アニメ「忍たま乱太郎」は今年で放送30年

「笑い」をテーマに30年!『忍たま乱太郎』監修スタッフが語る、愛されるアニメづくりの秘訣

2022.05.07 18:30
アニメ「忍たま乱太郎」は今年で放送30年

アニメ「忍たま乱太郎」(毎週月~金曜夜6:50-7:00、NHK Eテレ、以下「忍たま」)が、今年2022年で放送30年を迎えた。主人公である忍者のたまご、乱太郎・きり丸・しんべヱの3人が、忍術学園で一人前の忍者を目指す日々を描く本作。子どもにも大人にも愛される「忍たま」は、どのように作られてきたのか?「忍たま」アニメの制作プロダクション・亜細亜堂で、第2シリーズから第29シリーズまで監督を務め、放送中の第30シリーズではアニメーション監修を担当する河内日出夫さんに、なぜ「忍たま」がこれほど続いたのかを聞くと、「笑い」を大切に描き続けたアニメのこだわりが見えてきた。

NHK最長寿アニメとなった理由は「笑いをテーマにしたこと」

「忍たま」は今年で放送30年、NHKアニメ作品の中でも最長寿作品となる。河内さん自身、放送が始まった当初、これほど長く続くとは思っていなかったという。

「第1シリーズは週1回の30分完結アニメで、僕が監督になった第2シリーズから、月曜から金曜の毎日放送に変わったんですが、毎日放送と聞いてびっくりしました。本当にやれるんだろうか、こりゃあ大変だぞ、というのが最初の印象でしたね」(河内さん、以下同)

元々、主題歌を手掛ける作曲家・馬飼野康二さんのお子さんが、原作マンガ「落第忍者乱太郎」のファンだったことから、馬飼野さんが企画書を持ち込み、アニメ化されたという秘話もある本作。河内さんは「忍たま」の魅力を以下のように分析する。

「忍たまは、『忍者』『学園』『ギャグ』という3つの要素を兼ね備えていて、ヒットする要因がそれぞれにあるんです。忍者という特殊な存在の魅力、学園生活への共感、そして登場するキャラクターそれぞれの、お笑いの方のような強烈な個性。その中でも、長く続いた一番の要因は、『笑い』を大きなテーマに掲げたことだと思います。1本1本をいかにしておもしろく、笑えるものにするかという努力を積み重ねてきた作品です」

原作「落第忍者乱太郎」は、時代考証を丁寧に行った作品ゆえに、シビアな設定もある。例えばきり丸はいくさで両親を亡くした戦災孤児であり、また時には忍者という命がけの仕事の厳しさも表現される。アニメでは、もちろん原作が持つこれらの世界観を大切に描きつつも、オリジナル回を豊富に制作し、一貫して「笑い」を大事にシリーズを作り上げてきた。

原作の設定をふくらませるアニメのキャラクター造形

「忍たま」の1シリーズ中、半分以上の回は原作のないアニメオリジナル脚本だ。原作を大切にしつつ、愛されるアニメオリジナルを作っていく上で、どんな点を心がけているのか。

「原作がある回とオリジナル回では、内容としては全然違うところはあるんですが、オリジナルの場合は、脚本の浦沢(義雄)さんの世界観が色濃く出ていると思います。登場人物の大半が強烈な個性の持ち主で、同時に弱点も持っている。そういう人間臭さが原作の魅力のひとつなので、オリジナルの場合でもそこを面白く盛り上げていく作り方を心がけています」

原作では性格の説明が一言しかないようなキャラクターもいるため、そこから浦沢さん・河内さんたちが設定をふくらませ、アニメでのキャラクターを作り上げているという。たとえば六年生・七松小平太の「いけいけどんどん!」や、潮江文次郎の「ギンギン!」といった口癖は、元々原作にも片鱗はあるが、アニメで描かれることで定着したものだ。

キャラクターの個性を生き生きと描くために、河内さんが工夫していることを尋ねてみた。

「難しい質問ですが…最初はキャラクターの個性について、単純な、あるいは漠然としたとらえ方をしているのが、アニメで描いて、声優さんが声をあてていくうちに、どんどん個性が際立っていくんです。だから僕の意志というよりも、アニメで描いていく中で、それぞれのキャラクターが自然に動いて個性が完成される、そういうことじゃないかなと思います」

反響が驚きだった「厳禁シリーズ」

「忍たま」は原作に登場しないアニメオリジナルキャラもいるが、彼らも作品世界へ自然に溶け込んでいる。たとえばレギュラーキャラとして馴染み深い、学園長先生と仲良しの忍犬・ヘムヘムや、くの一・おシゲちゃんは、実はアニメオリジナルだ。

「ヘムヘムやおシゲちゃんは、僕が監督になる前の第1シリーズからいるので、なぜ登場させたのか?という理由まではわからないのですが…おシゲちゃんについては、原作の尼子(騒兵衛)先生からキャラクターデザインのイラストをもらっています。ただ原作と整合性をとるために、アニメの中であまり強烈に前に出しすぎないようにはしていますね」

特に反響が印象的だった回についても聞いた。「こういうのが受けるんだ、と驚いたのは『厳禁シリーズ』です」

しんべヱと喜三太というマイペースな一年生ふたりに、優秀な六年生・立花仙蔵が毎度振り回される、アニメオリジナルの「厳禁シリーズ」。第9シリーズに始まり、22エピソードが制作されている。元々は単発エピソードとして制作されたが、放送後の反響が大きかったため「厳禁シリーズ」として毎シリーズの定番となった。また「厳禁シリーズ」の人気をきっかけに、他にも第16シリーズからの「アルバイトシリーズ」や、第19シリーズからの「同室シリーズ」といった、六年生キャラと一年生キャラが関わるシリーズが制作されるようになったという。

「六年生はプロの忍者に近い、カッコいいキャラクターなので、カッコいいだけではどうしてもギャグにしづらいんですよ。それが、一年生と絡むことによって振り回され、ギャグになるのが受けているんだと感じます」

制作スタッフ内では滝夜叉丸が人気

30シリーズという長期間続く中で、「忍たま」が変化した点はあるのだろうか。

「基本は積み重ねなので、大きくは変えていません。ただ毎年同じように作っていると見えて、実は制作スタッフはかなり入れ替わっています。『忍たま』を見て育ってきた人たちがスタッフとして入ってきて、制作の中心になっていく。絵やギャグのセンスについても、僕なんかはどちらかというと昭和の感覚ですが、今の若い人たちの表現を取り入れて、それまで作られてきた『忍たま』をちゃんと次に受け継ぎながら進化していると思います」

また「忍たま」は今や子どもだけでなく、大人のアニメファンにも愛され、コラボカフェやグッズなども幅広く展開されている。その契機はどこにあったのか。

「第16シリーズ(2008年)でオープニングアニメが変わったあたりから、上級生キャラを中心に大人の人気も上がってきたと感じています。僕はずっと『子供向けアニメ』という立場で作ってきたので、『忍たま』に若い女性のファンがたくさんいると初めて聞いたときは、すごく驚いた記憶があります。でも実在する芸能人のスターに憧れ楽しむように、『忍たま』の世界の上級生にカッコよさを感じてくれているのかなと。また、視聴者の方も自分がかつて過ごした学校生活を振り返って、あんな先輩がいたらカッコいいな、こんな後輩がいたらかわいいなという楽しみ方をしてくれているのかなと思いますね」

ちなみに河内さんが個人的に好きなキャラクターを尋ねると「乱太郎の父ちゃんとか、花房牧之介とか…オモシロ要素の強いキャラクターが好きですね。牧之介は、乱太郎・きり丸・しんべヱの声優さん(高山みなみ・田中真弓・一龍斎貞友)にも人気なんですよ」また制作スタッフの間では「見てると元気が出る」「安定感がある」などの理由で、ナルシストな四年生・平滝夜叉丸が人気だという。スタッフの皆さんもそれぞれ自分の「推しキャラ」を持っているそうだ。

原作終了後も、過去エピソードを掘り起こしてリメイク

忍たまといえば、放送開始時からずっと変わらない主題歌「勇気100%」も印象深い。

「楽曲に込められたメッセージが、アニメの趣旨にぴったりなんです。忍たまたちが、たとえ出来が悪くてもくじけることなく、勇気と笑顔で前に進んでいく。そういう曲だからこそ、イベントで歌われたり、学校の合唱コンクールで歌われたりと、忍たまを離れたところでも愛され、多くの方に元気を与えているのは、すばらしいことだと思います」

原作マンガ「落第忍者乱太郎」は2019年で連載終了しているが、アニメ「忍たま」は現在も放送を継続している。「元々アニメオリジナル回の方が多いですし、原作にまだアニメ化していない話もあります。また昔一度アニメ化した話を改めて掘り起こし、今の形でリメイクするという試みも数年前から始めています」ファンは一安心だろう。

番組公式サイトでは5月8日(日)まで、放送30年を記念して「忍たま30ベストコンビ投票」を実施している。これは「あなたの選ぶベストコンビ」を選んで投票し、上位5組については完全新作エピソードが制作されるというもので、既に40000票以上集まっているという。放送20年の際に同様の企画が好評だったため今回も開催、新作エピソードの放送は秋以降となる。また5月4日には放送30年を記念した30分のスペシャルアニメも放送された(5月8日(日)に再放送)。他にもイベントや、ミュージカル「忍たま乱太郎」の開催、さらにまだ情報解禁できないお知らせも予定しているとのことで、ますます楽しみな30年記念となりそうだ。

最後に河内さんに、30年「忍たま」を愛してきた視聴者へのメッセージをもらった。

「忍者の世界は、一歩間違うと危険な、危うさを持った世界です。そこに気をつけながら、学園ドラマというスタイルで、視聴者の皆さんの共感を得ながらやってきました。今後も『笑い』で見ている方々を元気づけ、勇気づけていける作品でありたいと思っています」

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