「ジョーカー」より

哀しきモンスター「ジョーカー」とは何者か? アメリカの闇を描く社会派映画とレディー・ガガ、ホアキン・フェニックス主演作

2024.10.04 18:00
「ジョーカー」より

ハーレイ・クインやピースメイカーなど、数々の人気ヴィラン(悪役)を輩出してきたDCコミックス。なかでも不動の一番人気と言えば、バットマンの宿敵・ジョーカーだ。ピエロのような道化メイクを施し、底知れぬ狂気を振りまくその姿は、ときに恐ろしく、ときに悲しく、ときに愛らしい。バットマンという正義の権化に対するカウンター的キャラとして活躍しつつも、今やヴィランの枠組みを超えた存在にまで昇華した。「ムービープラス」では、10月11日(金)に封切りされる新作映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の公開記念特集として、前作「ジョーカー」をはじめ、関連作を一挙放送。今回は、ジョーカーという稀代の悪役の魅力を紹介すると同時に、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』で主演を務めるホアキン・フェニックスとレディー・ガガの主演作を振り返っていこう。ジョーカーのビジュアルは見たことあるけど、じつはよくわかっていないという人も、これさえ読めば観たくなること間違いなし。

稀代の悪役、ジョーカーって何者?

ジョーカーが初めてコミックスに登場したのは1940年。バットマンが誕生したのが1939年であるから、ほとんど同時期ということになる。前述の通り、バットマンの宿敵として生み出されたジョーカーは、当初は知性と狂気を孕んだサイコパスとして描かれたが、徐々にマヌケなキャラクターへと変貌するなど、時代とともに変化を繰り返しているのが面白いところ。そんな相反する二つのキャラクター性は現在でも健在で、作品ごとに使い分けられていたり、融合していたりもする。まさに多様性こそが彼の人気の秘訣と言えるだろう。そんな器の大きなジョーカーだが、さらに「第3」とも呼ぶべき新たなキャラクターとして再構築されたのが、2019年の映画『ジョーカー』だ。鳴かず飛ばずのコメディアンだった彼が、ふとしたきっかけから狂気へと染まり、ジョーカーになっていく過程を描いた社会派作品で、これまでのキャラクター像とは一線を画した新たなオリジンを確立した。映画『ジョーカー』はR指定映画として初めて10億ドルの興行収入を超え、第76回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞、さらに第92回アカデミー賞で主演のホアキン・フェニックスが主演男優賞、ヒドゥル・グドナドッティルが作曲賞を受賞するなど、世界的な大ヒットを記録した。10月11日に公開される『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は本作の直接的な続編に当たるため、絶対にチェックしておきたい一作だ。

改めて、映画『ジョーカー』が革新的だったのは、これまで何度も映像化されてきたジョーカーという悪役を、まったく新しいキャラクターへと変化させたところだろう。それまでジョーカーと言えば、“ぶっ飛んだサイコパスな犯罪者”というイメージで、最後にはバットマンに倒されるべき究極の敵役として輝きを放っていた。しかし映画『ジョーカー』では、コメディアンを目指す心の優しいアーサー(のちのジョーカー)が、格差社会のなかで鬱屈を積み重ねていき、ふとしたことでその狂気を爆発させてしまうという展開。生まれつきの凶悪犯ではなく、弱肉強食の社会が生み出した哀しきモンスターとして描かれたことで、観客の共感を得たのだ。この映画にはバットマンも登場せず、アクション要素もほとんどない。貧富の差が激しいゴッサムシティという架空の街を舞台とした質の高い社会派ドラマで、「アメコミ」という枠組みを超えて広く認知された作品となった。

カメレオン役者、ホアキン・フェニックスの魅力

映画『ジョーカー』、そして続編の『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でジョーカーを演じるのは、ホアキン・フェニックス。「情動調節障害」という精神疾患を抱え、母親を介護しながら社会の片隅でひっそりと暮らすアーサーを演じるにあたり、なんと20キロもの減量を敢行。あばら骨がくっきりと浮き出るほどにやせ細った姿で撮影に臨むなど、徹底した役作りを行った挑んだホアキンは、まさに「怪演」と呼ぶにふさわしい芝居を見せている。緊張すると笑いが止まらなくなってしまう「情動調節障害」の発作に始まり、母親を介護する際の孝行息子な様子、しだいに狂気を帯びてゆく過程をじっくりと丁寧に積み上げていき、それが劇中でもっとも有名な「階段でのダンスシーン」でのカタルシスへと繋がっていく。ちなみに映画『ジョーカー』は、人気映画ライターグループ「映画木っ端微塵(多田遠志、てらさわホーク、高橋ターヤン)」による副音声解説付きの「ジョーカー◆副音声でムービー・トーク!◆」の放送もあるので、こちらもぜひチェックしてみてほしい。

そもそもホアキン・フェニックスは出演作ごとにガラリと印象を変えることで知られるカメレオン俳優であり、それは今回「ムービープラス」で放送される『8mm』や『ヴィレッジ』でも確認できる。『8mm』は1999年公開のサスペンス映画で、ホアキンの若かりし青年期を堪能できるのが見どころ。またニコラス・ケイジとの共演、『セブン』のアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーによるスリリングな脚本にも注目だ。『ヴィレッジ』は『シックス・センス』のM・ナイト・シャマランが贈る極上のスリラー&ミステリー。ホアキンは寡黙で誠実な村の若者・ルシアスを見事に演じきっている。

ジョーカーのパートナー役でレディー・ガガが参戦!

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でもう一つ話題になっているのが、世界的アーティストであるレディー・ガガの参加だ。幼少期の夢が俳優であった彼女は、2015年ころからドラマなどに出演し、2018年に『アリー/ スター誕生』で映画初主演を果たす。バーのウェイトレスから瞬く間にスターへの階段を駆け上がっていく歌姫を熱演したレディー・ガガは、批評家から高い評価を得て、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、全米映画俳優組合賞の主演女優賞にノミネート。クリティクス・チョイス・アワードと米国映画批評会議賞では主演女優賞を受賞するなど、すでに世界でもっとも著名なアーティストの一人であった彼女が、俳優業でも成功を収めた瞬間となった。ちなみに、この映画の製作に名を連ねるトッド・フィリップスこそが「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」の監督だ。『アリー~』での高い演技力と歌唱力が、ジョーカーのパートナー役を演じることにつながった。シンガーソングライターとしての彼女しか知らない人は、ぜひこの映画で俳優としての魅力も感じてほしい。

ヒース・レジャー版のジョーカーも必見!

最後に、狂気に染まりきった“これぞジョーカー”という映画も紹介しておこう。それこそが『ダークナイト』で、アカデミー賞助演男優賞を受賞したヒース・レジャーが演じる「史上最恐」とも言えるジョーカーが楽しめる。この作品ではあくまでバットマンの宿敵としての登場なだけに、そのスーパーヴィランっぷりを遺憾なく発揮。今回の「ムービープラス」特集で、ホアキン・フェニックス演じるジョーカーと比べてみるのもまた味わい深いだろう。ちなみに「ムービープラス」では、クリストファー・ノーラン監督によるダークナイト三部作も放送される。「バットマン ビギンズ」「ダークナイト」「ダークナイト ライジング」は、バットマンの世界観を知るには最高の教材とも言えるだろう。これを機に、DCコミックスの奥深き世界へと足を踏み入れてみてはいかがだろうか?

◆文=岡本大介

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