大泉洋&長尾謙杜らのアクション撮影現場に密着、須藤P「(長尾は)あらゆる面で我々のイメージする才蔵でした」<室町無頼>
大泉洋が主演を務める映画「室町無頼」が1月17日(金)に公開される(IMAXは1月10日先行公開)。本記事では、2023年に京都で行われた撮影の現場の様子と、本作で監督を務めた入江悠とプロデューサーの須藤泰司のインタビューをたっぷりとお届けする。
室町時代の知られざる闘いをドラマチックに描いた「室町無頼」
同作は、直木賞作家・垣根涼介の同名小説を入江監督の脚本・演出で映像化。時は室町、“応仁の乱”前夜の京。大飢饉と疫病の連鎖、路上に重なる無数の死骸。そんな混沌の世の中に風の如く現れ、巨大な権力に戦いを挑んだ蓮田兵衛。日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史にただ1度だけその名を留める男。彼の元に結集した「アウトロー=無頼」たちの知られざる闘いをドラマチックに描く。
己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぎ、密かに倒幕と世直しの野望を抱く無頼漢で剣の達人、「歴史書にただ一度名を残す男」主人公・蓮田兵衛を演じるのは大泉。剣の達人役として本格的な殺陣・アクションに初挑戦するなど、撮影当時50歳を迎えた大泉が兵衛というキャラクターにエネルギッシュに命を吹き込んでいる。
兵衛に拾われ、身も心も成長する才蔵役に抜擢されたのは、なにわ男子・長尾謙杜。その才蔵に棒術を教え込む老師に柄本明、民を虐げ、贅沢にふける有力大名・名和好臣には北村一輝、高級遊女にして、男たちの間を漂う絶世の美女・芳王子役を松本若菜がそれぞれ演じている。
そして300人もの荒くれ者を抱え、幕府から今日の治安維持と取り締まりを任される悪党一味の首領・骨皮道賢に扮するのは堤真一。兵衛とは悪友であり、宿敵ともなっていく複雑な関係性である。
妥協一切なし、長尾謙杜のワンカットアクションシーン
現場取材が行われたのは2023年11月。京都撮影所には巨大なセットが組まれ、その中心には長尾の姿が。この日は長尾演じる才蔵の見せ場の1つである、ワンカットのアクションシーンが撮影されていた。入江監督もかなり気合をいれている様子だったシーン。撮影の前のリハーサルでは、カメラの動線も入念に確認していた。
また、クレーン3台を使いワイヤーに吊るされながらアクションシーンに挑む長尾は、少しばかり緊張した面持ちで、足場や棒を武器にするという珍しいアクションの手順を1つ1つ丁寧に確認。本番開始の声がかかると、長尾は「お願いします!」と準備。ワンカットということもあり、カメラマン、出演者たちの動きに少しでもズレが生じてはならないという緊張感の中、長尾は次々と現れる敵を棒で倒し、屋根の上を駆け抜けていく。傾斜が急である屋根を、長い棒を持ち走るのは容易ではない様子。何度も足を滑らせ、バランスを崩していた。
カットがかかるたびにモニターをのぞく長尾は、そのあと上手くできていなかった部分を練習。満足な動きが取れなかった際には、自ら「もう1度お願いします!」と申し出ていた。また、「ここでワイヤーを早めに上げてほしい、ワイヤーを緩めてほしい」といった微調整なども行い、どのカットも妥協することなく、肩で息をするほど全力でアクションシーンに臨んでいた。最後に「OK!」という入江監督の声が響くと、現場からは大きな拍手が巻き起こり、長尾からも笑顔がこぼれた。
長尾は、このワンカットの撮影を「大変でした」と振り返る。またワンカットでのアクションは初めての経験だったと語り「アクションというとすごくカットを割るイメージがあったので、どうやって撮影するんだろうというのがまずありました。ワンカットですごい長尺でアクションを撮るので、動きの数も多くて、壁を登るワイヤーも大変でしたし、そこにさらに才蔵らしさを出すことだったり、いろいろなものを詰め込んでいくことになるので、すごく大変でした(笑)。普段はちょっと大変でも『いやいや、全然大丈夫でしたよ!』と言いますが、あれは心から大変でしたね。」と、コメントを残した。
大泉洋&堤真一が満身創痍、過酷なアクションシーンの連続
別日には大泉と堤のアクションシーンの撮影も行われた。堤が身に着けていた衣装は本物の鉄が使用されており、かなりの重量とのこと。その衣装で行ったアクションシーンを堤は「撮影が進むごとに立ち回りがどんどん増えていきますし、それで腰を痛めて、京都にいる間は整体とかマッサージをずっとやっていましたよね(笑)。」と満身創痍だった様子。
しかし、大泉演じる兵衛と対面すると、1ミリもそんな素振りを見せず刀を振り、「スピード感のある殺陣というよりは、大きく見せることだけを大事にしていました。でも、『速く』となると手だけになっちゃうので、それだけは避けて、大きく、大きくということを意識しました。太刀筋がきれいに行くように、波を打たないように。速くやっていると波を打ってしまうんですよ。そうならないように重い感じで刀を振る。大きく、大きくメリハリのある動きを意識していました。」と、見せ方までも気にかけ、圧巻のアクションシーンを完成させていた。
一方、大泉は刀を2本構えた二刀流で堤演じる道賢に立ち向かっていく。過酷なアクションシーンに「身体的には本当にきつかったですけれど、兵衛という役をやるには、今の僕ぐらいの年になって出る味わいというか雰囲気が必要だったんだなと今となっては思っています。」と、兵衛に対してのリスペクトがあふれるようなコメントを残した。
さらに、息をのむような堤との一騎打ちのシーンは「やっぱり堤さんは、アクションにも慣れてらっしゃいますから、ちょっとしたシーンが本当にかっこよくて。兵衛のもとへ数人斬ってからやってくるというシーンがあったのですが、俺、この人とこの後に一対一で戦うんだ、どうしよう…みたいなね(笑)。がむしゃらにくらいついていきました。」と、振り返る。
そんな大泉は、1つ1つの動きをアクション部の方に聞いている様子が印象的だった。刀の位置、振り下ろし方、速度などを丁寧に確認し本番に臨む。そして、本番を終えると、持ち前のトーク力でエキストラや共演者を笑顔し、座長として現場の雰囲気作りをこなしていた。
入江悠監督&須藤泰司Pインタビュー
――まずは「室町無頼」の企画経緯をお聞かせください。
須藤:企画自体は8年ぐらい前に立ち上がり、すぐに主役を大泉さんにお願いして動き出したのですが、ようやく映画が撮れるという準備ができた段階で、コロナ禍になったんです。
堤さんもその段階で決まっていて、大泉さんと堤さんがある現場でお会いした時に、「どうしてもこの作品は面白いからやりたいよね」って言ってくださり、スケジュールをあわせてようやく撮影に取り掛かれました。企画意図としては、時代劇という枠から離れて、エンターテインメントのアクションの映画として楽しめるというものを作りたいなというのが大きかったです。
入江:アクションもですが、 名もなき人々が世の中に不満を持って立ち上がるというのが、この7、8年の世界ともリンクするところがあるなと思います。怒るとか不満をぶつけるというのが、今は難しい世の中なのですが、この映画が1つの指針じゃないですけど、「こういう生き方もあるよ」といったことを感じてもらえたらいいなと。
――現場での大泉さんはいかがでしたか?
入江:すごい弱音を吐いていました(笑)。「アクションが多い」とかね(笑)。
須藤:「最終的にやるんですけど、もう50歳ですから、 とりあえず体と相談してやらないと、最終的にみんな皆さんに迷惑をかけてしまうんで、今日はここまででいいですか」と言っていました(笑)。
入江:でもやっぱり、仕上げてくると、すごい殺陣になっているんです。もう何カ月も練習して、刀も多分ご自宅でも振ってこられていたので、かなり見応えがあります。
入江悠「長尾くんの名前が上がってきた時に、いけるなと思った」
――才蔵役を演じる長尾さんのキャスティング秘話などあればお聞かせください。
須藤:まずは大泉さんがいて、堤さんがいてという時に、少年から大人になるというプロセスを出せる人じゃないといけないなと。最初は大泉さんの後ろから子犬のように付いて来るぐらいのかわいらしさとか愛嬌が欲しいなと思っていたんです。そんな少年が、やがて最強の兵法者に成長する。そこで栗生プロデューサーが、「才蔵役にぴったりの子がいます」って。それが長尾くん。まさにあらゆる面で我々のイメージする才蔵でしたね。
入江:身体能力の高さというのが必須だったんです。 育っていくという意味で言うと、完成された大人っぽい人だと違いますし、伸びしろがないといけない。長尾くんの名前が上がってきた時に、いけるなと思いました。
――撮影でこだわっている面はありますか?
入江:今回は飢饉の時代の話なので、風光明媚な日本の自然は合わないんです。乾いていて食物が取れないし、 みんな栄養失調で亡くなっていくというような設定なので、砂塵や風などを使っています。いつも現場ではで大きな扇風機が回っていました。
須藤:通常の時代劇イメージだけでは観客に広がらないので、「アクション」という軸を大きく作っています。でも単純にアクションに傾くのではなく、洋風な「アクション」と日本映画の美しい「殺陣」のハイブリッドにこだわりました。大泉さんはすごくカッコいい殺陣をやって、長尾くんはすごくカッコいいアクションをやるという感じです。
――アクションシーンのワンカット撮影など、見どころがたくさんある映画だと感じます。
入江:アクション映画っていっぱい日本映画にもありますが、 この大作でどこまでできるか、俳優の皆さんに挑戦してもらおうと思いました。いろんな映像のテクニックで見せることはできるんですが、 ワンカット撮影のシーンに関しては見たことのないものにしたいなと。 ぜひ注目して見ていただきたいです。
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