感情を抑える若者たち 本音を出せる環境作りを《SHIBUYA109lab.所長の#これ知ってないと気まずい》

2026.07.08 06:28
提供:繊研plus

4月の本稿では、若者たちが凪(なぎ)のような、穏やかな精神状態を保とうとする傾向「凪メンタル」について紹介しました。感情を大きく揺らさず、自分のペースを保ちながら生活することを重視し、一方で計画的に感情を発散するための消費を行っているという実態です。

他者への配慮

なぜ彼らはそこまで感情の安定を求めるのでしょうか。SHIBUYA109lab.で15~24歳を対象に感情コントロールに関する調査を行ったところ、その背景にある価値観がより鮮明に見えてきました。調査では、「感情をなるべくコントロールしたい」と回答した人が8割を超え、「感情の起伏を他人に見られることに抵抗がある」と感じている人も約7割に上りました。興味深かったのは、若者たちが感情を抑えている理由です。


一般的には、「感情をコントロールすること=精神的に成熟したいから」と捉えられがちですが、実際にはそれ以上に「周囲とのトラブルを避けたい」「相手に気を遣わせたくない」という思いが強く見られました。インタビューでも、「ネガティブな感情を見せると相手を困らせてしまう気がする」「嫌われたくないから感情を出し過ぎないようにしている」という声が聞かれています。

つまり、若者たちの感情コントロールは、自分のためだけではなく、他者との関係を円滑に保つための配慮でもあるのです。一方で、彼らは決して感情をため込み続けているわけではありません。

若者の処世術

感情発散の方法として大きく四つのタイプが確認されました。

音楽を聴いたり信頼できる相手に話したりして気持ちを整理する「内省型」、ゲームや映画の世界に没入する「逃避型」、楽しい体験で気分を切り替える「上書き型」、そしてカラオケや運動で感情を外に出す「放出型」です。


4月に紹介した「計画的発散消費」も、まさにこの感情マネジメントの一部と言えます。若者たちは感情がないのではなく、感情に振り回されないよう、自分なりの方法で整えようとしているのです。

今回の調査を通じて、「本音を出せない若者」という見方は少し違うのではないかと改めて感じました。彼らは本音を出せないのではなく、本音を出す相手や場所を慎重に選んでいるといえます。

だからこそ、企業や職場、大人世代が考えるべきなのは、「もっと本音を言ってほしい」と求めることではなく、「安心して感情を出せる環境をどう作る」なのかもしれません。凪メンタルとは感情を失った状態ではなく、不確実性の高い時代を生きる若者たちなりの処世術であり、セルフマネジメントの知恵でもあるのです。

長田麻衣(おさだ・まい) SHIBUYA109lab.所長。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。著書に『ほめられると気まずすぎてしぬZ世代、ほめて伸ばそうと必死になる上司世代』(徳間書店)。

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