映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の萩原利久&河合優実「原作者・福徳さんの感想は…」

2025.04.29 20:45
提供:All About

映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』に出演している萩原利久さんと河合優実さんにインタビュー。魅力的なキャラクター、撮影の裏側など、たっぷり語っていただきました。※サムネイル写真:Kaori Saito(All About)

お笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介さんの原作小説を映画化した『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(2025年4月25日公開)。大学を舞台にさえない日々を送る主人公・小西(萩原利久)と彼が好意を抱く桜田(河合優実)のキラキラした日々とその裏側の葛藤を描いた作品。

演出は『勝手にふるえてろ』(2017)『私をくいとめて』(2020)などを手掛ける大九明子監督。出演の決め手になったこと、役作り、共演についてなどさまざまなお話を伺いました。

萩原利久さんと河合優実さんにインタビュー

――『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は大九明子監督の最新作で、ジャルジャルの福徳さんが執筆された小説の映画化作品です。原作小説と脚本を読んで感じたことを教えてください。

萩原利久さん(以下、萩原):僕は10代の頃から2回ほど、大九監督と仕事をしたことがあるのですが、長編作品では大九監督作に出演したことがありませんでした。なので、大九監督の映画に出演できることが純粋にうれしくて、脚本を読む前から、出演したいと気持ちを固めていました。

小説は脚本の後に読んだのですが驚きました。ジャルジャルの福徳さんが執筆した小説と聞いていたので、多少コント寄りの世界観を想像していたんです。しかし、実際は登場人物の人間性にフォーカスしたストーリーで「こんなに素晴らしい小説も書ける、何でもできる方なんだ」とリスペクトする気持ちが芽生えました。

ただ小西の感情は複雑で、難しそうな役だという印象も。でもだからこそやりがいがある役だと思いました。

河合優実さん(以下、河合):大九監督とはドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(2023/NHK BS)でご一緒したことがあり、また大九監督とお仕事したい気持ちがありましたし、原作は福徳さんの小説ということで、私にとっては、お二人の名前を聞くだけでワクワクするものがありました。

私も脚本を先に読んだのですが、大学というキラキラしたキャンパスの中で、学生はまだ未熟だけれど大人になりかけていて、時間もたっぷりあって……という独特な大学という空間が描かれていて、これは今の自分にしかできないと思いました。

小説も脚本の世界観のままだったので、大九監督は原作を大切に脚色されていると思いました。それでいて、脚本から「大九監督の世界」がとても感じらたので、素晴らしい変換だと思いました。

小西役は河合優実さんありきで役作りをしました(萩原)

Photo:Kaori
Photo:Kaori Saito(All About)


――萩原さん、難しそうな役だとおっしゃっていましたが、どのように役を作っていったのでしょうか?

萩原:まず僕は作品に臨むとき、自分の中で役の軸となる部分をしっかり作ります。もちろん撮影現場で修正をして変化していくことはありますが、全編を通して1人の人間としてブレないようにしておきたいんです。ただ小西役はその軸が定まらなくて悩みました。

小西は受け身で、桜田さんの言葉や行動に影響を受けて、いろいろなことを感じて、それが小西の言動に現れてくるので、事前に軸を決めないほうがいいのかもしれない。桜田さんの言葉を素直に受け止めて、それに対して表現していくほうがいいのではないかと思いました。でもそれは僕にとって勇気のいることなんです。

――軸を決めずに芝居をすることは挑戦だと。

萩原:普段やったことのないことにトライして失敗したら……と思うと怖かったのですが、桜田さんの言動を受け止めるために小西の心の器を大きくしようと意識しました。小西役は本当にいろいろ考えましたし、かなり準備を整えて臨みました。

――河合さんとのお芝居のセッションで小西役を作り上げていったんですね。

萩原:そうですね。もう河合さんありきで……。言葉の1つひとつを丁寧に届けてくれるので、それをしっかり聞いて、感じて、芝居を返していき、本当にうそのないきれいな演技ができたと思います。

不安だったけれど、河合さんとの芝居で、不安が安心に変わっていくという瞬間が撮影現場で何度もありました。桜田役が河合さんで本当によかったです。

桜田はハードルの高いキャラクターでした(河合)

Photo:Kaori
Photo:Kaori Saito(All About)


――河合さんは桜田役をどうやって作っていきましたか?

河合:役のつかみ所が難しく、最初は不安でした。小西から見た桜田はすごくステキな女の子で、前半の2人のシーンではキラキラした時間を作ろうという明確な目的が持てたのですが、後半、桜田の内面に入っていくにつれて「本当はどんな人なのだろう」という根本的な疑問が生まれてきて……。

小西に見せていない桜田の一面はどのようなところだろう、それをこの映画の中で表現できるだろうかといろいろ考えました。

――大九監督のアドバイスはなかったのですか?

河合:大九監督がピンポイントに「こういう言い方をしてみてください」というときは監督の中に「絶対にこうしてほしい」という強いイメージがある場合なので、その監督のイメージに合わせていく瞬発力が試されている感じもしました。

――瞬時に監督の指示を理解して表現しないといけないのですね。

河合:大九監督と私の間で、ズレることなく「しっくりいった、できた!」という感覚を得られることもあるのですが、迷いがあるとき、本番前に稽古ができるわけではないので、一発でバン!と最適解を出すのはハードルが高いと感じました。

ただ、そのようなことも楽しかったです。スタッフとキャストで悩みながらも楽しんで映画を作っている感覚がありました。

原作者の福徳さんの感想は

Photo:Kaori
Photo:Kaori Saito(All About)


――ちなみにお二人は原作者の福徳さんとはお会いしましたか?

萩原:僕は小学生のときに『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)というバラエティー番組でオカレモンJr.というキャラクターを務めていたことがあり、福徳さんも『めちゃイケ』に出演していたので、そのときにお会いしているんです。

ただ、一緒の出番はほぼなかったし、僕は顔を真っ黄色に塗っていたので、福徳さんは認識されていなかったと思います。

でもそんな僕が、福徳さんの書いた小説の映画化作品に主演する未来が来るなんて……。あの頃はまったく想像もできなかったので、このような再会もあるんだと感慨深いです。

Photo:Kaori
Photo:Kaori Saito(All About)


河合:私は一度、撮休のとき、ジャルジャルのお二人が大阪のなんばグランド花月に出演されていたので見に行きました。そのときにごあいさつさせていただいたのですが、映画のことを話す時間はなかったんです。

映画が完成した後に取材で再びお会いして映画の感想を伺うことができました。大九監督のことを信頼していて、映画も気に入ってくださって。原作者の福徳さんが映画をどう思われているか気になっていたので、よい感想を伺うことができて、とてもうれしかったです。

――お二人は完成した映画を見てどう思われましたか?

萩原: 10~20年後にまた見たいと思いました。この映画を見るときの自分の年齢やそのときの環境などで感じ方が変わってくる映画だと思ったからです。

狭い社会の中で、もがきながら必死に生きている若者たちのやりとりが、小西と同じ年齢の人は現実問題として心に響くだろうし、より大人の年齢の人は「そんな時代もあったな」と懐かしくなったり、かわいく感じたりするのかもしれません。

自分も年齢を重ねてみたら、今とはまったく違う感想を抱きそうな気がします。今の僕が気付いていないようなことに気付くかもしれない。そのような意味でも長期にわたり楽しめる映画だと思います。

(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会


河合:私も年代によって感想は変わってくると思います。それは取材を受けていても感じますね。私と萩原さんは小西や桜田と年齢が近いからリアルに感じるけれど、記者の方の中には、彼らの経験や感情は通り過ぎた世界だとおっしゃる方もいました。

2人の時間は痛いくらいキラキラしているから、大学生の方が見たら、自分のこととしか思えない感覚でも、大人の方が見たら「ウッ!」と、ちょっと忘れていた過去を刺激される方もいるのではないでしょうか。

(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会


――いろいろな年代の方に刺さる作品ですよね。

萩原:大学生の物語ですが、世代問わずたくさんの方に見ていただきたいです。見た後に抱いた感想は100%素直なものだと思うのですが、時間がたつとまったく違う感想が出てくるかもしれない。年代によって、経験によって、さまざまな感想が出てくると思います。ぜひ見てくださった方の感想を聞きたいです。

河合:私も観客の方の感想が気になります。人によって、この映画のどこに惹かれたのかポイントが違うと思うので。大人の方にも見ていただきたいし、特に舞台となった関西大学の学生さんには絶対に見てほしい(笑)。

それから、ずっと大九監督と一緒にお仕事をしているスタッフさんが「大九監督作の中で、一番いいと思う」とおっしゃっていたので、そういう作品に関われたこともとてもうれしかった。邦画にアンテナを張る方にもぜひチェックしていただきたいです。

萩原利久さんのプロフィール

1999年2月28日生まれ。埼玉県出身。

2008年に俳優デビュー。ドラマ『美しい彼』(2021/MBS)で注目される。近作は『劇場版 美しい彼~eternal~』(2023)『ミステリと言う勿れ』(2023)『朽ちないサクラ』(2023)『キングダム 大将軍の帰還』(2024)『世界征服やめた』(2025)ほか。また映画『花緑青が明ける日に』(2025)の公開を控えている。

河合優実さんのプロフィール

2000年12月19日生まれ。東京都出身。

2021年『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』の演技で注目される。『あんのこと』(2024)の演技で第48回日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞。『ナミビアの砂漠』(2024)の演技で第75回芸術選奨新人賞を受賞。『あんのこと』『ナミビアの砂漠』では、その他にも多くの映画賞を受賞した。最新作は、連続テレビ小説『あんぱん』(2025/NHK)、映画『ルノワール』(2025年6月20日公開)。

『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』2025年4月25日(金)より全国ロードショー

(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会


原作:福徳秀介『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館刊)
監督・脚本:大九明子
出演:萩原利久、河合優実、伊東蒼、黒崎煌代、安齋肇、浅香航大、松本穂香、古田新太
(C)2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会

撮影・取材・文:斎藤 香

萩原利久さん
スタイリスト:TOKITA
ヘアメイク: Emiy(Three Gateee LLC.)

河合優実さん
スタイリスト:高山エリ(※高ははしごだか)
ヘアメイク:秋鹿裕子(W)


執筆者:斎藤 香(映画ガイド)

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