週刊誌記者・川口春奈“奏”が芸能事務所社長・柴咲コウ“咲”を追い詰める! 不倫スキャンダルの行く末は……?【スキャンダルイブレビュー/1~2話】

週刊誌記者・川口春奈“奏”が芸能事務所社長・柴咲コウ“咲”を追い詰める! 不倫スキャンダルの行く末は……?【スキャンダルイブレビュー/1~2話】

2025.12.11 11:10

※本コラムは『スキャンダルイブ』第2話までのネタバレを含みます。

誰もが忙しなく働いている時代。その中でもいま最も慌ただしく、明日どうなるかもわからない綱渡り状態の日々を生きているのは、芸能界の人々ではないだろうか。柴咲コウ演じる芸能事務所社長自ら、舞台挨拶でベテラン俳優と衣装被りをしてしまった所属俳優のために、新しい服を届けようと全力疾走する場面を目にしてそう思った。ABEMAのオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』は、そんな秒刻みの現場から幕を開ける。

井岡咲(柴咲コウ)が代表取締役社長を務める芸能事務所「Rafale」は、大手事務所から独立して早4年、ようやく看板俳優の藤原玖生(浅香航大)を、民放ドラマの主演へと返り咲かせた。新たな一歩を踏み出せたと思った矢先、数多くの芸能人のスキャンダルを暴いてきた『週刊文潮』から、五年前にあった玖生の不倫記事が掲載されるという一報が入る。

なんとしても記事を止めたい咲は、『週刊文潮』の記者・平田奏(川口春奈)と交渉することに。掲載の可否をめぐり、芸能事務所と週刊誌の間で激しい駆け引きが始まる。

ワンクールに約40本近くのテレビドラマが放送される昨今、配信発のドラマも目が離せない存在だ。本作を制作するABEMAは、2024年にアジア圏で最も権威のあるテレビ賞「30th Asian TELEVISION AWARDS」において、日本作品として初めて「ベストオリジナルドラマシリーズ(OTT)」部門最優秀賞に輝いた福原遥主演作『透明なわたしたち』をはじめ、大ヒット韓国ドラマを横浜流星主演でリメイクした『わかっていても』、さらに今年は、女流棋士を目指す主人公をのんが演じた『MISS KING/ミス・キング』など、振り幅の大きい意欲作を次々と打ち出している。

次に描かれるのは、スキャンダルをめぐる芸能事務所と週刊誌の熾烈な攻防戦だ。本作の監督は、同じくテレビ業界を題材にした阿部寛主演の日曜劇場『キャスター』(TBS系)を手がけた金井紘。脚本も『キャスター』と同様、ライターズルーム制度を採用しており、伊東忍、後藤賢人、木江恭が名を連ねている。

柴咲コウ、川口春奈、横山裕、鈴木保奈美といった豪華俳優陣が、いまだブラックボックス状態にある芸能界へ切り込んでいく姿も、大きな見どころだ。配信開始に先駆けて行われた異例(?)の芸能関係者限定試写会では、満足度は4.8、業界描写のリアル度は4.5(いずれも5段階評価)と、軒並み高い評価を獲得している。

そして何より驚かされたのは、本作が日曜劇場で放送されていても何ひとつ違和感のない、ゴリゴリの本格派サスペンスとして成立していたことだ。配信ドラマと侮るなかれ。情勢が秒単位で塗り替わるスピード感、常に糸が張り詰めたような緊張感、欲望が絡み合うパワーゲーム、裏で蠢く思惑の数々……次から次へと前提を覆すようなどんでん返しの連続は、さながら日曜劇場の佇まいだ。

スキャンダル対応の描写にも、とにかくリアリティーがある。当時の藤原は泥酔していたものの、妻帯者でありながら、別の女性とホテルに行ったのは紛れもない事実だ。たとえ性行為に及んでいなかったとしても、咲の言う通り「実際にしたかどうか」は大した問題ではない。

『文潮』の不倫記事を世間が信じれば、それは瞬く間に“真実”になる。顧問弁護士である戸崎(鈴木浩介)の見立てによると、プライバシーの侵害にあたる場合でも、有名人のスキャンダルは公益性が高いと判断されやすく、記事の差し止めは極めて難しい。小さな個人事務所はなおさらだ。

咲は200万円の入った封筒を手に交渉に臨むが、記事一本で推定一億円近い利益が見込めると踏んだ奏は、それを一蹴する。ここでおもしろいのは、記事を止められないと悟った咲たちが、「被害を最小限に抑えるために、記事そのものの価値を下げる」という戦略に舵を切ることだ。

倫理的な問題はあれど、不倫という“当事者同士の問題”の復帰には、結局のところ世間の反応がすべてを左右する。ならば、記事が出た瞬間の“衝撃”そのものを弱めてしまえばいい。あの手この手を使い、どうにか記事の威力を削ごうと立ち回る咲の姿が、会社員あるあるすぎて、やたらと胸に刺さってしまった。

しかし、すべての手の内を第一報で明かさないのが、やり手の週刊誌! ベビー用品ブランドを立ち上げた藤原の妻・未礼(前田敦子)同席の記者会見が開かれ、ひとまず事態が収束したかと思った矢先、奏は第二報を予告。「不倫相手が当時“未成年”だった」という、致命的な事実が明かされるのだ。

もう一人の主役といえる存在が、川口春奈演じる週刊誌記者・奏。第二話では、実は文芸誌への異動を希望していることが判明するのだが、彼女のスクープへの執念は凄まじい。明るく好感度の高い普段の川口を知っているからこそ、正義が暴走しかけている奏の言葉には、いちいちハラハラしてしまう。たとえば、咲との交渉の場で、彼女はこんなことを口にするのだ。

「ではなぜこんなにも雑誌が売れるんだと思いますか?」

「当然の報いだからですよ」

「私生活も含めてイメージを売るのが芸能人でしょう。その分華やかで豪勢な生活をしているわけだし、それなのに特権を振りかざして裏で汚いことをやってるなら、その代償は支払うべきです」

「そして、その欺瞞を暴くのが私たちの役割です」

泡を吹きそうなくらいのパワーワードの連続だが、「一番の被害者は奥さんとお子さんでは?」と最もらしい正論を突きつけられると、グヌヌ……となってしまう。週刊誌で有名人のスキャンダルが暴かれるたびに、同じようなことを思う人が現実にもいそうなのが恐ろしい。少なくとも今のSNSには、そんな空気を感じる。

しかし、過ちを犯した芸能人が社会的立場を失ったうえに、さらに大きな代償まで支払わされるのは、本当に“当然の報い”なのだろうか。

本作を見ていると、私たちはイメージとか世の中の空気とか、目には見えないものばかりに振り回されているように感じる。たった一言で立場が次々と逆転していく記者会見。実際の費用だけではなく、“ブランドイメージの棄損”によって億単位にまで膨れ上がる賠償金。

誰かを守るためならば、別の誰かを犠牲にせざるを得ない時代に、私たちは生きているのだろうか。華やかな芸能界の裏側に迫った『スキャンダルイブ』は、私たちの“いま”に想いを馳せる物語になりそうだ。

ABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』番組概要

トップページURL:https://abema.tv/video/title/90-2042

2025年11月19日から毎週水曜夜10時~無料配信

(明日菜子)

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