“コロナ禍”乗り越え映画復権「インサイド・ヘッド2」「デッドプール&ウルヴァリン」2024年勢いのあった洋画たち
2024年も残すところあとわずか。12月2日に発表された「新語・流行語大賞」では阿部サダヲ主演、宮藤官九郎脚本のドラマ「不適切にもほどがある!」(2024年、TBS系)を略した「ふてほど」が年間大賞を受賞し、トップ10にはCreepy Nutsのヒット曲でアニメ「マッシュル-MASHLE-」OPテーマの「Bling-Bang-Bang-Born」や、Netflix発ドラマ「地面師たち」のセリフ「もうええでしょう」などが選ばれるなど、2024年のエンタメも各方面で盛り上がった。映画業界にも話題になったことが数多くあったので、洋画を中心にいくつか紹介していこう。
2024年も日本アニメ作品の強さが際立った
映画業界は2020年から数年間のコロナ禍で鑑賞者激減などと言われたが、映画館にはだいぶ人が戻ってきている。12月15日現在の国内興行収入ランキングで100億円を超えたのは「名探偵コナン100万ドルの五稜星」(157.1億円)と「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」(115.5億円)の2作品。日本アニメが大衆に愛されていることが分かる。
興行収入的にヒット作は山崎賢人主演の人気シリーズ最新作「キングダム 大将軍の帰還」(79.8億円)や、野木亜紀子脚本で満島ひかり主演の「ラストマイル」(58.9億円)など邦画が絶好調だ。けれども、邦画以外の話題も楽しませてくれた1年だった。
「インサイド・ヘッド2」思春期特有の“感情たち”を描き歴代興行収入8位に
映画シリーズにとって第1弾が高評価であればあるほど、続編への期待が高まり苦戦することがある。しかし2024年8月公開の夏休み映画だったディズニー&ピクサー作品「インサイド・ヘッド2」(ディズニープラスで見放題独占配信中)は前作同様にファンを納得させる内容だった。2024年に公開された洋画作品として初の興行収入50億円(前夜祭興行を含む)を突破し、世界興行収入はアニメーション映画史上1位、(実写を含めると8位)を記録するなど世界中で大きな話題となった。
人気の秘密は“大人も泣ける”こと。カラフルでユニークな“感情たち”の世界を舞台に、誰もが経験したことのある“ライリーの物語”を描いている。
今回、頑張り屋さんの女の子・ライリーは、ちょっぴり大人になり思春期に突入。彼女の幸せを子どもの頃から見守る感情のヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリの前に、<大人の感情>シンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシが現れるところから物語は始まる。誰しもの心の中に存在している感情たちの声が分かりやすく描かれていた。
日本版の声優は大竹しのぶ(カナシミ)、多部未華子(シンパイ)、横溝菜帆(ライリー)、マヂカルラブリー・村上(ハズカシ)、小清水亜美(ヨロコビ)、小松由佳(ムカムカ)、落合弘治(ビビリ)、浦山迅(イカリ)、花澤香菜(イイナー)、坂本真綾(ダリィ)、武内駿輔(ブルーフィー)、花江夏樹(ポーチ―)、中村悠一(ランス)と豪華な面々で、ライリーの中で暴れ回る“感情たち”をにぎやかに演じている。
「デッドプール&ウルヴァリン」ライアンとヒューのじゃれ合いがツボ
「デッドプール&ウルヴァリン」は、2024年7月24日に日本で世界最速公開され、R15+指定だったにもかかわらず、9月2日までに興行収入が20億4095万円に到達。公開から41日でシリーズ歴代No.1の快挙となった。もちろん、R指定映画の興行収入歴代1位を独走している。
今作は、戦う動機は超個人的、破天荒でなんでもアリの“クソ無責任ヒーロー”デッドプール(ライアン・レイノルズ)と、クソ真面目で“キレるとヤバい最恐アウトロー”ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)というまったく異なる個性のヒーロー2人が暴れまわる、過激なアクションエンタテイメント。ライアンとヒューの息の合った演技と、豪快で壮大な“悪ふざけ”といった具合の不死身な戦いと小ネタの応酬で映画好きを楽しませる。
レイノルズとジャックマンの仲の良さは共演映画「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(2009年公開)から始まっており、SNSでドッキリを仕掛けあったり、2021年のジャックマンの誕生日にはレイノルズがジャックマンの顔がいくつもプリントされた靴下を履いてお祝い動画をアップしたりと、とどまることを知らない。スター同士のじゃれ合いを楽しみにしてる人もいるだろう。
「ブルー きみは大丈夫」ブルーの声を演じる宮田俊哉に絶賛の声
ライアン・レイノルズの別の顔を見られるのが6月14日に公開された「ブルー きみは大丈夫」。子どもにしか見えない不思議な存在と孤独な少女の交流を描いたファンタジードラマで、「ウォーキング・デッド」のケイリー・フレミングが主人公の少女・ビーを、レイノルズがビーを助ける隣人・カルを演じている。
さらにマット・デイモン、エミリー・ブラント、サム・ロックウェル、ブラッドリー・クーパー、ジョージ・クルーニーら豪華キャストが声の出演をして、日本語吹き替え版ではKis-My-Ft2の宮田俊哉がブルーの声、稲垣来泉がビーの声を務め、レイノルズ(カル)の声は「デッドプール」シリーズ同様に加瀬康之が担当。紫色で大きくてもふもふの生き物・ブルーをはじめ、かわいくて不思議なキャラがたくさん登場する。
ブルーの声を演じた宮田には「ブルーの宮田くんお見事だった」「ブルーの優しさが声に現れててびっくりするほど良かったの」「宮田くんのファンをずっとやってきたけどあまりに違和感がなかった」「仕事できすぎ」などSNSで絶賛する感想が並んでいた。
「怪盗グルーのミニオン超変身」グルー・Jr.が誕生してメガミニオンたちが大暴れ
2010年公開のシリーズ第1作「怪盗グルーの月泥棒」から、あれよあれよと世界的人気キャラクターと成長したミニオン。2024年は第4弾となる「怪盗グルーのミニオン超変身」(7月19日公開)が夏休みにヒットした。タイトルの通り、今回ミニオンたちは岩のように固い体を持ったメガジェリー、強力なレーザービームを放つメガメル、怪力のメガデイブ、マッハのスピードで飛ぶメガガス、手足をゴムのように自在に伸縮できるメガティムといった、スーパーパワーをもったミニオンに超変身するのが見どころ。
グルーファミリーに新たに誕生した赤ちゃん、グルー・Jr.の愛くるしい言動に癒やされて、家族みんなで肩ひじ張らず楽しめる作品だ。
「母とわたしの3日間」母娘のすれ違いと後悔を描く温かい傑作
SNSで2024年に見た「泣いた作品」として挙げる人が目立ったのが「母とわたしの3日間」(5月24日公開)である。こちらは韓国映画だが、休暇をもらって天国から降りてきた亡き母・ポクチャと、母が残したレシピで定食店を営む娘・チンジュが過ごす3日間を描いたファンタジーストーリー。
母ポクチャ役は韓国で“国民の母”と呼ばれるベテラン俳優キム・ヘスク。娘チンジュ役はドラマ「海街チャチャチャ」「オーマイビーナス」などで人気のシン・ミナが演じ、温かな食事が人の心をつなぐことを描いている。生前に言いたくても言えなかった母娘の気持ちがすれ違い、失って初めて気付く互いを好きな気持ちがよみがえる。“親孝行したいときに親はなし”という感情は世界共通なのだろう。「ボロボロ泣いた」という感想が相次ぎ、注目されている。
1年を振り返る機会には入ってこないが、12月公開の冬映画も元気だ。「モアナと伝説の海2」(12月6日公開)、「ライオン・キング:ムファサ」(12月20日公開)、「ソニック × シャドウ TOKYO MISSION」(12月27日公開)など、家族や友人、大切な人と見に行ける作品が並ぶ。エンタメが活発な世は平和の証。来年もまた、人々の心が躍る作品がたくさん生まれることを願う。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
※山崎賢人の「崎」はタツサキが正式表記
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