

斉藤壮馬&内田雄馬対談、過去共演は多くも「剣心VS蒼紫のような“真っ向勝負”は新鮮」<るろうに剣心>

幕末の動乱期、“人斬り抜刀斎”として恐れられた緋村剣心が、「不殺」の流浪人となって平和な時代を生きようとする姿を描いた『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』。1994年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、コミックスの累計発行部数は7200万部を超える本作は、これまでもTVアニメ化や実写映画化など、時代を超えて愛され続けてきた大ヒット作。そんな不朽の名作が、2023年に新アニメとなって復活し、現在第二期『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱』がクライマックスを迎えている。今回は、第44話、45話で激闘を繰り広げたばかりの緋村剣心役の斉藤壮馬と四乃森蒼紫役の内田雄馬に、ここまでのキャラクターの変化やふたりの関係性について語ってもらった。
二度目の一騎打ちを迎えるも、じつはお互いに恨みはゼロ?
――第一期から因縁の関係が続いている剣心と蒼紫ですが、改めてこのふたりの関係性をどのように捉えていますか?
斉藤 「ライバル」と言うのも少し違う気がするんですよね。剣心からすれば、じつはまったくと言っていいほど蒼紫と戦う理由はないですから。
内田 蒼紫が一方的に戦意をもっていますからね。
斉藤 なので「奇縁」と言うべきなんでしょうね。ふとしたことで縁が繋がって、さらに蒼紫をこの世にとどめておくためには、望まずとも仇役で居続けるしかないという気持ちだと思います。今回の一騎打ちでも感じましたけど、一言では言い表せない複雑な関係性だなと感じています。
内田 そうですよね。蒼紫としても、御庭番衆に「最強」の称号を与えて花を添えたいという一心なので。「最強」と謳われているのが剣心だったという、だけなんですよね。ただそこへの固執は尋常じゃないですし、それだけが蒼紫が生きるモチベーションになっているので、やっぱり剣心の存在はとっても大きいとは思います。
――蒼紫はクールさが持ち味のキャラですが、今回の新アニメでは原作と比べるとさらに硬派さが際立っているようにも感じます。役作りやディレクションはいかがでしたか?
内田 じつは最初に持っていった芝居は、もう少し野心や思惑が滲むような方向性だったんです。でも「もっと抑えて欲しい」というディレクションがあって、いろいろと話し合いながら作っていきました。蒼紫は子どものころから隠密として生きてきた人で、自分の本音を誰かに話すこともなかったと思うんです。なので、誰かと喋っているシーンではとにかく温度感を下げて、その代わり、誰もいないところでボソッと呟く独り言にはちょっとだけ自分の本心や素が出るように聞こえればいいなと思いながら演じています。
――なるほど。蒼紫はそのイケメンっぷりとクールさで人気の高いキャラですが、内田さん的にはどんなところに魅力を感じますか?
内田 今回のアニメの蒼紫はなかなか感情が表に出る場面は少ないですけど、それでも彼の生い立ちやここまでの経歴が描かれるにつれ、なぜここまで「最強」にこだわっているのかその理由を探ると彼は自分のプライドや名誉のためでなく、あくまで仲間のために動いているんですよね。そのために修羅の道を突き進んでいるように見えるけど、まだ人間っぽさも残っていたりしていて。そういう心の奥にあるものが魅力だし、どこか放っておけない気持ちになるキャラクターなのかなとは思っていますね。
――一方で剣心も、第二期では比古清十郎との再会を果たして奥義を伝授されるなど、大きく変化しています。斉藤さんは、第一期からの剣心の変化についてはどのように捉えていますか?
斉藤 第二期の剣心は最初から覚悟を決めていて、「もう誰も巻き込まない」という決心のもと、ひとりで京都へと向かうんですが、実際には「これでいいんだろうか?」と、すごく思い悩んでいる姿が描かれている気がします。そんななかで、逆刃刀・真打にまつわるエピソードで逆刃刀を振るう意味を再確認して、そのうえで比古清十郎と再会できたことは剣心にとって大きかったなと感じます。それは演じている僕も同じで、振り返ってみると、剣心といっしょに思い悩みながら収録をしてきた感覚がありますね。まだ過去の呪縛から解き放たれたわけではないんですけど、でも確実に変化はしていて、本当の意味で自分と向き合う準備が整いつつあるのかなと思います。
剣心VS蒼紫のバトルは息ができないほどの緊迫感
――剣心と蒼紫は『京都大火』のエピソードで再戦を果たしました。斉藤さんと内田さんは共演も多いと思いますが、今回のようにぶつかり合う役どころでの出演はこれまでありましたか?
内田 そもそも敵同士になること自体が珍しいかもしれないですね。わりと味方なことが多くて、それこそコンビだったり幼馴染だったりという印象があります。
斉藤 言われてみればたしかに、こういう形で真剣勝負をするのは新鮮かもしれません。ただ、それがどういうものであれ、縁のある関係値で共演することが多いのは間違いないですね。
――今回は大型甲鉄艦「煉獄」の甲板となっており、アクションもより立体的になっていました。
斉藤 そうなんですよね。甲板からマスト、さらにその上へと移動が激しくて、台本だとどういう状況なのかが理解しにくいので、コンテを見つつ、さらに想像力を働かせながら収録しました。
内田 蒼紫と剣心が対峙すると、息が詰まりますね。斬り合いのテンポや展開が速いので、技術的に息が入れられるかどうかと言うのももちろんあるんですけど、それ以上に場の雰囲気と言うか、空気がめっちゃ張り詰めていて、そのなかで呼吸を入れるプレッシャーのようなものがあって。第一期で描かれた最初の一騎打ちのときもそうでしたけど、今回はさらに重みを感じましたね。
斉藤 分かる。緊迫感は凄かったですね。あと息遣いで言うと、本当に強い人同士が戦う場合って、リアクションとしての息遣いはあんまり入れないほうが強さを感じてもらえることもあるので、そこはふたりとも抑え気味だったと思います。その一方で、剣心としてはそもそも戦うことを躊躇しながらの立ち振る舞いだったので、基本的には防戦一方なんですよ。なので、一番上のマストから下のマストに落ちた際の声や、空中で蒼紫の攻撃を受けた際などは、これまでの戦いでは出してこなかった強めの呻き声を入れたりもしています。
内田 でも最後のほうはちょっと違いましたよね。
斉藤 そうそう。蒼紫が二刀流での回天剣舞を出そうとしたことで剣心も構えに入るなど、一瞬で一気にギアが上がったので、あそこは演じていても気持ち良さを感じました。
――結果的に、今回は決着付かずとなりましたね。
内田 次が本当に楽しみです。今回以上の戦いがあるとすれば、芝居アプローチもより考えねばと気合いが入ります。
斉藤 たしかに、ちょっといろいろと試してみたい気持ちはありますよね。
内田 むしろお互いに本気の戦いはここからだと思うので、ぜひ演じてみたいですね。
斉藤 そうなんですよね。だからこそ今回ですべてを出し切るのではなく、この緊張感を持ったまま、この先の戦いに繋げていきたいなと思っていました。
――そのほか、第二期でとくに印象深いバトルやエピソードはありますか?
内田 蒼紫的にはやっぱり翁(柏崎念至)との戦いですね。蒼紫のこの行動は自分の過去を清算、決別するものなので、やっぱりこれまでよりも一段階怖く感じるところですよね。ただ、言動こそ怖く見えたとしても、心の内には相反するものもあるんだろうなというのは、演じていてもすごく感じました。
――結果的には翁を殺していないですからね。
内田 おそらく蒼紫としては殺しても構わないと思っていたと思うんですよ。それくらいの覚悟を持って斬り合ったはずなんですけど、それでも最後の最後は身体が勝手に動いて致命傷を避ける攻撃になったのかなと思っています。自分では修羅になったと思っているけど、思考ではないもっと深い部分で人間らしさが優ったんだと思います。
斉藤 剣心も、戦いを通じて蒼紫の中にそれを感じたからこそ、殺したくはないと思っているんだと思いますし、そのあたりは今後さらに大切になってきそうですよね。
――斉藤さんが印象深いシーンはどこですか?
斉藤 僕は、先ほども少しだけ触れた逆刃刀にまつわるエピソードです。とくに第34話「逆刃刀 初撃」はアニメオリジナルエピソードで、流浪人となったばかりの剣心が描かれたことで過去と現在が繋がりましたし、剣心の心にある逆刃刀への強い想いも感じることができて嬉しかったです。第33話のアフレコの際に台本をいただいて休憩時間に読んだんですけど、感動のあまり、ブース内に戻るやいなや「来週のエピソード、めっちゃ素敵です!」って謎のアピールをしたくらいです(笑)。あと演出もすごく良くて、最後に青空の家族から義壱たちの絵にクロスオーバーする感じなどは、思い出すだけでウルっときちゃいますね。
――最後に、ファンにメッセージをお願いします。
内田 それぞれのキャラクターたちの思惑もだんだんと分かってきて、まだまだドラマはここからという状況だと思います。蒼紫としてはぜひとも剣心との戦いに決着を付けたいので、このままでは終われません。絶対に第三期をやりたいので、皆さんには変わらぬ応援をよろしくお願いします!
斉藤 もちろん僕もこのままでは終われません(笑)。第47話のラストがすごく印象的で、「京都動乱」を通じてのそれぞれのキャラの旅路がグッと集約されているようなシーンになっているので、皆さんもきっとこの続きが観たくなると思います。ここまでの応援に感謝しつつ、引き続きの応援をよろしくお願いします!
――ありがとうございました!
■取材・文/岡本大介
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