夢は大きく、「ジャンル：前田佳織里」になる――前田佳織里「未完成STARへの道」

2023.03.29 18:00

『ウマ娘プリティーダービー』『アイカツスターズ!』『ラブライブ！虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』などの人気作品へ次々に出演し、芝居にステージに、幅広く活躍を繰り広げる声優・前田佳織里が、待望の自身名義での音楽活動をスタートする。3月15日にリリースされた1st EPのタイトルは、『未完成STAR』。初のアニメタイアップ担当楽曲を含む全4曲は、いずれも「表現者・前田佳織里」のパーソナリティを映し出した佳曲たちだ。音楽活動、そして『未完成STAR』にたどり着くまで、前田佳織里はどのように歩みを進めてきたのか――声優や音楽を志すことになったルーツから青春時代、そして現在に至るまでを語り尽くした超ロング・インタビュー。最終回の第10回は、自身の音楽活動の夢と、表現者として掲げる2023年の目標について聞いた。

人の3倍速くらいの速さで、常に前進してるような感覚がある

――いま、話しているタイミングではリリース日の3月15日は少し先ですが、当日をどんな気持ちで迎えることになりそうですか。

前田：「結果を求めるな」みたいなことを話しましたけど、たぶんすごく反応を気にしてるだろうなって思います。エゴサしてると思います(笑)。

――このEPの内容で、楽曲に対するネガティブ評価はあまり出てこないんじゃないですか。だって、前田さんの人物像や表現への向き合い方を知っている人が聴いたら、きっと喜んでもらえる内容のEPになってますから。

前田：嬉しいです。最初に聴いたとき、「前田佳織里の声じゃない」って思わなかったですか？

――いや、全然。

前田：よっしゃ！よかったです。

――歌声にバリエーションはあるけど、前田さんは声優なわけで、声を使い分けるのは当然技術的にできることじゃないですか。変な言い方になりますけど、歌の技術に感動するEPではないと思うんです。前田さんのパーソナリティ、「前田佳織里が歌っているという事実」にちゃんと意味があって、その上での技術も備わっているというか。

前田：よかったです。新しいことが始まったりする3月は、4月に向かっていく時期で、始まりのタイミングだから、そこでようやく2023年が始まったなって心から思えるかもしれないです(笑)。

――(笑)3月15日にして？

前田：年が明けて3ヶ月経ってますが(笑)。最近、現場で「前田さんって3人いるんですよね」って、ミッキーみたいな扱いをされていて(笑)。確かに、もともとせっかちなところもあるんですけど、生き急いでる部分も正直あるかなと思っていて。人の3倍速くらいの速さで、常に前進してるような感覚はあるかもしれないです。たとえば30歳になったらどうなるんだろう……でも、先輩方のお話を聞くと、いろんなことが見えるっておっしゃるんですよね。

――「30代いいよ」は、よく聞きますね。

前田：ですよね。でも、まだわからないなあ。

夢は大きく、「ジャンル：前田佳織里」って言ってもらえるようになりたい

――音楽活動をすることは念願であり夢だったわけですが、デビューを果たすことができたいま、「音楽活動をする人としての夢」はなんですか。

前田：いろいろあるんですけど、たとえば自分がタイアップをさせていただいた楽曲で、「この作品といえば、この人の歌だよね」って言ってもらえれるようなになること。アニソン業界を引っ張っていけるくらいの存在になりたいです。夢は大きく、ですね。「ジャンル：前田佳織里」って言ってもらえるようになりたいです。アーティストとしての夢のひとつとして、いつか映画館のスクリーンで自分の曲が聴きたいなって思います。なので、いつかの映画タイアップをやることができたらいいですね。

あとは、昔の自分が聴いてた曲の中に、神曲がたくさんあるわけです。「うわっ、この曲最高！」「一度は聴いたことがある」みたいな曲。それくらい、浸透する曲を生み出していきたいですね。たぶんわたしは、いろんな人の青春になりたいんだと思います。青春の人になりたい、というか。

――「ジャンル：前田佳織里」を目指すって、いいですね。

前田：ありがとうございます。はい、それくらい大きくなりたいと思います。ひとつひとつ新しいジャンルに取り組んでいって――わたしは欲深いので(笑)、たとえばアニソンにかかわらず、いろんなご縁があるといいなと思ってます。

――たくさんの人が期待している前田さんの音楽活動ですが、その期待に応えるために、どんな自分でいたいと思いますか。

前田：そうだなあ……でも、今までやってきたことを貫こう、着実にやろうっていう気持ちです。今年の自分の目標として、「考えるよりもまず行動」というのを考えていて。去年はけっこう考えすぎちゃったところがあって――それもよかったんですけど、2023年はとにかく行動する年にしたいな、と思っています。考えることも大事だけど、考えすぎて踏み出すのが遅くなるタイプでもあるので、そこは変えていきたいなって思ってます。

なので、とにかく行動して、毎日しっかりと生きて、泣いて笑って、自分が得たもの、感情とかをちゃんと曲に乗せて、説得力のある歌を出していきたいです。ただ「夢は叶うよ」と言っても、それってやっぱりちゃんとやっていないと人には届かないし、ほんとに行動していないと人には伝わらないので。自分が毎日仕事を頑張りながら、ひとつひとつを一生懸命やっていきながら伝えることに意味があると思うので、説得力のある人間でいたいな、と思います。

2022年はひとつ肩の荷が下りたというか、地に足が着いたというか、「自分の道はここだ」って見えた

――ちなみに、以前話を聞いたときに2021年は「飛躍の年にする」が目標で、2022年は「デッカい安定」を前田さんが目標に掲げていたんですよ。2022年の目標は達成できたんですか。

前田：できました。去年、自分の中でもすごく達成できたなって思える年になりまして。実を結んだというか、いろんなご縁もいただくことができました。そこが、ようやくちょっと肩の力が抜けたタイミングだったんです。今まではちょっと追いつめられてるような部分がどこかに多少あったというか、必死すぎたかなって思う部分があったんですけど、2022年はひとつ肩の荷が下りたというか、地に足が着いたというか、「自分の道はここだ」って見えたところがあって。それが、大きな安定になったかなって思います。2021年の「飛躍の年」はまさにそうで――スカイダイビングもありましたが(笑)、大きな飛躍の年だったと思います。

――そんな2年間を経て、「考えるより行動」を掲げていく、と。

前田：はい。飛んだ次は跳ねようかな、今年兎年だし(笑)。ひとつひとつ、目の前のことをしっかりやっていきながら、大きく跳ねる年にしたいなと思います！まあ、ずっと「飛躍」って言ってるかもしれないですけど(笑)。ずっと「飛躍したいね」って言ってたら、ドッキリで栃木に連れていかれて、「今から飛んでください」ってスカイダイビングすることになって。いろんなところで、「前田が飛んだなら」みたいな流れになってるらしいです(笑)。

――ははは。

前田：わたし、滝行もしてますから(笑)。でも、バンジーだけはイヤですね。バンジーはしない……いやこれ、フリじゃないですからね(笑)。

取材・文＝清水大輔

写真＝北島明(SPUTNIK)

スタイリスト：柏木作夢

ヘアメイク：坂本由梨奈(Leading)