映画『1秒先の彼女』(台湾版)より

山田裕貴&齋藤飛鳥、岡田将生&清原果耶、京本大我&古川琴音... 日本でリメイクされた豪華キャスト陣の台湾映画3選

2024.12.29 12:00
映画『1秒先の彼女』(台湾版)より

ユニークな設定や心に響くストーリー、魅力的なキャストで話題を呼んだ台湾の映画作品が、日本でリメイク版として生まれ変わっているのはご存知だろうか。日本ならではの視点や解釈を取り入れることで、オリジナル版の魅力をさらに引き出してくれるリメイク作品の数々。字幕や吹き替えだけでは伝えきれない作品の重要なメッセージも読み取ることができる上に、原作との違いを比較して楽しむことができるのも魅力のひとつだ。本記事では、台湾発の作品が原作となった映画を3本紹介。いずれも動画配信サイトなどで視聴できるので、気になった方にはぜひチェックしてもらいたい。

青春映画の金字塔『あの頃、君を追いかけた』(2011)

2011年に台湾で空前の大ヒットを記録した『あの頃、君を追いかけた(原題:那些年,我們一起追的女孩)』。1990年代、台湾の小さな町を舞台に、お調子者で悪ふざけばかりしている男子高校生のコートンと、彼が想いを寄せる優等生・チアイーとの甘酸っぱい青春を描いた物語だ。

本作はもともと、作家として台湾で活躍するギデンズ・コー(九把刀)の自伝的小説として知られていたが、映画版ではギデンズが自ら初監督を務め、劇場公開されるやいなや社会現象とも言えるほどの盛り上がりを見せた。

そんな『あの頃』の日本リメイク版が公開されたのは、2018年。主演の二人には山田裕貴と乃木坂46の元メンバーである齋藤飛鳥が起用され、日本公開の際には乃木坂46ファンの若い男性客が多く劇場に駆けつけていた。

日本の高校生活らしい描写を取り入れながらも、多くの場面がオリジナル版に忠実に再現されている日本版。本作のクライマックスとも言える感動的なランタン上げのシーンや、チアイーがポニーテール姿を見せるシーンは、日本版でもほぼそのままに再現されており、多少の無理やり感はあるものの、監督を務めた長谷川康夫が原作を心からリスペクトしていることが伝わった。

”青春” という分かりやすいテーマではあるが、台湾と比較的近しい文化背景を共有している日本だからこそうまくハマったとも言えるだろう。原作となった台湾版を視聴すれば、登場人物たちの心情や日常にきっと親しみやすさを感じるはずだ。

大胆なアレンジで魅力倍増! 『1秒先の彼女』(2020)

続いて紹介するのは、2020年に台湾で公開された『1秒先の彼女(原題:消失的情人節)』。本作はユニークな設定のファンタジーラブコメディで、監督を務めた陳玉勲(チェン・ユーシュン)は、過去に『熱帯魚』や『ラブゴーゴー』などのキュートでポップなコメディ作品を手掛け、熱烈なファンを抱えている。

何をするにも周りよりワンテンポ早い、アラサー女子のシャオチー。郵便局員として真面目に働く彼女は、バレンタインに意中の彼とデートの約束をしたが、朝になって目覚めるとなぜかバレンタインの翌日になっていた。”消えてしまった一日” を探すために謎を解こうとするシャオチー。その秘密を握っていたのは常に周りよりワンテンポ遅い、バス運転手のグアタイだったーー。

テンポの良さと見事なまでの伏線回収で、終始楽しく観る人を飽きさせない作品だが、2023年に発表された日本リメイクにはとても驚かされた。その理由は、元の設定を大胆にアレンジした “男女逆転ストーリー” になっていたからだ。タイトルは『1秒先の彼』。

宮藤官九郎が脚本を手がけ、『カラオケ行こ!』などの作品を手掛けている山下敦弘が監督を担当。郵便局の窓口に勤めている、何をするにもワンテンポ早いハジメを岡田将生が演じ、周りよりもワンテンポ遅いのんびり屋のヒロインを清原果耶が演じた。キャラクター設定は大きく刷新されているものの、この男女逆転という設定が、物語に絶妙な新鮮さをもたらしている。

すでにオリジナル版を観たことがある人は、ぜひリメイク版と見比べて楽しんでみてほしい。「同じ設定でこんなアプローチがあるのか!」と作品の新たな魅力を発見できるだろう。

音楽で魅せる、時空を超えた愛『言えない秘密』(2007)

最後に紹介するのは『言えない秘密(原題:不能說的秘密)』。台湾はもちろんのこと、中国や香港などアジア全域で大ヒットを記録した名作だ。音楽、青春、そしてファンタジーの要素が融合した壮大なラブストーリーで、中華圏で知らない人はいない台湾発のスーパースター・周杰倫(ジェイ・チョウ)が主演・脚本・音楽を務めている。台北の淡江高級中学で撮影された映像もノスタルジックで美しく、ファンによる聖地巡礼スポットとして未だに根強い人気を持っている作品だ。

物語の舞台は台北の音楽学校。転校生としてやってきた青年のシャンルンは、ピアノ室で美しい曲を弾いていた儚げな女性・シャオユーと出会う。瞬く間に恋に落ちる2人だったが、シャオユーは大きな秘密を抱えていた……。その秘密を巡って展開するストーリーは、時空を超えた純愛を軸としながら、切ない恋愛や青春の儚さを描く。

もともと2007年に公開された名作が、なんと17年もの時を経て日本でリメイクされるということで、ファンは歓喜しながらも「日本版の主演を演じるのは誰なのか?」と小さな不安を抱いたに違いない。原作では情熱的なピアノバトルが繰り広げられたり、物語の中核となる美しい楽曲をヒロインと連弾したりと、周杰倫の才能が余すことなく活かされているからだ。

そんな原作ファンたちの期待(と不安)を受けて、日本版の主演に抜擢されたのは、SixTONESの京本大我。京本は出演を機に初めて本格的にピアノの練習を始めたそうで、注目の演奏シーンでは、その猛練習の成果を見せつけた。また大学で出会うミステリアスな女性を演じたのは古川琴音だが、彼女もまた儚げな雰囲気が役柄にぴったりで、原作ファンを唸らせた。音楽はオリジナル版ではなくショパンの楽曲が主に使われており、主題歌には SixTONES による楽曲「ここに帰ってきて」が採用されている。

いち台湾エンタメファンとしては、台湾で愛されてきた作品がリメイク版の公開をきっかけに再注目されることが何よりも嬉しい。事実、本作が公開されるタイミングにあわせて、台湾版の『言えない秘密』ブルーレイディスクが日本で再販されることになったという嬉しいニュースもあったのだ。

日本の監督や俳優陣による新たな解釈や視点が加わることで、オリジナリティを持った作品として生まれ変わる台湾映画たち。リメイクをきっかけに多くの人に原作を知ってもらい、台湾エンタメ業界を盛り上げてくれることに期待したい。

文/田中 伶

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