アニメ「SAKAMOTO DAYS」

<SAKAMOTO DAYS>人気を呼び込んだ卓越したアクションの構図と映画的カメラワーク、スタイリッシュ×コメディーの魅力

2025.03.22 12:00
アニメ「SAKAMOTO DAYS」

今期の話題作となったテレビアニメ「SAKAMOTO DAYS」(毎週土曜夜11:00-11:30ほか、テレ東系で放送/ABEMAで全話無料配信中)が3月22日(土)で第1クールの最終回を迎える。ここで視聴者を沸かせたアクションシーンの作りを振り返りたい。(以降、ネタバレが含まれます)

人気を呼び込んだ卓越したアクションの構図、カメラワーク

元伝説の殺し屋にして、今は坂本商店の店主である坂本太郎(CV.杉田智和)を中心に繰り広げられるバトル×コメディー、日常×非日常のアクション活劇の本作。原作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の鈴木祐斗による同名漫画で、累計発行部数は800万部を超える人気作だ。

最強と謳われる殺し屋であった坂本は、ある日出会ったコンビニ店員の葵(CV.東山奈央)に恋をしたことからあっさり殺し屋を引退。葵と結婚し、娘の花(CV.木野日菜)を授かり、のどかな街で坂本商店を営むうちに、かつてのスマートな面影はないほどにすっかり太っていた…。

こうしたイントロダクションから分かる通り、本作はバトルものではあるが、過剰な殺伐さは含まない作品だ。作風は違うものの、「SPY×FAMILY」のように日常の描写を大事にしているのが特徴となっている。また、常人離れした耐久力と腕力を誇る無敵の主人公像は、どんな敵も一発でのしてしまう「ワンパンマン」のようでもある。

本作の一番の見どころはこの坂本と殺し屋たちのバトルだが、その描き方に作者・鈴木祐斗のセンスが光る。2019年デビューの鈴木が「SAKAMOTO DAYS」の連載を開始したのは2020年。漫画家としては新人だが、東京藝術大学日本画科出身、アーティストスタジオで映像作品の絵コンテなどを描いていたという画力は誌面でも異彩を放ち、特に空間を捉えるダイナミックな構図、映画的なカメラワークは群を抜いている。

アニメ化にあたっては「Dr.STONE」や「ルパン三世」などを手掛けるトムス・エンタテインメントが担当。監督・絵コンテ・演出の三役を担う渡辺正樹は、「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」(演出)、「コードギアス 亡国のアキト」(絵コンテ・演出)、「バトルスピリッツ」(監督・絵コンテ・演出)などを担当し、きれいなアクションシーンを作ることでも知られている人だ。

そんな渡辺が作る「SAKAMOTO DAYS」のアクションシーンは、スタイリッシュかつダイナミック。原作をリスペクトしたような止め絵と映画的なカメラワークで空間と緩急を演出し、テレビに目を釘付けにしてくれる。また、音楽は「メダリスト」も担当する林ゆうきで、耳に残るドラマティックな劇伴がアクションシーンをさらに盛り上げてくれている。

スタイリッシュ×コメディーのギャップが面白い

原作、アニメともに目を引きつけるアクションシーンだが、そこにあるもう1つの面白さが、スタイリッシュなアクションと対比するコメディー的アクションだ。

動けばあご肉が揺れるほどふくよかになってしまった坂本だが、動きは今も衰えはない。そこから生まれるのが、体型とスピードのギャップ、エプロン姿で戦う坂本が作る日常感と非日常感のミックス。さらに、身近にあるものを武器にするという坂本のモットーから、戦うさまは緊迫がありながらもどこかユニークだ。あめ玉と輪ゴムで即席パチンコを作ったり、厨房のまな板や器具を駆使したり、「そんなバカな!?」と、毎回ツッコミつつ笑わしてくれるのが本作のアクションだ。

また、現れる殺し屋たちも個性的で、ここは子どもたちにも楽しい少年漫画といった路線。「SAKAMOTO DAYS」で描かれるのは危険な殺し屋たちの戦いだが、リアルバイオレンスではなく、あくまでエンターテインメントが軸にある。幅広い層に好かれる人気作であるのは、こうしたポイントも大きいのだろう。第1クールではスーパーボール爆弾の使い手や全身武器人間の男などがバトルを盛り上げたが、第2クールではどんな敵が現れるのか。坂本と並ぶ強さの殺し屋ORDERの本格的な戦いも楽しみなところになっている。

ほっこり癒される坂本ファミリーの日常

目を奪うアクションと両軸に立つ本作のもう1つの魅力が、坂本ファミリーのアットホームな日常だ。坂本と妻の葵、娘の花。そこに加わってくる殺し屋時代の部下・朝倉シン(CV.島崎信長)、坂本たちに助けられたマフィアの娘・陸少糖(ルー・シャオタン/CV.佐倉綾音)、人の良いフリーのスナイパー・眞霜平助(CV.鈴木崚汰)といった面々。彼らは坂本の力となり、坂本も彼らを家族のように迎え入れる。

ストーリーが進むにつれて形成されていくこの擬似家族の中で、殺し屋を辞めた坂本が守ろうとする大切な日常が描かれ、同時に視聴者もほっこり癒される描写がなんとも心地いい。

そして、その日常を脅かす謎の男、スラー(CV.浪川大輔)。存在が語られてから、徐々にその姿を現してきた非常にミステリアスな人物だ。殺し屋連盟の殺し屋を殺害し続け、第9話ではシンと接触。暗く美しい青い瞳でシンを射抜き、殺気だけで死を直感させた非常に危険な男である。また、第10話では陸無糖(ルー・ウータン/CV.水中雅章)が、坂本に賞金を賭けた人物の情報を持っていることが判明した。はたしてそれがスラーなのか?

原作ファンはすでにスラーの正体を知るところだが、坂本とはある因縁がある。第2クールではこのスラーのエピソードが語られるのは間違いないだろう。第2クールのスタートは2025年7月から。現在ABEMAでは第1クール全話無料配信中なので、総復習しながらそのときを楽しみに待っていたい。

※島崎信長の「崎」は、「立つ崎」が正式表記。

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