【FBプロフェッショナルへの道2024①】ファッション市場の規模を知ろう
「ファッションビジネス(FB)プロフェッショナルへの道・明日のために」は、ファッションの市場規模、商品の生産・流通の仕組み、企業動向を分かりやすくお伝えする基礎講座です。来春からこの業界で働き始める人たちに向け、月2回(第2、第4金曜日)掲載します。第1回の今回は「データでみるファッションビジネス」の衣料消費市場編です。金額、数量、価格などから日本のファッション市場を見ていきます。
日本の衣料消費市場の規模は?
23年は9兆3823億円3年連続で増加コロナ前水準に届かず日本ではどのくらいの服が年間で売れるのか。繊研新聞社が推定した23年の衣料品の消費市場規模は9兆3823億円で前年比4.1%増でした。コロナ渦の影響で大きく落ち込んだ20年を境に3年連続で増加しました。
グラフ①を見ると、日本の衣料品消費市場は18年まで緩やかに増加傾向が続いていましたが、19年は暖冬や消費増税の影響で前年実績を下回りました。20年は年明け早々から新型コロナウイルスの感染が拡大し、商業施設や百貨店が休業を強いられたため、市場規模が大きく落ち込みました。
21年、22年は落ち込みの反動で市場規模は増勢に転じました。そして23年にコロナウイルスが5類感染症に移行したことで市場は正常化しました。
コロナ渦の収束に伴い、インバウンドが回復していることもファッション市場にとっては好材料と言えます。
ただ、コロナ渦の3年間で生活者の服に対する意識が変化したことに加え、円安に伴う物価高が進行した影響もあり、市場規模は依然としてコロナ前の水準を下回っています。回復にはもう少し時間がかかりそうです。
市場への供給量と服の価格は?
23年は35億5151万枚過去10年で最低水準に平均単価は1割上昇次に数量ベースでの市場規模と服の価格について見ていきます。
グラフ②は市場への供給量と1年間に市場に供給される服の数量を棒グラフで、金額ベースの市場規模と供給量から算出した服の平均価格を折れ線グラフで表したものです。
23年の服の供給量は35億5151万枚で前年に比べ4.7%減少しました。40億枚を割り込んだのはこれで5年連続です。20年は需要の減退に伴い、値引き販売が増えた結果、小売りやブランドの収益性が低下しました。
これを受け、21年以降は多めに仕入れて、売れ残りをシーズン終盤にセールで売り切るこれまでの商売から正量の仕入れと適時販売を心掛け、セールを減らす商売への転換が進みました。この結果、22年、23年も供給量は低水準が続いたのです。
服の平均価格は23年が前年比で10%上昇しました。
21年後半から急速に円安が進み、22年から服の価格は上昇傾向に転じましたが、23年は為替が1ドル=140円台と90年代初頭と同水準の円安となったことでさらに価格が上昇しました。
日本人が服にかける支出は?
可処分所得は10年横ばいファッションへの支出は縮小所得増えず節約志向続く日本人が服にかける金額はどれくらいでしょうか。
表は家計支出の総額とファッション購買に当たる「被服及び履物への支出」、服の平均単価、為替レートの過去10年の推移をまとめたものです。
家計支出の総額はコロナ渦の20、21年に27万円台に下がったものの、22、23年は29万円台で、10年前の14年とほぼ同水準です。一方、被服及び履物への支出は20年から4年連続で1万円台を割り込みました。
過去4年のうち前半2年は緊急事態宣言が断続的に出されるなど、外出機会が減り、服の需要が減退したことが支出減の要因です。後半2年は円安に伴ってインフレが進み、節約志向が高まったことがファッションへの支出が低水準だった理由です。
為替レートは23年が1ドル=140円台で10年前に比べ、3割強円安になりました。調達コストが上がったことで服の平均価格も上昇傾向にあります。可処分所得が増えていないため、ファッションへの支出は当面、抑制傾向が続きそうです。
日本人が年間に服を買う量は?
23年は年間で44枚10年前から16枚減値上げで購買量減るグラフ③は14年を起点に、被服及び履物への支出、服の平均単価、為替、消費者の服の購入量がどのように推移したかを表したものです。服の価格は23年が過去10年でもっとも高くなりました。
為替レートは、23年が過去10年で最も円安となっています。
円安の進行は服の調達コスト上昇を意味します。このまま円安が続けば、今後も服の価格は上昇するでしょう。
前項で見たように、所得が過去10年増えていないのに、服が値上がりすれば、当然、買い控えが起こります。ファッションへの支出に当たる被服及び履物への支出額と服の平均価格で計算した1年間の服の購入枚数は23年が44枚で10年前に比べ、16枚減少しました。
衣食住のうち、服に当たる「衣」は、「食」「住」に比べ、不況やインフレが起こった際、真っ先に節約の対象になる項目です。
安さではなく、価格に見合った価値を持つ商品を開発、提案することがファッション業界には求められていると言えます。
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