映画史に燦然と輝く「エイリアン」が支持される理由 物語、デザイン、映像美、カメラワーク…独自のホラーSFジャンル確立
1979年に公開され大ヒットを記録した映画「エイリアン」の“その後の物語”となる映画「エイリアン:ロムルス」が9月6日(金)に公開される。人生の行き場を失った6人の若者たちが生きる希望を求めて足を踏み入れた宇宙ステーション“ロムルス”。しかし、そこで彼らを待っていたのは、寄生した人間の胸を突き破り、異常な速さで進化する“エイリアン”だった。宇宙最強にして“最恐”の生命体からどうすれば逃げ切れるのか――。「エイリアン」の監督であり“エイリアンの創造主”リドリー・スコットが製作を、「ドント・ブリーズ」(2016年)などを手掛けた鬼才フェデ・アルバレスが監督を務める、究極のサバイバル・スリラー作品となっている。この作品の公開が決まったことで、俄然注目を集めているのがシリーズ第1作の「エイリアン」だ。そこで「第52回アカデミー賞」視覚効果賞をはじめ、数々の賞を受賞するなど、映画史に燦然と輝く傑作「エイリアン」の見どころ、人々が引かれる理由などをあらためて振り返ってみる。
一度見たら忘れられないインパクト「エイリアン」とは
宇宙最強(最恐)の生命体“エイリアン”は、映画本編を見ていない人でもその姿がパッと浮かぶくらい、キャラとしての個性が強い。大きな特徴として挙げられるのは、進化の速度が早いということ。第一形態のエッグチェンバーは、名前の通り卵のような物体。第二形態のフェイスハガーは、8本の脚を持つ“蜘蛛”のような感じで、人間が接触すると長い尻尾で首に巻きつき、顔を覆うような形で人間に寄生する。人間の力では剥がすことができないくらいの密着度で、その脚を切り離そうと試みても、宇宙船の床を溶かしてしまうほどの体液が吹き出してしまい下手に切ったりすることができない。寄生した人間の中で成長して、勢いよく胸を突き破って姿を現すのが第三形態のチェストバスター。その登場の仕方はグロテスクで衝撃的だった。そして、おなじみの頭部が長く、鋭い歯があり、知能も高い黒い物体ゼノモーフが最終形態(成体)となる。生命力もあり、あっという間に進化し、躊躇なく人間に襲いかかる。出会ったが最後、逃げられない“絶望”を味わうこととなる。
このエイリアンのデザインは、アーティストのH・R・ギーガーによるもの。ギーガーは1975年にアレハンドロ・ホドロフスキー監督が着手したSF映画「DUNE」に参加し、悪役のハルコンネン男爵の城のデザインを担当した。残念ながらこの作品は配給先が決まらず頓挫してしまったが、「エイリアン」でその独創的なクリーチャー、世界観を見事に表現した。「エイリアン」でその名を広く知らしめることとなったが、1973年発売のエマーソン・レイク・アンド・パーマーのアルバム『恐怖の頭脳改革』のジャケットアートワークの原画を担当しており、ロックファンには「エイリアン」以前から知られる存在ではあった。
未知なる宇宙生命体に追われる恐怖…スリル満点!
「エイリアン」の魅力として次に挙げられるのは、ストーリーと設定。未知なる宇宙生命体との遭遇、そして追われる恐怖はスリルに満ちていて、緊迫感で見る側も手に汗握るほどの状態になってしまう。リドリー・スコット監督がこだわる映像美、そしてカメラワークがリアリティーと臨場感をより感じさせてくれる。ジェリー・ゴールドスミスが手掛ける音楽も、その恐怖を一層引き立てていると言えるだろう。
また、シガニー・ウィーバー演じるエレン・リプリーが、第1作のみならず「エイリアン」シリーズ全体に欠かせない存在となっている。未知の脅威を目の前にしても、冷静に考え、大胆に行動する。リプリーの勇気、強さ、仲間を守ろうとする思いなどが、シリーズを通して大きな魅力となっている。
1986年公開の「エイリアン2」(ジェームズ・キャメロン監督)、1992年公開の「エイリアン3」(デヴィッド・フィンチャー監督)、1997年公開の「エイリアン4」(ジャン=ピエール・ジュネ監督)と、リプリーを主人公に続編が作られたが、監督は違えど、それぞれの作品でリプリーの良さをしっかりと描き切っている。
そして最新作「エイリアン:ロムルス」の舞台となるのは、地球から遠く離れた宇宙。人生の行き場を失った6人の若者たちは、生きる希望を求めて宇宙ステーション“ロムルス”へと足を踏み入れる。そこで彼らを待っていたのは、寄生した人間の胸を突き破り、異常な速さで進化を遂げるエイリアンだった。6人の若者が閉ざされた宇宙ステーションから無事に脱出できるのか…。過去作よりも生々しさを増したエイリアンがうごめく姿や、指を腐らせ鉄をも溶かす強烈な酸性のエイリアンの血液、突然訪れる不穏な静寂、そして無重力で逃げる術を失う若者たちの姿は、見る者を絶望の淵へと陥れていく。
主人公のレインを演じるのは、「プリシラ」(2024年)でヴェネチア映画祭主演女優賞を受賞したケイリー・スピーニー。その他にも「ライ・レーン」(2023年)のデヴィッド・ジョンソン、「暗黒と神秘の骨」(2021~2023年)のアーチー・ルノー、「マダム・ウェブ」(2024年)のイザベラ・メルセードら、気鋭の若手俳優たちが極限状態に追い込まれた若者たちを熱演している。
映画「エイリアン:ロムルス」は9月6日(金)より全国の劇場で公開。「エイリアン」などシリーズ過去作はディズニープラスのスターで配信中だ。
◆文=田中隆信
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