ピクサー12作目のアカデミー「長編アニメ賞」なるか 多様性の時代に“どう生きるか”描いた心に響く物語<マイ・エレメント>
現地時間3月10日(日)にアメリカで授賞式が行われる「第96回アカデミー賞」のノミネート作品が発表され、ディズニー&ピクサー映画「マイ・エレメント」が“長編アニメーション賞”にノミネートされた。同作は、火、水、土、風の4つのエレメント(元素)が暮らすエレメント・シティが舞台の物語で、世界興収732億円を突破し、日本でも興行収入26.7億円を突破(1ドル148.72円換算/Box Office Mojo調べ)するヒットを記録。吹き替え版では日本版声優の川口春奈、玉森裕太(Kis-My-Ft2)らの演技もファンの涙を誘った。「アカデミー賞」授賞式へ向けて、候補作をおさらいしつつ、あらためて「マイ・エレメント」の魅力について紹介しよう。
ピクサーは長編アニメーション賞を過去11作で受賞
アカデミー賞の「長編アニメーション賞」は、“授賞式前年の1年間にアメリカ国内の特定地域で公開された作品”などの通常のアカデミー賞のノミネート条件に加えて、「上映時間が最低40分以上」「主要キャラクターがアニメーションで描かれていること」「上映時間の75%以上をアニメーションが占めていること」が条件となっている。これまでにピクサー・アニメーション・スタジオの作品では「ファインディング・ニモ」「Mr.インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」「ウォーリー」「カールじいさんの空飛ぶ家」「トイ・ストーリー3」「トイ・ストーリー4」「メリダのおそろしの森」「インサイド・ヘッド」「リメンバー・ミー」「ソウルフル・ワールド」の計11作品が受賞している。
今回ノミネートされているのは「マイ・エレメント」を含めて5作品。宮崎駿監督が「風立ちぬ」以来10年ぶりに発表した「君たちはどう生きるか」や、近未来的な発展を遂げた中世の王国を舞台に、女王殺しの濡れ衣を着せられた騎士と変身能力を持つ少女の友情と戦いを描いた「ニモーナ」。
マンハッタンに暮らすドッグが深い孤独を感じて友人となるロボットを自作する、犬などを擬人化させたアニメ「ロボット・ドリームズ」(日本では2024年秋に公開予定)、そして長編アニメーション賞を受賞した2018年製作の「スパイダーマン:スパイダーバース」の続編となる「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」と、どれが受賞してもおかしくないものばかり。
「マイ・エレメント」とは
その中でも「マイ・エレメント」は、ディズニー&ピクサーとして12作目の長編アニメーション賞受賞を狙う意欲作。舞台である多種多様なエレメントたちが生活する“エレメント・シティ”には、「他のエレメントと関わらない」という暗黙のルールがあった。性質が違うため、トラブルになりがちだからだ。中でも“火”は触れると燃やしてしまう特性を持つことから、他のエレメントから煙たがられている。
父親が経営するお店を継ぐことが小さい頃からの夢だった火の女性“エンバー”は、父親に認めてもらえるよう一生懸命お店の手伝いをしていた。父親もエンバーの成長を頼もしく思っていたが、テンパって癇癪を起こしてしまうところが唯一の不安要素となっていて、譲り渡すことができずにいた。しかし、ある特売セールの日、自分の体力の衰えも自覚している父親は、エンバーに任せることに。普段なら大丈夫だったのかもしれないが、特売セールということで対応の難しい客も多く来店し、エンバーは癇癪を起こしそうになってしまう。慌てて地下に降りていき、そこで紫の炎になって発散するが、その勢いで水道管が破損し、水浸しに。その水の中にいた水の青年・ウェイドと対面することとなった。
火と水。この世界ではお互い避けるように生活しているが、ウェイドは優しい心の持ち主で固定概念に囚われない柔軟な考えを持っていた。“火”のエンバーに対しても偏見を持たず接し、それによって最初は警戒していたエンバーも意識に変化が生じて、自分の可能性、そして内に秘めた思いに気付くようになった。2人の間で起こった“化学変化”がもたらした奇跡と成長が描かれた作品となっている。
映像美も魅力
そんな「マイ・エレメント」の魅力は、何と言っても圧倒的な映像美。舞台となるエレメント・シティはカラフルでにぎやか。火のエレメントの炎の揺らぎとそれによって生じる周囲の明るさの変化、水のエレメントの半透明な体の精密で繊細な作り込み、土や風も実際の“自然”に近い表現になっていて、そのクオリティーの高さは大きな魅力と言える。
もちろん映像だけでなく、さまざまなメッセージが込められたストーリーも魅力的だ。違うエレメントの2人が出会い、引かれ合うが、周囲は2人のことを認めようとしない。現実では多様性を尊重する世界になりつつあるが、それでも無意識のうちに自分の中の価値観が正しいというか、当たり前だと思ってしまっていて、知らず知らずのうちに配慮の欠ける言動を起こしてしまっているかもしれない。恋愛の素晴らしさだけでなく、そういうことにも気付かせてくれるところがこの作品の良さだと感じる。
短編作品「マイセルフ」でも多様性への意識
ピクサーはこういった多様性への意識や自身と向き合うことの大切さなど、問題提起している作品が多く、短編シリーズの「SPARKSHORTS」にも顕著に表れている。配信されたばかりの最新作「マイセルフ」という作品は、木製人形の子が、金色に輝く周囲の者たちになじめず、星に願いをかけて自分探しをするという物語。その願いが届いたのか、金に輝く左手を見つけたのをきっかけに、両足、両腕、胴体と順番にゴールドのパーツを手に入れ、変わっていくのだが…。得たものがあるのと同時に、失ったものにも気付かされる。わずか6分ほどのショート作品だが、気付きがあり、考えさせられることも多い。
果たして「マイ・エレメント」は受賞することができるのか。恋愛など普遍的なテーマと多様性の尊重という現代的なテーマが盛り込まれた作品の評価が気になるところだ。
映画「マイ・エレメント」は、ディズニープラスで見放題独占配信中。
◆文=田中隆信
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