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ピクサー最新作は“大人こそ”共感できる物語 “複雑な人間関係”に「同年代だったころの私は…」<インサイド・ヘッド2>
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明日8月1日(木)、「インサイド・ヘッド2」の日本公開日がやってくる。報じられている通り、この作品は日本に先駆けて6月14日から全米をはじめ世界各国で公開され、これまでNo.1だった「アナと雪の女王2」を追い越し、アニメーション映画史上世界No.1の世界興行収入となるなど、歴史的な大ヒットを記録している。主人公が“大人”への階段を踏み出す時期を描いた本作は、大人こそ共感できる描写も多数。今回は幅広いエンタメに精通するフリージャーナリスト・原田和典氏が試写にて今作を視聴し、独自の視点でのレビューを送る。(以下、ネタバレを含みます)
大ヒット作の9年ぶりの続編
ディズニー&ピクサーの新作「インサイド・ヘッド2」は、前作「インサイド・ヘッド」(ディズニープラスで配信中)以来、9年ぶりに公開される続編。11歳だった主人公の女の子・ライリーもハイスクール入学を考えるまでに成長した。アメリカは基本的に14歳から高校生なので(4年制)、劇中の時間差は3年弱ということになる。「11歳と14歳では、まるで違う」ということは、その年齢に達したことがある人なら誰でも実感できるだろう。「思春期」がやってくる。いささかマニアックな言葉で言えば「第二次性徴」も起きる。
いわゆる「男性的」とか「女性的」と呼ばれる体つきにもなっていく。ピクサーアニメゆえ、そのあたりに関しては深入りしていないが、それでも「親への反抗」や「友人との、やや複雑な人間関係」などはしっかり描かれていて、見る者が「ライリーと同年代だったころの俺は私はどうだったのかな」と振り返る余地を確実に与えてくれる。それこそ思春期を遠い昔に通り過ぎた大人たちからも共感を得られるだろう。ピクサーアニメということで、もちろん老若男女誰でも入りやすい作品になっているが、試写で見たときにこのあたり、大人だからこそ共感できる部分も多いなと感じた。過去を振り返って見るのもよし、子どもたちに自分の若かりし頃を回想とともに伝えるもよし、「小さい子が見る映画だろ?」と“食わず嫌い”せず、ぜひ大人たちに見てもらいたいものだ。
さて、そんな「インサイド・ヘッド」シリーズは、ライリーの心の中にあるさまざまな感情が実にポップな形でキャラクター化され、あれこれと動き回るところも実に面白い。こうしたアイデアが、かつてなかったのは疑いのないところであろうし、よくぞ思いついたものだと目の覚めるような思いになるのは私だけではないはずだ。
精神的にも大人になったライリー
ここであらためて「インサイド・ヘッド2」に登場する感情を紹介する。前作に続いて登場する「ヨロコビ」は、ライリーを楽しい気持ちにすることが役割。青髪で人間ぽい外見。ポジティブ。「ムカムカ」は嫌いなものを拒絶する役割。全身緑。「イカリ」は腹が立った時に怒りを爆発させ、真っ赤な顔で歯をむき出しにする。「ビビリ」はライリーを危険から守る。紫色の顔をしていて目が大きく、用心深い。「カナシミ」は、前作では謎多きネガティブキャラという感じだったが、今回は他の感情をおもんぱかる優しさが強く伝わる。その存在感を見直した。
そこに今回は新たなメンバーが加わる。「シンパイ」は最悪の将来を想像し、必要以上に準備してしまう。いつもアップアップしている様子。顔いっぱいに口が広がり、髪の毛が爆発している。「イイナー」は自分にないもの(と、それを持ち合っている他人)を片っぱしからうらやむ感じ。小柄で目がとても大きい。「ダリィ」はどんなときも退屈&無気力で、ダラーンとしている。背筋がシャンとしていることはない。片時もスマホを手放さない。とがった鼻、パッツン前髪の持ち主。「ハズカシ」は人間っぽい外見。大柄で鼻が大きい。モジモジしていて、恥ずかしさがMAXになるとフードで顔を隠す…。どことなく日本人っぽい要素だ。この4つが、ライリーにとって大人になるための新しい感情として登場している。
“感情のブレンド”が実に見事
そしてライリーは羞恥心や比較、怠惰などをよりはっきりした形で外に向けて表現できるようになった。前作で新しい環境になじめなかった頃の話もすっかり思い出となり、友人との関係も良好。大好きなアイスホッケーも続けていて、ちょっとした有望株でもある。
ライリーの内部では、先に触れた「感情たち」が大忙し。彼らはライリーの中にある「司令部」にいて、例えば楽しいときは「ヨロコビ」が、ふと過去の失敗を思い出したときなど「ハズカシ」がイニシアティブをとる。が、物事に関していつも「単一の感情」で対処できるわけなどなく、「アイスホッケーでさらに上を目指したいが、だからといって親友たちと異なる道に行くのは寂しい」という、複雑な思いも出てくる。そのあたりの「感情のブレンド」がいかにライリーの体内で行われているかも、この「2」の見どころとなろう。
音楽のチョイスもニクい
さらに今回は音楽も充実していて、リズムが特に際立っているなと思ったら、日本の学生や社会人もこぞって譜面を取り寄せて演奏しているジャズ・オーケストラ“ゴードン・グッドウィンズ・ビッグ・ファット・バンド”に在籍経験のある名ドラマー、バーニー・ドレセルの名前がクレジットされているではないか。ストーリー、作画、音楽、音質、どの分野にも超一流が集まって、「本気の遊び心」でエンターテインメント性たっぷりの世界を繰り広げれば、その先にあるのは、世代も国籍もすべて超えた、だが人間であれば疑いなく感じ入ることが可能な「喜びの世界」しかない。
前作は「第88回アカデミー賞」長編アニメーション賞に輝いたが、今作も同等もしくはそれ以上に数多くの栄誉に浴することだろう。
◆文=原田和典
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