TVアニメ「負けヒロインが多すぎる!」で八奈見杏菜を演じる遠野ひかる

<負けヒロインが多すぎる!>遠野ひかる(八奈見杏菜役)「たくさん失敗したけど、諦めないで良かったです」ヒロインの"愛され力"を探る

2024.09.27 18:00
TVアニメ「負けヒロインが多すぎる!」で八奈見杏菜を演じる遠野ひかる

ラノベ好きの達観系ぼっち、温水和彦(声:梅田修一朗)に、幼馴染みの男子にフラれた姿を目撃されたクラスで人気の女子・八奈見杏菜(声:遠野ひかる)。その偶然(もしくは運命)の出会いから物語が始まるのが、話題のアニメーション『負けヒロインが多すぎる!』(毎週土曜24時30分~、TOKYO MXほか放送中、毎週土曜24時30分~ABEMA、U-NEXT、アニメ放題にて地上波同時配信中/TVerにて見逃し配信中)だ。今回は話数を追うごとに、愛されキャラぶりを増していく「負けヒロイン」=八奈見杏菜を演じる遠野ひかるにインタビュー。作品や役の魅力、演じる喜びや、「敗北」の記憶などをお聞きし、本作の人気の秘密に迫る。

「矛盾してそうなのに両立している」のが杏菜

――遠野さん演じる八奈見杏菜ほか、魅力的な「負けヒロイン」=「マケイン」が登場する本作も、いよいよ最終話間近です。今回はあらためて、本作を振り返っていただきたいと思います。まず、最初に出演が決まった際、どのように思われましたか。

遠野 私はテープオーディションと2回のスタジオオーディションを経て、八奈見杏菜役に決めていただきました。じっくりと時間をかけて丁寧に審査していただいた分、この作品に懸ける私の想いも大きくなっていったので、決定のご連絡をいただいた時はとても嬉しかったです。同時に、審査の過程でもスタッフの皆さんからの熱い想いがひしひしと伝わってきまして、選んでいただいたからにはその気持ちに応えなくては、と身の引き締まる思いでした

――実際、杏菜役を演じるにあたり、どんなことを大切に?

遠野 杏菜は、とても人間味のある子だなと感じるんです。「負けヒロイン」のゆえんたる残念さに目がいきがちですが、クラスの人気者になれるようなコミュニケーション能力、進学校に入学できる知性、恋愛における青さ、はたまた実はもとから装備しているヒロイン力など、ラブコメ作品のヒロインとして多面性があるように思います。

――とはいえ、その多面性を演じるのは難しさもあったのではないでしょうか。

遠野 杏菜には「矛盾してそうなのに両立している」というキャラクター性の複雑さがあります。それが一人の人間としてリアルで好きな部分なのですが、演じるとなるととても難しかったですね。とにかく、一つの面だけを見て、型に囚われないようにと常に意識していました。

――実際のアフレコ収録で印象的だったシーンは?

遠野 思い入れのあるシーンばかりですが、時間をかけて作り上げたという意味では第4話の草介と対話するシーンですね。まとまりきらない、行き場所のなかった彼女の想いが、初めて草介と向き合って溢れ出すところで、私自身「杏菜らしさ」を探し、杏菜と一番向き合ったシーンだったと思います。

――草介にフラレた杏菜に、杏菜をフッた草介、その間の温水という構図で、彼女の揺れる心のうちが見えるような、胸の締めつけられるシーンでした⋯。本作で杏菜を演じるうえで、監督や音響監督からはどんなディレクションがありましたか。

遠野 杏菜の多面性を構成する要素のうち、シーンによってどこを強く見せるのかを細かく調整していただきました。時には、「負け」要素を減らしたり、「もっとやっちゃって!」とコミカルなお芝居の引き出しをこじ開けていただいたりしました。あるいは「ここは素直にドキッとさせたい」とストレートな見せ方を選んだり、杏菜という役と、その場面ごとの繊細なすり合わせ作業を繰り返しました。

――それがあれほどに魅力的な杏菜を生み出しているわけですね。

遠野 先述の杏菜のキャラクター性に通じるお話ですが、どこまでの振り幅を「八奈見杏菜」という人物に収められるか、そのさじ加減を調整しながら、次々に変わる彼女の表情や感情の波についていくのに必死でしたね。また、アフレコは掛け合いの空気感を大切に収録していただいたので、セリフの一つひとつが現場で完成していく新鮮さがあって、自分で演じるのも皆さんのお芝居を聞いているのもとても楽しかったです。

ありのままの感情をさらけ出せるのが羨ましい

――青春ストーリーとしても素晴らしい『マケイン』ですが、遠野さんからご覧になった本作の魅力は?

遠野 恋に敗れる側にフォーカスして描く斬新さと、温水くん視点だからこそ生まれる物語の立体感とテンポ、作品の舞台が実際に存在するリアリティが魅力的だと思います。もちろん、息を呑むようなアニメーションの美しさ、登場人たちの生き生きとした豊かな表情、感情を写すような景色と音楽も素晴らしくて、もう挙げるとキリがないですね…!

――その中でキュンとしたシーンもありますか。

遠野 たくさんあります!それぞれのキャラクターにあるのですが、温水くんをからかうような言動も多い杏菜が、天然な温水くんにいざ距離を詰められるとドキマギしちゃうのは、キュンポイントが高いですよね。

――確かに(笑)。その杏菜とご自分に共通点を感じる部分はあるのでしょうか。

遠野 似てないなあと思うところが多いです(笑)。むしろ、ありのままの感情をさらけ出せるところが羨ましいなと思ったり、恋に敗れる姿も含めて、キラキラした青春を送る彼女が眩しく、どこか遠い存在に感じます。なので、自分では全く意識していなかったふとした瞬間の言動を、共演者さんやスタッフさんが杏菜っぽいとおっしゃってくださるとちょっと嬉しいですね。

――あと杏菜といえばやはり「食欲」ですよね。遠野さんご自身はいかがですか。

遠野 杏菜ほどの胃袋は持ち合わせていませんが、美味しいものを食べることは私も大好きなんです。大好物は母の作るお雑煮で、本作の舞台の豊橋ならではの食べものだと、「おつつみフィナンシェ」というお菓子がお気に入りです。

――聖地巡礼の際はぜひ食べたいですね!今回の企画では温水役の梅田さんにもご登場いただいていますが、遠野さんは温水というキャラクターの魅力はどこにあるとお考えでしょう。

遠野 いい意味でのモブ力と、深い思いやりだと思います。マケインたちにとって居心地のいい距離感で見守ってくれながらも介入しすぎない、ここぞというときには頼れる正義感を見せてくれる、頼もしい存在ですよね。

――そして、温水は言葉のセンスが抜群ですよね。

遠野 クセ強めなキャラクターばかりの中でツッコミとして、作品を見ている側の気持ちをズバッと代弁してくれつつ、ワードチョイスが温水くんらしさ全開なんですよね。

――ちなみに杏菜以外で、特に惹かれてしまうキャラクターは?

遠野 温水佳樹ちゃんが本当にかわいいです! お兄様への愛が重たすぎて、当たり前のように危ない域に達しているところも好きです。ゴンちゃん(権藤アサミ)との掛け合いも癒されます…。また、生徒会長さん(放虎原ひばり)もタイプです! 様子のおかしい美人というまたしてもクセが渋滞しているキャラクターで、好きなんですよね(笑)。

数え切れないくらい負けました!

――本作の舞台、愛知県・豊橋に行かれた感想もお聞かせください。

遠野 アニメ放送前の先行上映会で訪れたときが印象的で。見に来てくださった地元の皆さまに問いかけると、笑顔でリアクションしてくださって温かいんですよね。私もつい嬉しくなって、お話ししすぎちゃいました(笑)。このアニメを見終えたとき、豊橋に縁が無かった方が、豊橋という地にどこか懐かしさを感じたり、足を運びたくなる⋯⋯そんな作品になったら嬉しいですね。

――もうすでにそうなっている方も多そうです(笑)。本作にタイトルにちなんで、ご自身の人生で、「負け」の記憶で忘れられないことはありますか。

遠野 あります…! 声優を目指して様々な事務所のオーディションを何年間も受け続けて、数え切れないくらい負けました(笑)! 何度も何度も同じ課題セリフを録音して、イヤホンで聞いていたことや、面接で上手く答えられなかった質問も鮮明に覚えています。不合格の通知を受け取るたびに落ち込みましたが、アニメが好きという気持ちは変わりませんでしたし、お気に入りのアニメに出会うたびに、“絶対にこの世界に行くんだ!”と決意が固まっていった気がします。たくさん失敗した経験が私の中で活きていますし、あのとき諦めないで良かったと思えるくらい、いまが充実しているので本当によかったなと思います。

――「基本的には似てない」とのことでしたが、いまのお話をお聞きして、ハングリーな遠野さんが演じる杏菜役だからこそ、私たちは共鳴し、リアルを感じ得るのかなと感じました。あらためて、いま声優のお仕事で楽しさを感じるのはどんなときでしょうか。

遠野 やっぱり放送を見てくださっている皆さんと一緒に、毎話楽しみにしているときがとても幸せですね。普段、自分の出演作だとどうしても冷静にお芝居を見て、自己評価してしまう節があるのですが、『マケイン』が始まると見入ってしまい、いつも気付くとエンディングです(笑)。とにかくアニメが大好きで、深夜に見漁っていた昔の自分、そのときのワクワクした気持ちを味わわせてくれる作品なんです。いま、この作品に携わらせていただけて、私は幸せ者だなと感じています。

――ありがとうございました。最後に、最終話の見どころやファンの方々へのメッセージをお願いします。

遠野 ここまで『マケイン』を応援してくださっている皆さま、本っ当にありがとうございます! 放送が始まると早いもので、あっという間に負けて、あっという間に最終回で、早くも寂しさを感じます。でも、そんな気持ちを吹き飛ばすくらい、最後の最後まで“これぞ『マケイン』!”と思っていただけるような、らしさ全開のお話をお届けしていますので、ぜひお楽しみください!

■取材・構成/河内文博(アンチェイン)

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