<チ。>再び前に進みだした地動説、バデーニの愉快なアクションにはツッコミも「オロロロで常識を吐き出すのワロタ」
アニメ「チ。-地球の運動について―」(毎週土曜深夜11:45-0:10、NHK総合/Netflix・ABEMAで配信)の第6話「世界を、動かせ」が11月2日に放送された。本作は魚豊による同名漫画を原作としたアニメ作品。地動説の可能性を信じ、証明することに自らの信念と命を懸けた者たちの物語が描かれていく。第6話ではバデーニ(CV.中村悠一)の過去が明らかになるとともに、ラファウが遺した地動説の研究資料がオクジー(CV.小西克幸)からバデーニの手に。“宇宙を変える”という研究にバデーニが震えた。 (以降、ネタバレが含まれます)
神が作った世界だからこそ不完全さに疑問を持っていたバデーニ
異端者とグラスの両者から“想い”を託されたオクジーが訪ねたのは、村外れの教会に住む修道士のバデーニ。彼は優秀ではあるが独善的で、とある思想上の禁忌に触れたことで街の修道院を追放された身だった。眼帯の隻眼で、顔にはいくつもの刃物傷がある。一見傭兵稼業でもしていたのかと思われる風貌の人物だが、その傷の由来は全くの別。過去の回想で、教会が隠す禁忌に触れたゆえの過酷な懲罰の痕であったことが明かされる。
第1章のフベルト、ラファウと同じく、彼もまた教会が説く天体の動き、天と地の定めに疑問を持つ1人だった。神に仕える修道士の身でありながら、となりそうだが、それは教会側の考え。バデーニはむしろ神の偉大さを信じているがゆえに、神が作ったこの世界が完璧な調和を持っていないことに疑問を持っていたのだ。これはフベルト、ラファウにも言えることで、彼らは神が作った世界に完璧な美しさを見たからこそ感動を覚え、次代に研究を託したのだ。
神が作った世界は人智が及ばぬものと神学で説く教会。その絶対の教えが敷かれていた中世では、神が作った正しい世界の形に近づく者の方が異端として処罰される。現代人の目線があるからこそ矛盾と映り、今後どのように異端の地動説が証明されることになるかが興味深くなるものだ。
そして今話、その証明の足がかりとなったのが、フベルト、ラファウの研究資料が入った石箱である。この中身を読み解いたバデーニは、人生どころか「宇宙が変わる」と興奮する。3校以上の上級大学から推薦を受けた者しか入れないという修道院で、さらに頭抜けた存在だったバデーニは、フベルト、ラファウを超える学識の持ち主であることは間違いないだろう。それでも神学が下敷きにあるゆえからか、教会の教える宇宙の形、天と地の関係からは抜け出せないでいたようだ。
しかし、石箱の資料を得たことで、バデーニの視野は一気に広がる。地球が動いているという仮説は、彼がこれまで積み上げてきた常識よりはるかに合理的で、解き明かせないでいた神からの難題――惑星逆行の謎をたちまちのうちに氷解させた。
なお、至極真面目なバデーニだが、ところどころでコミカルな様子を見せており、SNSでは「バデーニさんあんがい愉快な人かも」「オロロロで常識を吐き出すのワロタ」「禁書への飛び付き方がギャグキャラクター」とツッコまれていた。
1つだった「天と地」に希望を見るオクジー
バデーニにとっては自分を偉大にするだろう地動説の証明。一方、オクジーにとっては地球が動いているということよりも、「天界と地球は調和している」という事実のほうが衝撃だった。信心深いオクジーは、地球は汚れ、死んだのちに天界に行くことが現世で生きている希望であったのに、その2つの世界が調和しているというなら天界も汚れた場所なのか。
しかし、バデーニが告げたもう1つの考え方。大地は天界から切り離されてなどいなく、とうの昔からあの美しさの一員だったのかもしれないという言葉に、オクジーの心に満ちていた絶望、諦念は希望に変わる。そうして見上げた夜空の星からは恐ろしさが消え、オクジーの瞳に美しく映る。
バデーニは名を上げることに躍起のようだが、異端思想の地動説をどう公表するつもりなのか。また、「世界を動かせ」というバデーニの言葉にオクジーはどう動くのか。放送後のSNSには、「オクジーにとっても人生が大きく動く一夜になった。天国に行くことだけが救われる道だと信じてきたオクジーにとってバデーニとの出会いは吉と出るか凶と出るか」「バデーニさん、地動説を知る前から天動説に疑問を抱いていたんだ」「バデーニの“好奇心”とラファウ達が残した“書物”が成し得た偉業にオクジーの心も動かされ、見れなかった夜空を“綺麗”と感動する姿。彼の心が動いた瞬間に我々も感動します」など、さまざまな感想が寄せられている。
◆文=鈴木康道
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