長尾謙杜

長尾謙杜、ワイヤーアクションでは「アイドルが出ちゃいました(笑)」 大泉洋との関係性も語る<室町無頼>

2025.01.17 08:30
長尾謙杜

大泉洋が主演を務める映画「室町無頼」が1月17日に公開(IMAXは1月10日より公開中)。本作は、新時代のアクション・エンターテインメント時代劇。巨大な勢力に戦いを挑み、一揆を企てる男たちの生き様をドラマチックに描く本作で、超人的な棒術を身に付けて戦う才蔵を演じたのが、なにわ男子・長尾謙杜。「いつかヒーローのような役を演じてみたい」と願っていた彼が挑戦したアクションの裏側についてインタビューを実施した。

才蔵の役作りは3カ月の稽古と身体作りからスタート

――室町時代、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史書に名前を刻んだ蓮田兵衛(大泉)が主人公の時代劇へ出演する心境からお願いします。

NHK大河ドラマ「どうする家康」(2023年)に1話だけ出演させていただきましたが、今回の作品では、時代劇にガッツリ参加させていただきました。時代劇というと、戦国時代がパッと思い浮かぶのですが、日本映画の中でこれまでほとんど描かれてこなかった室町時代の物語を描いているので、他の作品とは違って面白いものになっています。

――長尾さん演じる才蔵は、極貧生活をしていたところを兵衛に拾われ、兵法者としての道を歩み始めます。最初の登場シーンは、泥だらけのように薄汚れていて、誰なのか分からなかったです(笑)。

あはは。最初は真っ黒で、ものすごく汚れていますからね。室町時代に生きる人の雰囲気が出ているメイクの出来栄えでした。衣装は、戦国時代なら甲冑とか装えるものがあるのですが、室町時代は薄手の布の衣装で、秋から冬にかけての撮影だったので寒かったです。

――才蔵は、兵衛と空前の一揆を巻き起こし、幕府軍と戦います。その戦闘シーンがみどころですが、本格的なアクションに初めて挑んでみて、いかがでしたか?

殴られるシーンは経験がありましたが、自分から攻撃に出るアクションは初めてでした。いじめられて内側にこもるような役が多かったので、今回はヒーローみたいに最強になる役を演じられて、うれしかったです。

戦いのシーンでは、刀ではなく、六尺棒を武器に棒術で戦うんです。六尺棒をどう扱ったらいいか何も分からないところからスタートして、約3カ月間稽古をしました。素振りから始めて、本当にゼロから頑張りました。現場では、棒とお友達になるくらいずっと触っていましたから(笑)。

――本当に長尾さんの身体能力の高さに驚かされました。クランクインする前に身体作りをされたそうですね。

ジムに通って、身体作りをしました。人生でちゃんとジムに行ったのは、初めてかも。僕はガリガリだったので、ちょっとは筋肉をつけようってことになって。ご飯をできるだけ食べつつ鍛えたので、少しは体重が重くなったかな。胸筋をつけようと頑張って筋トレしたら、始める前は50キロ前半だったのが、今60キロあって。メンバーの誰よりも重いと思います。

ワイヤーアクションでは「ちょっとアイドルが出ちゃいました」

――才蔵が血のにじむような地獄の特訓を受けるシーンの修行の方法には度肝を抜かれっぱなしでした。撮影も大変だったのでは…?

いや~、大変でした! 真冬の琵琶湖で撮影したので、寒かったですし。落ちたらメイクが取れるから本番まで落ちないようにドキドキしながらやっていました。水の上でのアクションが多いんです。才蔵は最初“カエル”と呼ばれるだけにやたら水の中に落ちるシーンがありました。ちなみにこの作品では、僕、約3分の1はふんどし姿なんで。そこにも注目していただけたら(笑)。

――終盤は、ダイナミックなワイヤーアクションにも挑まれて、お見事でしたね。

アクション映画のメイキングを観ると、ワイヤーアクションに挑まれている俳優の方々がたくさんいて、憧れていました。僕の先輩方も事務所の伝統舞台のフライングでワイヤーを使用するので、アイドルとしてもワイヤーに憧れがあったんです。先輩たちの飛ぶ姿を見ていたので、最初それに習ってやろうとして、ちょっとアイドルが出ちゃいましたね(笑)。

――アクションももちろんすごかったですが、才蔵はどんどん成長して、すさまじい武術の才能を開花させていく姿がすごかったです。

最初は貧しい生活で食べるのにも必死な、どうしようもない少年だったのですが、大泉さん演じる兵衛に出会って、修行をして心も身体も鍛えられていきます。兵衛との出会いは、この人なら信じて、ついていけると確信できる大きなもの。ようやく自分の居場所をみつけるんです。兵衛から修行のきっかけを与えられ、何か任されるうれしさがあったと思います。

才蔵の成長と共に「僕自身もこの作品で自信がついた」

――憧れだったヒーローのような役に挑まれましたが、キャリアを重ねる中で、こういう役も求められるようになった自分を大人になったなと思いましたか。

多分、昔の僕だと才蔵役のオファーは来てなかっただろうし、演じきれてもなかったと思うので、才蔵を演じきれたということは、大人になったのかなと思います。才蔵が最初と最後では大きく成長しているように僕自身もこの作品で自信がついたような気がします。終盤の長いアクションシーンは、1日で撮り終えたんですよ。何カ月も特訓してきた成果を出そうと必死で挑んだあの1日の達成感は、すごかったです。

――才蔵を演じるのは順撮りでない時もあったそうですが、今はどの時期の才蔵を演じているのか、意識して演じないと混乱しそうですね。

そうですね、意識しました。日によってメイクから変わってくるので、それが自分のスイッチにもなっていましたし。見た目が全然違うので、どの時期か把握しやすかったです。

最初の頃の才蔵は、大泉さんの後ろを追いかける子イヌのような感じを意識していました。どんどん成長していく過程では、感情をむき出しにして、後半は言葉のなまりもとれて、少し落ち着きのあるような才蔵をイメージして演じました。

――才蔵の運命を変えてくれる兵衛役の大泉洋さんの現場での印象はいかがでしたか?

大泉さんとは番組で共演することもあったのですが、テレビで見たままの明るい方。僕の顔を見て、何回か「やっぱり若いねぇ」って(笑)。よくご飯にも連れて行っていただいて、兄貴というか、ついていきたくなるお父さんみたいな方です。

包容力があって優しいですけど、締めるときはちゃんとビシッと締めてくださり、師匠と弟子みたいな関係で撮影できたことは、自分にとっていい経験になりました。

――才蔵に棒術を教える唐崎の老人を演じた柄本明さんとのシーンも多かったと思いますが、柄本さんとのシーンはいかがでしたか。

僕、柄本さんを初めて見たのが、バカ殿のコントだったんです(笑)。なので、面白いイメージが強かったんですけど、この業界に入ってから、ものすごい俳優の方だと知ってビックリしました。

大ベテランの柄本さんは、撮影の合間に言う何気ない一言が面白い一面もある方で。柄本さんと1対1で対峙する修行のシーンでは、「もっとガツンとぶつかって来い!」って言ってくださり、そのおかげでいいシーンになりました。

長尾謙杜がヒーロー的存在を明かす「走る姿がカッコいい」

――役としては棒術の武器を身につけた役を演じた長尾さん自身がこの作品で手に入れた今後使える武器はありますか。

僕は、運動神経がいい方ではないんです。球技なんて絶望的なぐらい下手でして…。そんな自分の運動神経で大丈夫なのかなって最初は不安だったのですが、棒術を練習していくにつれて、「あれ? 意外とかっこいいかも? いけてるかも?」みたいな気持ちになれました。

練習をすれば、できるようになっていくもんですよね。小さい頃は、いろんな習い事をして、できるようになっていくうれしさがありましたけど、大人になるにつれて、挑戦することは少なくなるもの。この作品で、アクションを通して挑戦する心や、やり切った達成感や喜びを改めて感じられて良かったです。この経験はこれからやっていく作品にも活かしたいですね。

――ヒーローみたいな役に挑んだ長尾さんが思うヒーローは誰でしょうか?

僕のヒーローは、ルカ・モドリッチです! レアル・マドリードのサッカー選手です。僕の頑張れるモチベーションで、大好きなんです。年齢も40近いのにチームの誰よりも走る姿がカッコいい。

クロアチアのという小さな国で生まれて、ワールドカップの決勝まで、みんなを引っ張る力を持っていてすごい。普段から「モドリッチが頑張っているから俺も頑張らな」って思っています。

――この作品でも憧れるような強くて骨太な男たちのアウトローな生き様が描かれていますね。

兵衛が一揆を起こしたように、時代や現状を大きく改革していくっていうのは、今の時代ではあんまりないことだと思います。みんな右向け右なことが多いですから。大きなものに対しても恐れずに突き進んでいく生き方はカッコいいなと思うので、ぜひスクリーンでその勇姿を見届けてください!

取材・文/福田恵子

撮影/梁瀬玉実

ヘアメイク/古牧幸佳(JOUER)

スタイリスト/菅沼愛(TRON)

衣装協力/Isa Boulder(KIOSQUE CC)、Casper John(Sian PR)、LITTLEBIG(LITTLEBIG)、SHINGO KUZUNO(Sian PR)、ADIEU(BOW INC)

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