際にスポット的に流れるので、その瞬間の人物の心情を表した歌として楽しんでいただけると思いますし、尺の関係上でワンコーラス程度しか流れない曲もたくさんあるので、ぜひ今後発売されるCDでフルバージョンの楽曲を聴いてほしいなと思います。

――平野さんもアントワネットとして、ソロやデュエット、カルテットと多くの楽曲に参加されています。

平野:収録には吉村愛監督も立ち会ってくださり、レコーディングがアフレコよりかなり前に始まっていたこともあり、楽曲が流れる箇所の絵コンテまで持ってきてくださったので、とても助かりました。どんな絵が流れるのかが分かると、歌唱シーンなのか、それともポップスや歌謡曲っぽく歌えばいいのか判断がしやすくて、音楽チームとのすり合わせもスムーズに進みました。

――フェルゼン役の加藤和樹さんとのデュエットもすてきでした。

平野:ありがとうございます。加藤さんとは以前にもミュージカル「レディ・ベス」でガッツリと共演させていただいたので、きっとこんな感じで来るだろうなっていうのが想像しやすくて、とてもやりやすかったです。

ストレス解消は夜のドライブ! 砂浜で歌を歌うことも…

――アントワネットと言えば、フェルゼンとルイ16世という二人の男性の存在が欠かせませんよね。

平野:この関係性があってこそのアントワネットの人生ですからね。一般的にフィーチャーされるのはフェルゼンだと思うんですけど、個人的にはルイ16世の存在がすごく大事だと思っているんです。とくにフェルゼンとの関係が明るみになった際、ルイ16世は泣きながら「私がもう少しスマートで美しければ、言えただろうに。“愛している”という言葉を」って言うんですけど、なんて心が広い人なんだと。一方のフェルゼンも、アントワネットを愛するために自分は一生結婚をしないって決心するわけですし、3人それぞれに満たされない部分があって、それでもお互いの幸せや国の幸せを願って受け入れる姿がすてきだなと思います。

――宮殿での暮らしに疲れたアントワネットが、お忍びで舞踏会に繰り出すシーンも印象的です。平野さんも日々忙しいと思いますが、息抜き方法などはありますか?

平野:私は自分で車を運転して仕事に行くので、車での移動時間が唯一の息抜き時間です。それでもあまりに忙しいときは、仕事終わりに少しドライブをしたりして気晴らししています。よく行く海岸があって、深夜、誰もいない砂浜で歌ったりしてます(笑)。たまに砂浜を巡回している警備員のおじさんから「もう遅いから早く帰りなさい」って言われて、「すみません!」ってダッシュで帰ったり(笑)。それもできないほど忙しい時は、家にいるネコに顔を埋めてモフモフに癒されます。すごく嫌がられますけど(笑)。

本作の魅力に「想像以上にキラキラ」「全世代に受け入れられる作品になっている」

――作画面については、原作の絵柄や雰囲気をリスペクトしつつも、しっかりと現代のアニメに昇華されているなと感じます。平野さんはどんな感想をお持ちになりましたか?

平野:原作がすごくキラキラしているので、劇場アニメではどう描くのかなと思っていたら、想像以上にキラキラが増していて、今の作画技術は素晴らしいなと驚きました。現代の作画っぽさを生かしつつ、風とともにバラの花が宙に舞うような「これぞ『ベルばら』!」というシーンはしっかりと再現されていたりと、見事に融合されていますよね。原作ファンはもちろんですが、初めて「ベルばら」に触れる若い人にとっても面白いんじゃないかと思います。

――今回アントワネットを演じてみて、改めて彼女に共感したところはありますか?

平野:アントワネットは王妃ですから私とは比べ物にはならないと思いますけど、例えば自分の意図とは異なる発言が拡散していったりとか、それによって全く違うイメージができてしまったりとか、そういうところはかなり共感しましたね。これは私だけではなく、SNS社会を生きる私たちみんなに通じることだと思うので、アントワネットがすごく身近に感じられるのではないかと思います。

――では最後に、原作の連載開始から50年以上の時を経て劇場アニメになった本作について、見どころをお聞かせください。

平野:原作ファンの方にとっては、少女時代に漫画やTVアニメに触れたときの感覚が強く残っていると思います。その時に感じたトキメキを再び感じる人もいるでしょうし、年齢を重ねたことでまた違った感じ方をする人もいると思うんです。どちらが良い悪いではなく、ぜひ自分がどう感じるかを楽しんでいただきたなと思います。一方で、「ベルばら」を知らない若い人にとっても、オスカルやアントワネットたちの生き方はもちろん、ファッションや歌なども含めて興味を持っていただけるところはたくさんあると思います。そういう意味では全世代に受け入れられる作品になっていると思いますので、ぜひ親子や三世代でも見ていただきたいなと思います。

◆取材・文/岡本大介

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