橋口亮輔監督最新作「お母さんが一緒」公開記念、「ハッシュ!」&「恋人たち」を全国無料放送 あらすじと見どころに迫る
キネマ旬報ベスト・テンやブルーリボン賞最優秀監督賞受賞など、華々しい経歴を持つ橋口亮輔監督の9年ぶりの最新作となる映画「お母さんが一緒」が7月12日(金)に公開される。それを記念して、BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)では、「よる8銀座シネマ」にて橋口監督による「ハッシュ!」と「恋人たち」の2作品を放送。本記事では、両作品の見どころやあらすじを紹介していく。
2000年代初期に性的マイノリティの心情を繊細に表現した「ハッシュ!」
1993年に公開した初の映画作品「二十歳の微熱」がいきなり大ヒットを記録し、1995年に公開した「渚のシンドバッド」でロッテルダム国際映画祭グランプリなどを受賞した橋口監督。文化庁優秀映画大賞やキネマ旬報ベスト・テン、ブルーリボン賞の監督賞など数多くの賞を受賞したことでも知られる実力派の監督だ。
そして今回、BS松竹東急では2002年に公開された映画「ハッシュ!」を7月8日(月)夜8時よりノーカット放送する。二人のゲイの男性と一人の女性があらゆる現実的な問題を克服し、新しい“家族”の可能性を探っていく新しいかたちのラブストーリー。
ある日、自由奔放な性格の直也(高橋和也)と、ゲイであることを隠して生きる勝裕(田辺誠一)のゲイカップルの前に、人と触れ合うことを諦めた朝子(片岡礼子)という女性が現れる。
彼女は、勝裕がゲイであることを知りながらも“彼の子を妊娠したい”と相談を持ち掛ける。かくいう勝裕も幼くして父親を亡くしており、“自分が父親になれる”と興味津々で…。また、始めは理解を示さない直也も、朝子の真剣な想いを知り、3人は徐々に子どもを持つことに前向きに取り込んでいくのだが――。
現代でこそさまざまなメディアで当たり前のように取り上げられる“LGBT”や“多様性”に、2000年代初期に切り込んでいった本作。もちろん当時は現在よりも偏見があり、なかなか受け入れられないことも多いジャンルを、自らを“ゲイ”と公表している橋口監督は、繊細な描写で見事に表現した。
しかも、単に性的マイノリティの純愛のみを描くのではなく、自分の性に悩む人たちの心情や、周りの人たちの“無意識のバイアス”をリアルに表現しており、2000年代初期の社会に衝撃を与えた。
その結果、本作は第24回ヨコハマ映画祭作品賞、監督賞、主演男優賞などを受賞し、第54回カンヌ国際映画祭の監督週間にも出品されるなど、注目の作品となった。
それぞれ事情を抱えながら生きる3人の主人公にフォーカスした「恋人たち」
7月11日(木)夜8時からは、2015年に公開された映画「恋人たち」をノーカット放送。キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン第1位、毎日映画コンクール日本映画大賞などを受賞をした、絶望と希望の物語だ。
通り魔事件で妻を失い、橋梁点検の仕事の傍ら裁判のために奔走するアツシ(篠原篤)と、平凡な生活を送る中で突然現れた男性に心を奪われてしまう瞳子(成嶋瞳子)、そして同性愛者のエリート弁護士・四ノ宮(池田良)の3人が、人とのつながりを通してもがき苦しみながら、かけがえのないものに気付いていく――。
主人公の3人は全員オーディションで選出され、橋口監督が3人に合わせて“あて書き”を行ったそう。橋口監督のもと、ワークショップで即興演技の訓練を積んだ無名の俳優たちが圧倒的な存在感を放っている点は、本作の見どころの一つ。さらに、リリー・フランキーや光石研らベテラン勢も出演しており、彼らの“リアルな演技”にも注目だ。
現代に生きる人々の心に溜まった澱の底にある、かすかな希望を浮かび上がらせる本作。橋口監督は「“人間の感情”を、ちゃんと拾ってあげたい」と語っていたこともあり、飲み込めない想いを飲み込みながら生きている人間の切なさが繊細に表現された作品となっている。
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