一緒に眠るとリスクが上がる? 寝室同室の夫婦が注意すべきこと
【睡眠学会所属医師が回答】「夫婦やパートナーが同じ寝室で一緒に眠ると、健康リスクが上がる」というのは本当でしょうか? 睡眠の質が下がることでリスクが高くなる病気、注意すべきポイントをご紹介します。
Q. 「夫婦でも、一緒に眠ると健康リスクが上がる」って本当ですか?
Q. 「結婚してからずっと夫と同じ寝室で眠っています。私は一人で眠るよりも、安心してよく眠れるのですが、『人と一緒に眠るのは体に悪い』と聞いて心配です。夫婦でも、寝室を分けないことによる健康リスクやデメリットは本当にあるのでしょうか? 今さら寝室を分ける予定もないのですが……」
A. 生活習慣病や認知症リスクが上がるという報告も。「睡眠の質」が大切です
残念ですが、夫婦であれ「人と一緒に眠ると睡眠の質が落ちる」という報告があるのは本当です。そして現在では、「睡眠の質」が実にさまざまな病気と関係があることが分かっています。
意外かもしれませんが、糖尿病や高血圧などの「生活習慣病」を始め、うつ病や認知症なども、睡眠の質が悪いと発症リスクが上がり、また、症状も悪化しやすくなることが報告されています。
特に、眠る時刻や起床時刻などの生活リズム、眠るときに快適と感じる寝室の室温や明るさなどの好みが違う場合は、相手に譲った側は睡眠中も落ち着かず、睡眠の質が低下してしまうでしょう。
少し変わったものとしては、「妻が寝つくまでに時間がかかった夜の翌日は、夫婦げんかが起きやすい」という報告もあります。科学的には、睡眠時間や質が落ちることで、精神を安定させるはたらきがある「セロトニン」が不足することが一因と考えられます。
セロトニン不足の状態ではイライラしやすくなるため、普段はお互いに気にならないことでも、いさかいの種になってしまうのでしょう。
しかし、質問者の方は、長年夫婦一緒に休まれているとのこと。生活リズムや求める睡眠環境が同じでお互いに不満がなく、睡眠の質も問題ないと感じるのであれば、無理に変える必要はないかもしれません。
一緒に眠ることで安心感が得られるなら、ストレスホルモンの分泌は抑えられ、不安感を和らげるオキシトシンも増えることも分かっています。
また、相手のいびきや歯ぎしり、睡眠中の異常行動に気付いて、睡眠障害などの病気を早期に発見できたというケースもあります。睡眠環境に求めるものは人それぞれです。それぞれのご家庭で、自分たちにとって「質のよい睡眠」がとれる環境になっていることが大切です。
日本を睡眠先進国にするため、正しい快眠習慣の普及に努める専門医。日本医師会、日本睡眠学会、日本コーチ協会所属。医師とビジネス・コーチという2つの仕事を活かし、医学・生理学と行動計画の両面から睡眠の質の向上に役立つ情報を発信している。
執筆者:坪田 聡(医師)
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